自給率向上との両立不可能/生産額は「4兆円減」

 15年ぶりの国内開催となった「アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議」が先月、アジア圏内を「緊密な共同体」にすることを目指す「横浜ビジョン」を採択し閉幕。日本政府は「環太平洋パートナーシップ協定(TPP)」で「関係国との協議開始」を表明しました。TPPは、締結すれば日本国内の農業が壊滅的打撃を被る恐れがあり、今年3月に政府が掲げた食料自給率50%という目標に逆行します。菅直人首相の言う「平成の開国」をめぐって日本の農業は今、大きく揺らいでいます。

 ▽TPPとは?

 TPPは、2006年5月にシンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドの4カ国が加盟し発効したEPAの1つです。加盟国間の経済制度、サービス、人の移動、基準認証などを調整し、2015年までに関税を例外なく撤廃することを目指しています。

 今年3月からは米国、オーストラリアなども交渉に加わり、現在計9カ国が交渉を進めています。菅直人首相は10月の臨時国会の所信表明演説で「TPP交渉などへの参加を検討し、FTAAPの構築を目指す」と表明。アジア太平洋各国への輸出拡大が、日本の経済成長につながるという認識を示しました。それ以降、国内でTPP参加の是非をめぐって議論が始まりました。

 ▽米は9割減

 ではなぜ、日本の農業に影響が出るのでしょうか。2国間で物品を売買する際は、関税などの国境措置がとられていますが、TPPでは、全品目において、関税をゼロにすることを目標としています。そうなれば、海外の安価な農作物が国内にどっと押し寄せてくることは間違いありません。

 輸出に関連する製造業にとっては、大きなメリットとなり、中央経済界からは期待する声も上がっています。しかし国内の農業生産額は農林水産省の試算によると、4兆1000億円の減となり、特に日本の主食である米は、一部を除いて輸入品に置き換わり90%減、1兆9700億円の損失と計算しています=表参照。

 ▽自給率急落

 現在、日本の食料自給率(カロリーベース)は先進国の中でも最低水準の40%。政府は「国民全体で農業・農村を支える社会の創造」を掲げ、自給率50%に引き上げる目標を立てていますが、TPPを締結すれば14%にまでダウン(農水省試算)してしまいます。

 また農業には、農産物の生産だけでなく、生産活動を通じて田や畑、山林などが生み出す「多面的機能」があります。日本学術学会の報告書では「洪水防止」「水源涵養」など農業・農村の持つ環境保全機能の評価額は8兆2103億円に上ります。もしTPPに参加した場合、水田などが持つ数多くの生き物を育む機能も失われ、3兆7000億円(農水省試算)が損なわれます。

 ▽地域経済衰退

 農業・農村が受ける影響は、食品加工業など農業と密接にかかわる産業界にも波及し、約340万人が職を失うと見込まれています。

 さらに、TPPは人の移動やサービスの障壁も取り除くことが含まれるため、農業だけでなく他の産業にも悪影響が考えられます。具体的には、外国の企業や労働者の新規参入による賃下げやデフレ圧力の高まりにより、地方経済の衰退や地域の農山村の活力低下を招きかねません。

 TPP問題は、農業関係者だけでなく、国民全体で慎重に見極めなければならない問題です。

◇◆◇ 農業関係の時事用語 ◇◆◇

  • FTA(自由貿易協定) 関係の深い2国間や地域ですべての関税を原則ゼロにするなど通商上の制限を廃止し、貿易を自由化する取り決め。国内産業に配慮し、協議で例外品目を設けるケースが多い。日本は2002年1月にシンガポールと初めて締結。WTOを舞台にした多国間交渉の難航を受け、世界各国・地域間で締結が急増している。

  • EPA(経済連携協定) 特定の国・地域との間で貿易、投資などを自由化する協定のことで鉱工業製品や農作物の関税撤廃に加えサービス貿易の障壁削減、労働力の移動も進めて経済関係を強化する。日本はこれまで東南アジア諸国を中心に11の国・地域とEPAを発効、2009年の貿易額全体に占める割合は16・5%。農作物の市場開放には日本農業の衰退につながると反対意見が強い。

  • FTAAP(アジア太平洋自由貿易圏) アジア太平洋経済協力会議(APEC)に参加する21カ国・地域全体をカバーし、貿易や投資の自由化を目指す地域経済統合構想。


純輸入額は世界最大/日本の農水産物輸入額

 日本の農水産物輸入額は、円高や貿易自由化が進む中で、大幅な輸入超過(輸出よりも輸入が上回る)になっています。

 昨年の日本の農林水産物輸入額は約6兆7000億円で、純輸入額としては世界最大。日本の農産物の平均関税率は12%であり他の国を大きく下回っています。菅直人首相はTPP締結を「平成の開国」と言っていますが、日本は既に十分に開かれた市場となっています。

 また、国土の狭い日本で何百、何千ヘクタールという経営規模の米国、オーストラリアの農産物と対等な国際競争力を身に付けるというのは現実を全く無視しています。

 コラムオアシス JAの使命/「よい食」通じ地域に活力を

 JAグループは「みんなのよい食プロジェクト」の中で、地産地消の推進を進めています。地産地消とは、地域で生産されたものを、その地域で消費することです。また合わせて生産者と消費者が互いに顔が見え、話ができ、農や食に対する理解を深め、地域の農業を活性化させています。

 JA足利ではこの取組の中で、毛野地区八椚町に4店舗目となる農産物直売所「あんあん八椚」を12月3日に新規オープンいたしました。農産物直売所では、取れたての新鮮な農産物が安く手に入ります。特に新鮮な農産物は何よりもおいしい素です。この時期は真っ赤ないちご・とちおとめがおすすめです。

 また、来年1月中旬から大久保町のいちご農園「JA足利アグリランド」では、いちごの摘み取り体験や直売を始めます。真っ赤ないちごを自分の手で摘み取り、新鮮なとちおとめをお腹いっぱい食べて下さい。皆様のご来園をお待ちしております。

 今後も農産物直売所やいちご農園を通して地産地消を積極的に推進し、地域農業の活性化を進め、JAの使命を果たしていきたいと思います。

(JA足利常務理事 飯田栄)

読者の声 ~10月の紙面から~

【毎年楽しみなJAまつり】
・紙面いっぱいに地区の日程が載っていたので、ちょっと遠くても足を運んでみようと思いました。農産物も美味しいし、色々な販売など毎年楽しみにしています。(59歳、女性)
・このような催しがあることを全く知りませんでした。しかし、今回の紙面を読ませて頂き、今年は是非行ってみたいです。掲載されている写真からとても楽しそうな雰囲気が伝わってきました。(38歳、女性)

【地域に根付いたJAに期待】
・職場のチームワークこそ顧客満足の充実…これからも地域に根付いたJAを期待しています。(60歳、女性)
・高齢者対象の健康教室(JAくらしの活動)、とても素敵なことであると強く思いました。(39歳、女性)