県内でも空き家が年々増加する中、県は有効活用などを目的とした県版空き家バンクを2025年度に新設する方針を決めた。県内25市町は既に、空き家の登録情報を移住希望者らにウェブサイトなどで提供するバンク制度を設けている。県は市町の情報などを一元化してホームページ(HP)に掲載し、空き家市場の活性化にも努める考えだ。

 空き家は倒壊の恐れや景観の悪化、防犯・防災の観点から全国的に喫緊の課題となっている。県は空き家の発生を未然に防ぐ取り組みなどを強化する一方、移住希望者らが利用しやすいHPを作成すべきだ。

 県内の空き家は2023年10月時点で過去最多の16万4千戸に達した。住宅総数に占める割合(空き家率)は16・9%と全国で14番目に高く、利用のめどが立たない家屋も6万4千戸、6・6%と全国平均5・9%を上回る。

 県内市町の空き家バンク制度は、市町ごとにそれぞれのサイトで物件情報などが掲載されている。しかし情報量は市町によってばらつきがある上、公共施設や医療機関の所在地を自治体の境界を越えて広域的に確認することなどが難しい。

 県は現時点で市町のデータを自動集約できるプラットフォームを想定。物件の賃貸や購入を考えている移住希望者らが県内全体の情報をワンストップで閲覧できるほか、「小児科が近い」「庭付き」など希望の条件に沿って検索できる機能なども予定している。

 市町の空き家バンクは継続し、移住対策などに引き続き活用してもらう。県は新設バンクの運用で市町に負担がかからないよう意思疎通を図るとともに、市町も情報量の均一化などに協力したい。

 空き家バンクを巡り、熊本県や広島県は、気候の違いを可視化するなど情報提供に積極的という。本県も先進事例を取り入れつつ、外国人の利用促進を視野に多言語化などを目指したい。

 新たなバンク制度に合わせ、県は空き家発生の予防や適正管理、空き家を活用・提供した人の実体験に基づく具体的なアドバイスなども情報発信する。相続時の備えや、将来の住まいの生かし方に役立つ「わが家の終活ノート」もHPに掲載する。空き家対策に県民一人一人が関心を持ち、家の在り方を事前に家族で話し合うことも重要だろう。