にっこり、県産品をけん引

 JAPAN−TOCHIGI−。香港のスーパーの店頭に並ぶ県産品に、「栃木」のアルファベット文字が堂々と踊っています。他の産地の品物は「日本」としか表記されません。栃木県産品だけに与えられた“称号”。実は県産の高級ナシ「にっこり」の活躍が背景にあるのです。

 ■ 栃木の信用度アップ ■

 にっこりの海外輸出は2004年度にスタート。香港に1250キロを輸出したところ、贈答用として大人気を呼びます。輸出国の増加に伴い、輸出量も急上昇。06年度は香港、台湾、シンガポール、タイの4カ国へ、計5700キロ分が海を渡りました。

 県経済流通課の担当者は「ジューシーで食感がよく、甘みもあるにっこりは評価が高い。おかげで栃木県産の信用度が上がり、ブドウや米などほかの品目も輸出できた。TOCHIGIの表記は、いいものを出している表れ」と誇らしげです。本年度は10トン以上の輸出を目標に掲げています。

 海外での評価を不動のものにしたにっこり。栃木県産のナシの栽培技術の高さを証明してくれました。

 にっこりをはじめ、幸水や豊水など、ナシは県を代表する果実です。肥沃な大地、澄んだ水、日照量の多さ…。みずみずしいナシを栽培するのに好立地で、生産量は全国5位。産地ごとに肥料を統一したり、研修会を実施するなど、技術の平準化や品質向上に努めています。

 おいしいナシの条件として、欠かせない“甘さ”。県内の主要産地では高性能な光センサーを装備した選果施設の整備が進み、実に約7割のナシが光センサーによって選別されています。糖度の高いナシを差別化するだけでなく、得られた選果データを栽培管理にフィードバックします。

 ■ センサーで糖度判定 ■

 JAおやまの東部選果場。収穫されたばかりの幸水が、どんどん選果ラインを進んでいきます。人の目で形状を選別された後、皮をむかずに糖度や熟度を測定できる光センサーを通過。中でも糖度13度以上と判定されたナシは、「甘夢梨(かんむり)」と記された段ボール箱に詰められました。

 「甘夢梨」は、JAおやまならではのブランド品。「幸水でも豊水でも、13度以上は全体の1%程度しか出ません。生産者の行き届いた管理によって仕上がった逸品で、形状や硬さにもこだわっています」と同選果場の鶴巻英夫さん。

 県内ではJAおやまの「甘夢梨」のほか、JAなすの(「自信作」)、JAうつのみや(「プレミアム13」)、JAはが野(「はが野梨」)の4JAが、高糖度の幸水と豊水をブランド化。県内や首都圏のデパートなどで販売しています。

 JA全農とちぎ園芸部の松浦永一郎さんは「一般に流通しているナシは糖度11~12・5度ですが、それでも十分に甘い。13度以上はそれを上回る特別な甘さ」と太鼓判を押します。さらに「本県産は幸水からにっこりまで販売期間が長く、市場の評価も高い。技術を高めながら、糖度のあるおいしいナシを供給していきたい」と力を込めました。

 梅雨明け以降、30度を超える暑さが続く県内。太陽の光をいっぱい浴びた、甘さたっぷりのナシが期待できます。取れたてのみずみずしいナシでのどを潤し、残暑を乗り切ってみてはいかがでしょうか。

【安全安心への取り組み】 肥料・農薬の使用基準を順守するとともに、生産者が自ら栽培履歴を記帳し、残留農薬検査も実施している。記帳したデータはJAなどで管理し、トレーサビリティの確立を目指している。

 [写真説明]収穫されたナシはまず、人の目で形状を選別。その後、光センサーで糖度などが判定され、高品質なナシとして消費者の手に届く=JAおやま東部選果場


◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇ ナシ編

  • 名前の由来 「ナシ」の由来は、(1)果肉の色が白いので「ナカシロ」といい、それが省略された(2)芯に近くなるほど酸っぱいので「ナカス」といい、省略され「ナス」から「ナシ」になった−など諸説がある。「無し」とするのを嫌い、「有(あ)りの実」とも呼ばれた。

  • 品種 ナシは日本ナシ、西洋ナシ、中国ナシの3種類に分けられる。西洋ナシ、中国ナシ、日本ナシの順で甘くなる。日本ナシはさらに、表皮に褐色のさびがある「幸水」「豊水」などの赤ナシと、「二十世紀」を代表とする表皮が黄緑色の青ナシに分けられる。

  • 歴史 世界中で古くから親しまれ、日本では最も古い栽培果実の1つとされる。弥生時代の遺構から、炭化したナシの種が見つかるほど。日本書記にもナシに関する記述があり、江戸時代には150もの品種が栽培されたという。


 コラムオアシス みんなで守ろう 地域の農業

 私は、40年間専業農家をしていました。水稲、トマトを中心とした経営です。その中で農業、農地に対して感じたことは、一人では農業、農地、農村は守れないということです。

 用水、排水にしても多くの手を加えないと現在の自然の姿はありえません。この自然と言っても、田舎の自然は人間が作りあげた自然なのです。山があって川があって、田んぼ畑があります。田畑の畦畔の除草や保全はとても大変です。先人たちが、除草、耕起作業を何年にもわたって繰り返して来て、現在の姿があるのです。

 今後も、多くの人たちの努力によってこの姿を継承しなければなりません。そして、多くの住民、農民の方に「一人では守れない」「みんなで守ろう!!地域の農業」を、声を大きくして言いたいです。

(JAはが野代表理事組合長 細谷茂)