宇都宮市の中心部に位置する「宇都宮パルコ」跡地を、スポーツ用品販売大手のゼビオ(福島県郡山市)が取得する方向で調整している。同社は本社機能を移転し、スポーツ用品の販売などに活用するとみられる。
県都の一等地である二荒山神社前で5年以上空きビルとなっていた旧パルコの活用は、地権者だけでなく宇都宮市や地元経済界にとっても長年の懸案となっていた。同社は年内取得を目指しているという。速やかに開業にこぎ着け、中心市街地の活性化につなげるよう期待したい。
同社は全国で「スーパースポーツゼビオ」などを展開している。郡山市にある親会社のゼビオホールディングス(HD)は東証プライム上場。スポーツ用品販売の「ヴィクトリア」「ゴルフパートナー」などの子会社がある。
ゼビオは2023年3月、宇都宮市とスポーツを通したまちづくりに向けた連携協定を締結している。締結式に出席した同社の諸橋友良(もろはしともよし)社長が、本社機能の郡山市から宇都宮市への移転を表明した。当時は、ゼビオHDの本社は移転しないとしていた。
一方、1997年に開業した宇都宮パルコは、中心市街地のにぎわい創出に貢献しながらも、バブル経済崩壊後の構造的な不況と中心市街地の空洞化に苦しんできた。開業後には上野百貨店、西武百貨店宇都宮店、ロビンソン百貨店など、近隣大型店の閉店ラッシュが続いた。
2019年5月に閉店後は、後継テナント探しが難航した。ファッションビル特有の窓のない構造のため、オフィスビルや宿泊施設への転用が難しかったためである。
スポーツ用品や衣料販売に活用するとすれば、窓のない構造でも支障はないだろう。ゼビオHD傘下には、体験型の大型インドアゴルフ練習場もある。街の中心部が、スポーツアミューズメントに生まれ変わる可能性もある。
ゼビオが旧パルコをどう活用しようとしているのか、現時点で詳細は明らかではない。中心市街地の象徴的存在だったビルであることを念頭に置いた営業形態であることを望みたい。
宇都宮市にとっても長年の懸案を解決する、またとないチャンスである。地元経済界との調整など、行政としてできる支援は惜しむことなく進めてほしい。