2024年に県内に宿泊した外国人は延べ27万9千人に上り、新型コロナ禍前を含め過去最多となった。年間を通じてコロナ禍による制限がなく、インバウンド(訪日客)に有利な円安も追い風になったと県は分析している。
人口減少などに伴い日本人の国内旅行の需要は今後、徐々に減少することが予想される。為替相場などに左右されない魅力ある旅行商品をどのように開発・提供していくのか。インバウンドのリピーターや滞在日数の増加へつなげられるよう、県や市町、業界団体などが一体となり観光産業の安定と成長へ誘客策を強化したい。
24年の県全体の宿泊者は延べ830万4千人と、コロナ禍前の19年の825万7千人を4万人強上回った。このうち外国人が占める割合は3・36%と過去5年間で最も多く、外国人宿泊者が全体を押し上げる要因の一つになった。
24年の外国人宿泊者を市町別で見ると、世界遺産の二社一寺などを抱える日光市が16万1300人でダントツのトップ。2位が宇都宮市(6万2200人)、3位が那須町(1万5400人)と続くが、全県では前年比7倍の那珂川町や2・6倍の矢板市、1・8倍の佐野市など健闘した自治体も目立つ。
那珂川町は、ゴルフ目的の韓国人客が宿泊者全体の9割超を占めるなどニーズを捉えたゴルフ場側と今後、連携を検討する方針という。他市町でも首長の海外トップセールスや、インフルエンサーの協力を得たSNSの広報戦略などが奏功したケースもある。
24年に県内に宿泊した外国人の国・地域別の最多は台湾の5万3千人で、これに中国、米国、韓国が続いた。このうち韓国を除く三つの国・地域には本県の観光誘客拠点「観光レップ」が設けられている。各国・地域の外国人客が本県のどこに興味を持ったのかなど詳細なデータを分析し、SNSなどによる情報発信を含め次のインバンド戦略に生かすべきだ。
一方、インバウンドの増加に伴い全国でオーバーツーリズム(観光公害)などの問題が顕在化している。対策の財源として、ホテルや旅館の利用者に宿泊税を課す条例を定める自治体が各地で相次ぎ、那須町でも来秋の導入を目指している。宿泊者の理解を得られるよう使途は公開し、観光政策に生かしていきたい。