父が究める完熟イチゴを全国に

 甘みの最高潮期に収穫した完熟イチゴを「県外や都内でも、もっと味わってほしい」。就農2年目の小山市福良の田村涼さんは初々しい笑顔で語ります。

 田村さんは都内のイベント会社に勤めていましたが、コロナ禍で仕事量が激減。新たな道を模索する中、父隆佳さんが16年前に脱サラして始めたイチゴ農園「Fraise(フレーズ)」にたどり着きました。

 13棟計65アールの広大なビニールハウスで「とちおとめ」「スカイベリー」「ミルキーベリー」、さらに本県開発の新品種「とちあいか」を栽培。特徴の異なる4品種を、大粒で日持ちが良く、高い糖度や完熟にこだわってJAおやまに出荷しています。

 

 東京都内の有名スイーツ店もほれ込む高品質の秘密は、品質の保持に必要な栄養を葉から吸収させる「葉面散布」。隆佳さんが師と仰ぐ真岡市のイチゴ農家の先輩との出会いで生まれた技術で、田村さん親子は「秘伝のレシピ」と呼んでいます。

 

 収穫期の11月~5月中旬はほぼ毎日散布。繁忙期は朝2時から収穫、選別、出荷、散布と夜遅くまで作業が続く時もありますが、涼さんは「お客さまの喜ぶ声が励みです」と前を向きます。

 新品種が出ればいち早く手を挙げ、実証栽培に臨む父の背中を見続け約2年。承継の決意を固めた涼さんは今日も「秘伝のレシピ」の重みを背中に感じ、イチゴと向き合います。