
コロナ禍きっかけ “畑違い”の農業へ
βカロテンを豊富に含み、鮮やかなオレンジ色が食欲をそそるニンジン。サラダやカレー、ジュースにと食卓に欠かせない定番の野菜です。
県南に位置する足利市では、市内を流れる渡良瀬川の恵みと冬場の豊富な日照時間、そしてきめ細かい土壌がニンジン栽培に適しており、ニンジンを「あしかが美人」というブランドで販売しています。※「あしかが美人」は主要農産物7品目のブランド名です。
JA足利根菜部に所属する安藤敬太さんは、期待のニンジン農家。2021年12月に新規就農し、現在60㌃の畑で「ベータリッチ」という品種のニンジンに加え、大根やサトイモを栽培しています。

就農のきっかけはコロナ禍でした。一昨年、会社員から飲食店への転職が内定していましたが、コロナ禍で飲食業界を取り巻く環境は一変。しばらくの間、市内で農業を営む先輩の畑を手伝うことになりました。小さい頃から農業に関心を持っていた安藤さんは、実際に体験し、先輩の作ったニンジンのおいしさに感動。「自分もやってみよう」と就農を決意しました。
日頃の手間暇がおいしさの秘けつ
JA足利管内では12月~翌年1月に種をまき、5月~7月に出荷します。「発芽したら半分成功」といわれるニンジンですが、寒い時期に種をまくため、土づくりと発芽してから根付くまでの期間が特に大切です。

ニンジンは土の中でまっすぐ育つように十分に耕耘し、深く柔らかい土にします。また、地温を上げるためにトンネルハウスで覆いますが、この期間は換気作業にも注意します。足利は「からっ風」と呼ばれる赤城山方面から吹く冷たい西風が有名なため、これが直接吹き込まないようにするそうです。
今シーズンが2回目の収穫となります。周囲の反応は「甘くておいしい」と好評で、「ニンジンが苦手な子でも、『JA足利のニンジンは甘くて食べられた』という話をよく聞きます」とやりがいを感じています。千切りにしてドレッシングとあえた「キャロットラペ」や「天ぷら」などが特にお薦めだそうです。
「将来的には規模も拡大したい」と話す安藤さん。作業の効率化のための機械化や新しい栽培方法にも挑戦し、「足利をおいしいニンジンで有名な場所にしたい」と夢を語ってくれました。甘さと情熱がたっぷり詰まったおいしいニンジン、ぜひ味わってみてください。