江戸時代の浮世絵「東海道五十三次・水口(みなくち)」にも描かれるかんぴょうづくりの風景。細く長くむかれた形に変化はなく「収穫、むき、干し」と続く作業も昔ながらの重労働。水口(滋賀県)から、栃木にかんぴょうが伝わったとされる正徳2年から来年で300年。野州かんぴょうの味は、暑い夏の苦労を重ね、代々受け継いできた郷土の誇る味です。

 ▽特産品絶やさぬ努力

 宇都宮市下反町(しもそりまち)町(ちょう)で4代にわたって農家を営む山崎武夫(やまざきたけお)さん(58)は、同市内でも数少ないかんぴょう農家の一人。現在JAうつのみやかんぴょう専門部の部長を務め、上三川町、南河内地区(下野市)の69人の生産者と共に、郷土伝統の作物を守り続けています。

 自宅から約2キロ離れた28アールの畑にユウガオを作付けし、毎年2000個分以上のかんぴょうを生産しています。「夏休みの思い出といえば、かんぴょうしか思い浮かばないね」と苦笑いする山崎さんですが、「部会として、県内の他産地や問屋組合などと連携し、消費を促す企画などに積極的に協力したいです。栃木の特産を絶やすわけにはいきませんから」と言います。

 山崎家の食卓には、定番の「かんぴょうの卵とじ」から「かんぴょうとジャガイモの甘辛煮」など多彩な料理が並びます。ただ、どんな料理でも、水につけて戻すひと手間がかかるのが、かんぴょうの「宿命」。妻・幸江(ゆきえ)さん(56)は、「若い年代の人には抵抗があるでしょう。でも、最近はかんぴょうのカルボナーラや、サラダに活用されたりバラエティーに富んでいます。ぜひ郷土の特産品にチャレンジしてください」と地産地消を呼び掛けます。

 2009年8月の本紙レシピ欄で※「かんぴょうのオレンジ・ジュレ(ゼリー)」を考案し、紹介したJA全農とちぎの栄養士・鈴木真弓(すずきまゆみ)さんは「和洋中どんな味にもなじみやすいのが、かんぴょうの長所。繊維も多くヘルシーな食材です。もっと身近に感じてもらいたいですね」と言います。

 ▽「産学官」が連携強化

 一方で、かんぴょうの形にこだわらない食べ方を模索する動きもあります。生産農家、県内経済界、大学教授などで構成される「かんぴょうプロジェクト300」は8月10日、昨年に続き2回目のかんぴょうレシピ試食会を開催、約40人が新開発のかんぴょうレシピを味わい、相互の交流を深めました。試食会のテーブルにはふくべ漬け、つくだ煮、キムチなど、ひも状でない24品目が並びました。

 プロジェクトの会長を務める宇田靖(うだやすし)宇都宮大学農学部教授(63)は「伝統は受け継ぎつつも、栃木の食と文化を守るための『プラスα』を考えています。既に生産、加工の分業などが始まっている地域もありますが、農家の努力だけでは限界。生食など新たな利活用を開発し、若い世代にアピールできれば」と抱負を語ります。これに呼応し栃木県農業試験場では、生食用の流通にも適した1キロサイズの収穫試験にも取り組むなど、「産学官」で産地振興に向けた取り組みが進んでいます。

※下野新聞ホームページ「SOON」の「とちぎJAプラザ」で過去の掲載記事を紹介しています。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • かんぴょうの保存 市販のかんぴょうには漂白かんぴょうと無漂白かんぴょうがあり、漂白は未開封ならば常温で保存可能だが、無漂白は要冷蔵。

  • 鳥居忠英 栃木のかんぴょう作りは1712(正徳2)年、近江(現・滋賀県)の水口から壬生に領地替えとなった藩主・鳥居忠英が、水口から種を取り寄せ壬生で作らせたのが始まりとされている。

  • ユウガオ ユウガオの実はウリ科の植物。ユウガオの俗称を持つヨルガオは、ヒルガオ科の植物で別物。

  • 日本文学の夕顔 清少納言の「枕草子」、紫式部の「源氏物語」(4帖)に登場する。源氏物語では、夕顔の君が、光源氏へ「心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花」という歌を贈る。


 コラムオアシス TPP問題/国の形変わりかねない

 昨年10月1日の菅・前総理所信表明演説で、何の前ぶれもなく出された「TPP交渉参加」はどう考えても、リーマンショック以降、中国、ロシアの台頭により、世界経済をリードできなくなった米国の輸出拡大戦略によってギクシャクした日米同盟を背景に、民主党政権がまんまと乗せられてしまったと言わざるを得ない。

 日本は、WTO加盟国として、既に11カ国、地域とFTAを結び、平均関税率は米国、EU、韓国よりも低いし、保護されていると言われる農産物の関税率もEUよりも低い水準である。日本の食料自給率の低さから見てもいかに農業市場が開放されているかが分かるはずである。既に日本は相当開国済みである。

 また、「TPPに参加して、アジアの成長を取り込む」というが、そこにアジアはほとんどない。GDPのシェアから見ても、米国7割、日本2割強、豪州5%、残り7カ国で5%であり日米間のFTAで済む話である。農業分野だけでなく、24分野に及びまさに日本の国の形が変わりかねないTPPには絶対に参加しないための国民的運動をJAグループがその先頭に立って、今後も力強く進めていくべきである。

(JAはが野常務 手塚輝男)

読者の声 ~7月の紙面から~

・JAプラザは県内の生産の様子がよく分かるので毎月楽しみにしています。「山内フルーツ村」行ってみたくなりますね。質の高い果実を味わいに出掛けます。(54歳・女性)

・現在日本の農業は「農業従事者の高齢化」「後継者不足」「TPP参加」など問題山積。この難問を解決できるのは「JAの組織力」「全国のJAの力」です。JAの活動に期待しています。(68歳・男性)

・JAグループの直売所で、いつも買い物をしています。新鮮な上、価格も手ごろ。また総菜もちょうど良い味です。作った方の写真や名前もあり安心。(62歳・女性)

・農家の方々が大切に育てた野菜「これからも地場産の野菜をおいしくいただきたい」…あらためてそう思います。今回の「ブルーベリーのしっとりラスク」のレシピ、とても参考になりました。(37歳・女性)

 [写真説明]未明から朝方まで続くかんぴょうむきの作業。全部むき終えた後は、休みなく干し作業に入る。この日も山崎さん宅では約70個の実をむいた=宇都宮市下反町町

 [写真説明]かんぴょうプロジェクト300のかんぴょうレシピ試食会。24種のレシピが並んだ