期待高まる新栽培方式

 よく冷えたみずみずしいナシがおいしく食べられる季節になりました。ナシは水分、糖分だけでなく、カリウムも豊富で、厳しい残暑を乗り切るには欠かせない果物の一つです。

■国内全体では約6割■

 数多くの品種がある日本ナシですが、「幸水」と「豊水」が2大ブランドとして確立され、国内生産全体の6割以上を占めています。県内の日本ナシの作付面積は約900ヘクタールで、そのうち幸水は約46%、豊水は約39%を占めています(平成18年、農水省・果樹品種別生産動向調査)。本県生まれの晩成種「にっこり」も徐々に増えていますが、県産ナシの“屋台骨”を支えているのはやはり幸水と豊水です。

 農林水産省の統計によると2009(平成21)年の県内収穫量は2万3300トンで、鳥取(2万2300トン)を超え初の全国4位に浮上。1位の千葉(4万200トン)、2位の茨城(3万2400トン)、3位の福島(2万5600トン)に次いで4強入りしました。また10アール当たりの収量(反収)も高く全国3位。本県の場合、にっこりのような“重量級”の品種もあるため単純比較はできませんが、収穫量上位5県の中ではナンバーワンを誇っています。

■生産者に多くの利点■

 その高い収量をさらにレベルアップさせるための研究が、県農業試験場(宇都宮市瓦谷町)で続けられています。03年、同試験場が開発した「盛土式根圏制御(もりどしきこんけんせいぎょ)栽培」と呼ばれる本県独自の栽培方法です。遮根シートに盛土し植えるため土壌管理の手間が掛からず、樹勢維持が図れます。従来の方法では、新植から3年以上かかる初収穫も2年目から可能。また樹は並木に植え、枝はY字(従来は平棚)に仕立てることにより収量は2倍、作業効率が高いとともに、肩や腰に負担のかかる上向きの作業が少なくなります。

 新栽培法による作付面積は現在わずか40アールと県全体の0・1パーセントにも満たない状況ですが、同試験場園芸技術部果樹研究室主任研究員の大谷義夫(おおやよしお)さん(43)は「県内農家では老木の増加と生産者の高齢化も進んでいるため、この栽培方法の普及を進めるメリットは大きいはず」と言います。現在、導入の際にネックとなる初期コストを軽減した「底面給水方式」という改良版も開発するなど、生産者にとってより導入しやすい方式を研究しています。

 宇都宮市古賀志町の大柿高志(おおがきたかし)さん(37)は3年前、新たに10アールを新方式のハウス栽培で幸水を新植しました。大柿さんは「遮根シートや配水を制御する装置など初期費用は掛かりました。しかし、収量は平棚のほぼ2倍。作業も楽で、きれいな水をかん水するので味にもいい影響が出ている。糖度も平均で0・5度ぐらいは高いのでは」と、新栽培法を評価します。今後は、作付けも品種も拡大させていきたいと言います。

 産地の振興は、生産者の努力が何よりも大事ですが、こうした研究機関のサポートも重要です。新方式は幸水だけでなく他の品種にも適用できるため、ますます栃木ナシの躍進に期待ができそうです。

 [写真説明]「盛土式根圏制御栽培」で「幸水」を生産している大柿さん=宇都宮市古賀志町

 [写真説明]根圏制御栽培の研究が進められている県農業試験場の果樹園。手前が旧方式、奥が改良版の「底面給水方式」

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • おいしいナシの選び方 左右対称で変形してないものが良い。また、幸水などは、果実が腰高なものより、やや偏平したものの方が糖度が高い。

  • 世界のナシ ナシには日本ナシ、中国ナシ、西洋ナシの3つに大別され、世界の主産国は中国、イタリア、米国、アルゼンチン、スペインの順。日本ナシは幸水、豊水などの赤ナシ系、二十世紀などの青ナシ系があるが、青ナシ系の生産は全体の15%にとどまっている。

  • 二十世紀ナシ 1895(明治28)年ごろ、千葉県松戸市で偶然見つかった苗を移植し実生した。「20世紀の果物の王者に」との夢を託して命名された。


 コラムオアシス 利益出る農業経営目指して 総合力で地域農業に貢献

 農協は、農家戸数・農業者数の減少等の対策として高齢者や自給的・趣味的農業者への直売所出荷の誘導や新規就農者の就農支援や担い手の育成など、農協の新しい利用者の確保が急務になってきている。
 芳賀郡の農業をみれば、日本一のイチゴ産地として、経営と産地の一体化を図り、更なる品質の向上を目指している。高齢化や後継者問題など全国的な問題と状況は変わっていないが、特産地としての園芸農業の魅力は、地域に大きく浸透している。そのため新規就農者なども毎年あり、技術面も向上している。
 就農について、農業で成功を収めている地域・団体・個人の多くは、次の条件が当てはまると認識している。
 (1)就農から絶えず工夫をこらし、最新技術を取り入れているころ(2)経営内容と特産地が同一であることや立地や気候条件も利用できること(3)食の安心・安全への取り組み。  これらの内容を地域の農業にどのように取り組むかが今後の農業の課題である。利益の出る農業経営を理想に求めるが、現実は、設備投資と機械化で安定した所得の確保が難しいし、機械化やハウスなどの設備がないとサラリーマンと比べて大差のない所得水準が確保されないなどの問題も残している。
 農協は、農協の出来る総合力を発揮して、地域農業・就農者の育成に貢献し、農業問題を解消したい。

(JAはが野常務理事 黒子泰治)

読者の声 ~6月の紙面から~
【海外での評価、うれしい】

・紙面を読み、栃木県の巨峰が海外に輸出されていることを知りました。高い評価を得ているという事実に自分のことのようにうれしく思います。(41歳、女性) ・「粒そろう高糖度の一級品」と陳列されている写真に目を奪われ、食べたくなりました。(61歳、男性)

【子どものころの農業体験は重要】

・日光キッズクラブのように、小さいころから土に触れ農業を学ぶことは重要だと思う。ずっと続けてください。(59歳、男性)

【消費者こそ農業考えるべき】

・コラムの「地域農業を守る農政運動」に感銘しました。それぞれの職業で価値観の相違があると思いますが、“農業”こそ消費者である私たちが、原点に返って考えるべきだと思いました。(68歳、女性)

【久々に親子でケーキづくり】

・母と一緒に“巨峰のプチケーキ”を作りました。久々に一緒にキッチンに立ったのでちょっと照れくさかったけどとても楽しかったです。味は大好評でした。(24歳、女性)