“蒸し風呂”で収穫作業

 春の到来を告げる山菜。そろそろ辺りの野山でも芽吹くころではないでしょうか。中でもワラビは、握りこぶしのようなユニークな形が印象的。日本に古くからある伝統的な食材です。

 県内ではJAなすの管内で多く栽培され、中でも旧湯津上村が主要な産地です。JAなすの・湯津上天狗わらび部会の滝口義昭(たきぐちよしあき)部会長によると、休耕田の有効活用をきっかけとして栽培が始まり、40年以上の歴史があるそうです。2008年産は2トンを出荷、本年産は2・3トンを計画しています。

 部会には現在、8人が所属。ちなみに「天狗わらび」というブランド名は、地元の光丸山法輪寺にある、木製のお面としては日本一大きいとされる天狗面にちなんで、名付けられました。

 ■ 1年目は株養成 ■

 ワラビの最初の年は株を植えて、圃(ほ)場で1年間育てます。滝口部会長は「1メートルぐらいに伸びて秋に枯れるので、地中に株を残したまま葉や茎を除去する。株を養成するため、1年間おく必要があるんです」と説明します。

 ■ 湿度は60~70% ■

 2年目以降になると、12月半ばから翌年5月にかけて収穫します。本来なら春に芽吹くものを、寒い時期に“目覚めさせる”ため、冬場は加温が必要となります。出荷時期に合わせて圃場にビニールをかけ、極寒時は24時間態勢で暖めることもあるそうです。

 収穫作業は朝や夕方に行われますが、ハウス内は黒いビニールで覆われているため、高温多湿な状態。この中で、20センチ程度に育った、鍵状の形のワラビをカマで摘み取ります。「湿度は60~70%ぐらい。腰を屈めながら、“蒸し風呂”の中で刈り取るから、大変。すぐ汗びっしょりになる」と滝口部会長。

 今後、もっと暖かくなると、太陽光で焼けることもあるとか。ハウスの換気が欠かせず、温度管理に気を遣う日々が続きます。

 ■ 20年の永年栽培 ■

 ワラビはいったん植えると、10~20年の永年栽培が可能です。このため土づくりも大切で、滝口部会長は「土地がやせないように、定植前、生育中はもちろん、収穫後も毎年欠かさず堆肥(たいひ)や肥料をまいて管理する」と話します。

 ワラビはあく抜きすれば、おひたし、みそ汁、天ぷら(あく抜きの必要なし)などさまざまな料理に使えます。同部会のワラビは大半が東京方面に業務用として出荷されますが、JAなすの湯津上集荷場でも受け付けています(電話0287・98・2718)。

 【安全安心の取り組み】JAなすの湯津上天狗わらび部会としては、除草剤や殺虫剤など農薬を極力使用しないよう心掛けている。

 [写真説明]若芽が鍵状に曲がった形状が印象的なワラビ。黒みがかった緑色が食卓を彩る=大田原市内

 [写真説明]黒いビニールに遮光されたハウス内で育つワラビ。中は蒸し風呂のようで、入り口のドアを開けると、すぐ靄が立った


◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇ ワラビ編

  • 品種 日本全国、北半球に広く分布する夏緑性のシダ植物。地中に長く伸びる地下茎があり、ところどころから葉を出す。地下茎にはでんぷんが蓄えられており、これを採取してワラビ餅(もち)にしたり、糊(のり)に使用できる。動脈硬化予防・便秘改善・老化予防・糖尿病予防などの作用があるという。

  • おいしい食べ方 あくが強い食材のため、必ずあく抜きをしてから調理するように。あく抜きの方法としては、灰か重曹が入った熱湯でひと煮立ちさせ、そのまま6時間ほど置き、その後水にさらす。重曹は入れすぎるとワラビが溶けてしまうので、ワラビ1キロに重曹小さじ1杯が目安。

  • 選び方 茎が太く、すぐに折れるものが新鮮なもの。折った切り口から粘液がでるようであればさらにお薦め。


 コラムオアシス 深刻化する課題 国内農業の振興に全力

 世界の景気は、米国に端を発した金融危機によって急速に悪化し、先行きも厳しい見通しとなっています。このため、我が国の景気も急激な後退局面に入ったと言われており、輸出産業をはじめ多くの企業において雇用環境が急激に悪化しております。

 我が国は多くの食料を輸入に依存していますが、世界の食糧需給は、発展途上国の人口増加による需要の増加や地球温暖化による収量の減少などにより構造的な逼迫(ひっぱく)基調になりつつあります。さらに、数年来の農畜産物の安全・安心を脅かす事件や事故などを契機に多くの国民の間に国産農畜産物に対する関心が急速に高まっています。

 このように、食料の安全保障や安全・安心を求める国民の期待に応えるためにも、国内農業の振興を図ることが重要です。

 しかし、我が国の食糧自給率は先進諸国中最低の40%であり、極めて脆弱(ぜいじゃく)な生産構造となっています。このため、耕作放棄地の解消など生産諸資源を最大限活用した食料自給率の向上が求められていますが、農業従事者の高齢化、担い手の不足など多くの課題が深刻化しています。

 担い手を確保するためには、国内農畜産物の需要拡大とともに、消費者の理解をいただきつつ農業を振興することなどにより、農業所得を安定化する必要があります。

 JAグル−プは、これらの実現に向けて、日々努力しておりますので、今後とも国内農業、とりわけ地元農畜産物に対するご理解とご支援をお願いいたします。

(JA栃木中央会副会長 高橋一夫)

◇◆◇ 読者の声 ◇◆◇ ~1月号から~

 【感謝して食事】春菊が“食べる風邪薬”で、こんなに手間暇かけているとは知りませんでした。感謝して食べなくてはいけませんね。(35歳、女性)

 【食は大切な問題】食の問題は、消費者にとっても生産者にとっても、とても大切な問題だと思います。安全で安心な食べ物がいただけるようお互いが頑張りたいと思います。(62歳、女性)

 【レパートリー増える】“春菊みそ”を作ってみました。大好評!! 春菊って鍋かおひたししか思いつかなかったけれど、新しいレパートリーとして増えました。今後も是非お願いします。(30歳、女性)