冬の厳しい寒さが育む独特の甘みとうまみ−。「ちぢみほうれん草」は、この時季にしか味わうことのできない限定品です。一般的なホウレンソウの2倍以上にもなる糖度の高さが魅力で、おひたしや炒め物などに最適。県内では旧国分寺町(現・下野市)や小山市を中心にJAおやま管内全域で生産されており、とちぎ農産物マーケティング協会の「地域ブランド農産物」にも認定されています。

 ▽栽培に苦労と工夫
 「収量や価格が安定してきたことで、経営としての栽培が成り立つようになりました。栽培技術もだんだん磨かれて、いいものを作れるようになっています」。JAおやまで作付けが始まった2003年当初からの生産者の一人で、「ちぢみほうれんそう部」の初代部長を務める大越秀敏(おおこしひでとし)さん(75)=下野市小金井=は、そう言って柔和な笑顔になりました。

 同部のメンバーは現在52人。全体で約10ヘクタールを作付けし、12月~2月の3カ月間で約10トン(2万ケース)を出荷しています。「12月は糖度8度以上、1、2月は同10度以上」という出荷条件を厳密に守り続けてきたことで、「甘いホウレンソウ」としての知名度が徐々に高まり、売り上げも着実に伸びてきています。

 ただ、栽培方法が安定するまでには、生産者一人一人の苦労と工夫の積み重ねがあったそうです。ちぢみほうれん草は、冬の寒さにさらす「寒締め」の必要があり、ビニールハウスによるトンネル栽培ではなく、完全な露地栽培で行っています。このため、水はけのよい肥えた土地を選んで栽培しなければ十分な生育は難しいとされています。さらに、ちぢみほうれん草ならではの液体肥料の葉面散布にも神経を使うそうです。

 ▽規模の拡大が目標
 栽培開始から10年目となった今シーズンについて、大越さんは「冷え込みが早かったので糖度が最高」と言葉に力を込めます。2010年春、東京都内で会社員をしていた長男の秀樹(ひでき)さん(42)が会社を退職し、妻の暢子(のぶこ)さん(41)と共に就農しました。後継者の誕生をきっかけに今シーズンは例年より生産量を増やしたそうで、「結果どんぴしゃでした」と目を細めます。

 大越さんと妻チイさん(74)の傍らで、収穫したちぢみほうれん草の袋詰め作業を手伝っていた暢子さん。「まだまだ新米で義父母に教えてもらうことばかりですが、迷惑をかけないように頑張っていきたいです」と、頼もしい言葉を聞かせてくれました。  JAおやま北部集出荷所でちぢみほうれん草を担当する東川重伸(ひがしかわしげのぶ)さん(40)は「一度食べてその独特の甘さを知ると、また食べたくなるのがちぢみほうれん草の魅力だと思います。ぜひ多くの方に食べていただきたい」とアピール。その上で「ここ2、3年は売り上げも好調です。今後は栽培面積や会員を増やすなどして規模拡大を図っていきたいですね」と力強く話していました。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • ちぢみほうれん草の特徴 別名「ちりめんほうれん草」とも呼ばれ、ちりちりに縮れた葉が特徴。普通のホウレンソウより葉肉が厚く、茎や根の部分も太くて色が濃い。ホウレンソウに特有な苦みが少ないため、あまり火を通さなくてもおいしく食べられる。

  • 寒締め ホウレンソウは、冬場に寒さにあたると凍結するのを避けるために、葉がしまって肉厚になり、うまみや甘みが増すという性質を利用した栽培法。

  • おいしいホウレンソウの選び方 葉の先がピンとしてみずみずしく、鮮やかな緑色で肉厚のものを選ぶ。根の切り口が大きくて、赤みが強く、葉が根に近いところから密生してボリューム感のあるものが良いとされる。


 コラムオアシス TPP交渉参加/農業や国家の衰退危惧

 昨年10月、新規需要米専用施設「思川カントリーエレベーター」が完成しました。JAおやま管内の米粉米や飼料米の作付面積が450ヘクタールと前年の1・5倍に増加したことに対応したものです。休耕地に新規需要米を作付けするうえで「戸別所得補償制度」が必要な事は言うまでもなく、農地保全の面から制度維持を求めていかなければなりません。

 一方、先日のテレビ番組で自民党の高市早苗政調会長は安倍晋三首相がTPP交渉への参加を決めた場合には容認する考えを表明しました。農家一戸当たりの平均耕地面積は、アメリカ新大陸型の農業で数百ヘクタール、オーストラリアでは数千ヘクタールの規模であり、わずか1・8ヘクタールの日本農業が同じ土俵で競争することはできません。聖域なき関税撤廃を前提にするTPP参加により農業・地域経済が疲弊することは必至であり、国家の衰退も危惧されます。このため、TPP交渉参加には断固反対です。

 福島第一原発事故を受け、安全・安心な農畜産物の生産・販売などJAとして県民の皆さまの期待に応えられるよう、組合員・役職員一体となって全力で取り組んでまいります。

(JAおやま 代表理事専務 古河利守)

 [写真説明]収穫したちぢみほうれん草の袋詰め作業に余念がない大越さん
 [写真説明]ちりちりに縮れた葉が特徴のちぢみほうれん草