「甘くておいしい」「色もカラフルできれい」−。4月上旬、上三川町東蓼沼(たてぬま)のトマト生産農家・古口雄一(こぐちゆういち)さん(38)=JAうつのみや越冬トマト専門部会長=のハウスに明るい笑い声が響きました。JAうつのみやなどの協力で企画された農協観光の収穫体験バスツアーは、東京都近郊から消費者44人が参加し大盛況。取りたての中玉トマトを頬張る人、わずかな時間でも袋いっぱいに詰め込む“プロ顔負けの猛者(もさ)”など、存分にトマト狩りを満喫しました。

 大震災後の停電による凍害、原発事故後の風評による市場価格の暴落など「悲惨な日々」から丸一年。笑顔のあふれかえるハウス内の光景を前に、古口さんは「JAうつのみやの元気なトマトを、東京の方に十分アピールできたでしょう…。良かった」と、しみじみ漏らしました。

 ▽前年比120%が目標額

 古口さんをはじめ、JAうつのみやのトマト生産農家は、震災後の困難から立ち上がり、大寒波、風評被害にも歯を食いしばって頑張ってきました。古口さんらと同様に、苦しい時期を乗り越えた春トマト専門部の野口時男(のぐちときお)部会長(62)=上三川町上蒲生=は、「震災直後も辛かったが、見えない敵・放射能に最も神経を使った一年でした」と振り返ります。

 ハウスの準備が始まる8月ごろ、土耕栽培に欠かせない腐葉土の調達が部会内で問題となりました。「1件でも(汚染の事例が)出れば、うつのみやだけでなく栃木県全体のトマト生産者に迷惑が掛かってしまう。消費者の信頼こそが産地の命です」(野口部会長)。JAうつのみやは、いち早くGAP(農業生産工程管理)に取り組み、安全・安心を心掛けているだけに、その思いはひとしおでした。

 今年、春トマト専門部会は「販売額前年比120%」を目標にしています。出荷シーズン前に規格を検討する1月の目ぞろえ会で野口部会長は「重油の高騰など栽培環境の不安は続くが、くじけずにトマト作りに全力を注ごう」と部会員に呼び掛けました。鮮やかに熟したトマトには、太陽と大地の恵みと、生産者の熱い思いが詰まっています。

 ▽中玉で商品力アップ

 年間で約4200トンの大玉トマトを生産するJAうつのみやは、「越冬」(収穫時期、10月から翌年6月)、「春」(同、1月から7月)のほか、「半促」(同、5月から7月)、「夏秋」(同、6月から8月)、「抑制」(同、9月から12月)の作型で周年出荷しています。品種は全体の半分以上が桃太郎系で、品種にかかわらず糖度7度以上のトマトは「プレミアム7」としてブランド化を図っています。また昨年7月、若手生産者が中心となって「トマト研究部」を発足させ、赤、黄色、オレンジ色、紫の中玉トマトの生産に取り組み、産地としての商品力アップに努めています。

 JAうつのみやのトマトは主に京浜市場に出荷されていますが、宇都宮や仙台にも出荷されています。また4色トマトは「プリトマ」の名前で、JR宇都宮駅ビルパセオの「えきの市場」などでも販売しています。JAうつのみやのトマトの問い合わせは、営農部園芸指導課電話028・667・0152。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • おいしいトマトの選び方 赤い色が濃く、全体的に均一で皮の張りと艶があるものを選ぶ。ずっしりと重いものほどジューシー。

  • 桃系と赤系 色別では、桃系と赤系がある。赤系はほとんどが加工用、桃系の代表品種は「桃太郎」。国内では1970年代ごろまで、出荷途中で表皮が傷まないようにと青いうちに収穫・出荷していたが、傷みにくい桃太郎の誕生で完熟出荷が可能になった。

  • 膨らむ果実 名前の由来は、メキシコの先住民の「トマトゥル」という言葉から。意味は「膨らむ果実」。

  • 鑑賞用 江戸時代は「唐なすび」などと呼ばれ、江戸時代の絵師・狩野探幽の写生帳にも絵が残っている。当時は鑑賞用で、食用でなかったらしい。


 コラムオアシス 議論不足のTPP/安易な決定は言語道断

 政府は正確な情報を開示しないまま、依然として前のめりの姿勢を崩さず、TPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に向け着々と事前協議を進めております。
 そのような中で、政府は、アメリカ通商代表部の発言などを基に、関税撤廃の例外が認められる余地があるというような見解を示し始めてきました。

 しかし、これはあくまでも希望的観測にすぎず、そのような甘い考え方では、わが国の農業を守っていくことはできません。
 現在、国内各地で政府担当者によるTPPの説明会が開催されております。本県をはじめ、各地の開催内容を見てみると、その説明は、米など個々の農産物に関する交渉や、参加した場合の農業保護などについて具体的には一切踏み込んではおらず、われわれ農業関係者にとってまったく説得力に欠ける内容となっております。この説明会の開催が、「政府は国民に対し説明済みである」といった既成事実として扱われてしまうことが懸念されます。
 政府は一刻も早く正確な情報を開示し、国民の納得するような説明を行い、国民的議論を行ったうえで、交渉参加有無を検討すべきであり、安易な交渉参加決定など言語道断です。
 今、日本は、東日本大震災からの復旧・復興が、何よりも優先されるべきであります。

(JA栃木中央会会長 髙橋一夫)

読者の声 ~2月の紙面から~

【かき菜、よく分かった】かき菜はあまり知りませんでしたが、よく分かりました。10カ月の息子にも離乳食にして食べさせたいです。(41歳・女性)

【食料自給率について考えよう】耕作放棄は大きな問題です。食料自給率を高めるにはどうしたらよいか、全国民で考えてほしい。(59歳・女性)

【TPP慎重な対応望む】「農地は全国民の財産」に心打たれました。若者が希望と誇りをもって後継者になれるような基盤を確立する必要性を感じました。そのためにもTPP問題は慎重に対処してほしいものです。(71歳・男性)

【かき菜レシピに驚き】かき菜のレシピありがとう。こんな食べ方があるとは思いませんでした。とてもおいしかったです。(63歳・女性)

 [写真説明]4色トマトの収穫を楽しむバスツアーの参加者
 [写真説明]販売額前年比120%を目指す春トマト専門部会の野口部会長。「くじけることなく全力を注ぎます」=上三川町上蒲生