摘みたての「とちあいか」
摘みたての「とちあいか」

〝芸人の卵〞からイチゴ栽培の道へ

 イチゴの生産量が56年連続日本一の「いちご王国」栃木県。中でもJAはが野は、最大の産地・真岡市を有し、県内10JAの中で断トツの地位を誇ります。高良武幸さんは14年前、人の縁から真岡市に移り住んだことがきっかけで、イチゴ栽培をスタート。現在、自身の農地を所有するイチゴ農家に成長し、主産地を支える若手として期待されています。

 高良さんは鹿児島県知覧町(現南九州市)生まれ。お笑い芸人を目指して2010年に上京し養成校で学んでいましたが、1年近くたって限界を感じていたときに東日本大震災が発生。住んでいた千葉県浦安市も液状化現象に見舞われました。

高良 武幸さん(33歳)
高良 武幸さん(33歳)

 養成校の知人を通じて知り合った真岡市西田井のイチゴ農家、加藤雅之さんに誘われ、真岡市へ移住。「アルバイトがてら、イチゴの勉強をしてみたら」という加藤さんの勧めから、手伝いを始めたことが大きな転機になりました。

 面倒見の良い加藤さんの指導もあり、「イチゴ栽培はやりがいがあり、収入も安定している。一生の仕事にしよう」と決断。13年4月には、加藤さんから畑を借り、ハウス1棟の栽培に乗り出しました。「本当にいい師匠に恵まれました。手厚かった国の農業次世代人材投資事業を活用できたのもラッキーでした」と声を弾ませます。17年にはハウスを4棟に増やし、現在は7棟、21アールの中堅農家へと成長。「このうちの1棟は借りた畑ではなく自前の農地です」と胸を張り、「今年5月には2棟増えます」と精力的に栽培を続けています。

手を掛けた分だけおいしいイチゴに

 真岡市に移り住んで、「イチゴのおいしさに驚いた」と話す高良さん。「練乳なしで食べられることに感動しました」との思いを忘れず、目標は収量だけでなく「おいしいイチゴを作ること」にこだわっています。「前年の小さい失敗を直し、手を抜かない分だけ成果が出て高収入につながる」とやりがいは十分。「自分の力は5%、95%は周りの人の力」と謙虚に話し、栽培仲間

収穫作業に精を出す高良さん
収穫作業に精を出す高良さん

 現在栽培するのは、「とちあいか」のみ。これまで主流だった「とちおとめ」より収量が多いほか、夏の猛暑に強く病気になりにくいためと言います。「品種を一本にした方が出荷するのにラベル張りの間違いがなくていいですね」とおどけながらも、「10㌃当たりの単収を1千万円の大台に乗せたい」と当面の目標を教えてくれました。
お問い合わせはJAはが野営農指導グループ☎0285・80・1919。