菌床センターから栽培農家へ転身
カルシウムの吸収を助けるビタミンDを豊富に含み、血中コレステロールや血圧を下げる効果があるシイタケ。林業が盛んな栃木県ではシイタケ栽培が盛んに行われてきましたが、JAしおのやもその一つ。この地域では、旧JA喜連川の地元有志が菌床シイタケの栽培に着手。JAが全国的にも珍しい菌床センターを運営するなど力を入れ、県内有数の産地として知られるようになりました。

JAしおのや菌床しいたけ部会(組合員21人)に所属する久保井勲さんは、6年前に就農。以前はJAしおのや職員として菌床センターで菌床の製造をしていました。「菌床作りだけでなく、シイタケが消費者の手に届くところまで手がけたい」という思いで一念発起。規模を縮小した農家の空調ハウスを借り、菌床シイタケ栽培をスタートしました。

現在、久保井さんは100平方㍍の空調ハウス3棟で「北研607号」の品種を栽培。菌床栽培は、原木栽培と比べて原木を運ぶなどの肉体的な負担が少なく、「年間を通じて安定供給できる点が強み」と話します。
生育を左右する温度と湿度管理
菌床センターで作られた菌床は、農家の元で約5カ月間寝かされます。菌床に菌が行き渡った後、温度による刺激を加えるとシイタケが発芽しますが、菌床栽培で特に難しいのが温度と湿度の管理。菌床は水を好む一方、発芽したシイタケは水を嫌うため、生育状況や季節に応じて、シイタケにとって最適な環境づくりに細心の注意を払います。「菌は目に見えないので教科書通りにはいきません」と久保井さん。その栽培への熱意を支えてくれるのは、先輩農家であり、菌床センターで働いていた前職での経験です。
久保井さんが栽培したシイタケは、JAしおのやを通じて東一宇都宮青果と東京シティ青果から全国に出荷されるほか、地元の農産物直売所さくらとたんたんプラザ光陽台にも並びます。「自分の名前が表示された作物が、店頭に並ぶのは感慨深い」と笑顔を浮かべ、「直接、消費者と接することで栽培での新しい発見も多い」と話します。

「シイタケは香りが強すぎて苦手、という方もいるかもしれませんが、菌床シイタケは味も香りも優しいので、多くの人に食べてもらいたいです」。今後は栽培の規模拡大に加え、「新規で就農する農家との架け橋にもなりたい」と抱負を語ります。
お問い合わせは、JAしおのや喜連川菌床センター☎028・686・5377。