ジューシーな甘みと、とろけるような食感が味わえるモモの季節です。県内唯一の産地の佐野市では、南西部の国道50号と県道桐生岩舟線を結ぶ約2キロの「佐野フルーツライン」が収穫、販売の主舞台になっています。

 「とちぎ食の回廊」にも位置付けられているフルーツラインの周辺には観光果樹園の直売所22軒が並び、そのほとんどの店でモモを扱っています。品種は、日本のモモの元祖とされる「白桃」、出荷量の多い「白鳳(はくほう)」を2大系統とする10数種類。それぞれの収穫時期が微妙に異なっているため、8月中・下旬まで多彩な味わいが楽しめます。

 ▽水と土壌栽培に最適

 長らくフルーツライン沿いで直売所を営み、3月からJA佐野果樹部会(会員63人)の部会長を務める川村(かわむら)貞(さだ)夫(お)さん(61)は「佐野の、水のおいしいところや土壌がモモづくりに適しているのだと思います」と推測しています。続けて「最近は品種による糖度のばらつきがなく、味も品質もいい。自信を持ってお薦めできます」と力強く話してくれました。

 一方、おいしいモモを育て上げるまでにはさまざまな苦労があるそうです。棚栽培が主流のナシなどと違って、モモは自然状態の立木栽培が一般的。耐水性に弱いという特性もあり、強い雨風を受けると木が倒れたり枯れてしまう危険性が高まります。

 「天候に左右されやすい中、どうやって安定生産するかがモモづくりの醍(だい)醐味(ごみ)」。フルーツライン近くの約70アールのモモ畑で収穫し、自らの直売所で販売している鈴(すず)木(き)貫(かん)太(た)郎(ろう)さん(43)は、そう話します。東京都内で会社員生活を送った後、30歳過ぎに実家に戻って就農。モモ栽培で2代目、ナシ栽培では4代目に当たります。

 ▽台風で全滅の体験も

 モモの生産を始めた父親の徳三(とくぞう)さん(72)には、数十年前の苦い思い出があるそうです。「あと2、3日で収穫という時にすごい台風が来て、果実がすべて地面に落ちて駄目になってしまった。そういうことがあるんですよ、モモは」と振り返ります。

 こうした父親の体験も踏まえ、貫太郎さんは就農した直後から「天候対策」に熱心に取り組んでいます。強風による倒木や、大きくなった果実の重量で木がたれ下がるのを防ぐための支柱の設置だけではありません。

 約13年前から実験的に続けている棚栽培もその一つです。廃園したナシ農家の施設を借りて約20アールで栽培。立木栽培より剪定(せんてい)などの手間が多くかかりますが、棚で雨風を防げるメリットは大きいそうです。

 「最近やっと立木栽培と比べてそん色ないものができるようになりました」。そう言って柔和な笑みを浮かべた若き後継者に今後の目標を尋ねると、こんな答えが返ってきました。

 「単純に『うまい』と言って食べてもらえるモモをつくり続ける。それだけですね」

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • モモの歴史 原産地の中国では3千年前から食用として栽培されていたといわれる。日本に伝わった時期は定かでないが、全国各地の遺跡からモモの種が発見されており、縄文時代末期から弥生時代にはすでに食べられていたとみられる。ただ、本格的な栽培が行われるようになったのは、海外品種が導入された明治時代以降。

  • モモの選び方 きれいな丸みをしていて、全体的に赤く色づいているものを選ぶ。皮の色は濃い方が甘みがあり、色の濃い部分に白い点々があればベター。果皮全体に産毛があり、香りの強いものがおいしい。

  • 保存方法 食べる2~3時間前に冷蔵庫の野菜室に入れる。軽く指を当てて、柔らかみを感じると食べごろとされる。


 コラムオアシス TPP反対運動/国民生活への影響懸念

 野田総理は昨年11月、「TPP交渉参加に向けて、関係国との協議に入る」と表明し、ハワイ・APEC首脳会議において、関係国にその旨を伝達しました。

 しかし、TPP参加は日本経済に大きな影響を与え、国民の不安へとつながるでしょう。特に、食料の面では、輸入された安価な農畜産物が流通し、国産農畜産物が売れない状況に追い込まれ、日本の食料自給率は40%から13%まで低下すると言われています。その他、農業生産額は減少し、日本農業の中心である水田などが持つ多面的機能の低下・喪失が懸念され、就業機会の減少が危惧されています。

 また、東日本大震災から1年が経ちましたが、復興作業はまだまだ遠い道のりを歩んでいます。今の日本にとって、TPP参加は果たして本当に必要なことなのでしょうか。

 JAなす南では、地域の皆さまにTPPについて正しく理解していただくために、これまでさまざまな活動を行ってきました。今年5月には、那須南九条の会、南那須地域医療を守る会と共催し、TPP学習会を開き、300人以上のご参加をいただきました。研修会では、TPPが私たちの生活に与える影響を農業や医療の側面から分かりやすく解説、理解促進を図りました。今後もJAなす南はJAグループの一員として、TPP参加を阻止するため、反対運動を展開し、理解促進に努めてまいります。

(JAなす南常務理事 久郷利夫)

読者の声 ~5月の紙面から~

 【牛肉輸入は心配】主婦にとって最も気になるのは、毎日の食の安全です。BSEのリスクがある、牛肉の輸入は心配です。消費者はもっと「国産の農産物の良さを見直していかなくてはならない」と思います。(59歳・女性)

 【子供の食の安全が大事】何といっても、食やいろいろなことが「安心」なのが一番ですよね。子供たちにも、食の「安全」が大事です。JAさんも、TPP反対に頑張ってください。(65歳・女性)

 【雇用の確保厳しく】TPPで米国産自動車の輸入が拡大すると、「雇用の確保さえ厳しい状況になるのではないか」と心配です。(42歳・女性)

 [写真説明]白鳳系のモモなどがずらりと並ぶ鈴木さん方の直売所
 [写真説明]「みずみずしさと甘みがモモの魅力」と語る鈴木貫太郎さん