足利市の国道50号線の南部に広がる田園地帯。その一角に数棟の軒高ビニールハウスが見えてきます。同市上渋垂町の井上章(いのうえあきら)さん(52)がトマトを生産しているハウスです。今年8月からJA足利トマト部の部長を務めています。今年、足利市などに大きな被害をもたらした台風19号の影響でトマト部メンバーも被害があったといいます。井上さんは「被災後、すぐにJAの方が調査に来てくれました。定植し直すメンバーもいます」と話しています。

定植は2回に分ける

 井上さんが農業後継者としてトマト生産を始めたのは21歳の頃でした。「それまでは30アールだったのを就農を機に増やしました。さらに9年前にも増設し、現在は約90アールのビニールハウスで生産しています」といいます。現在は両親、妻、パート従業員の計13人で作業しています。昨年、法人化し「井上農園株式会社」となって社長に就任しました。

 井上さんは定食の時期を2回に分けて効率化を図っています。1回目は9月上旬、2回目は10月上旬と間隔を空けています。収穫も1回目が11月中旬から始まり、2回目が1月に行います。忙しさのピークは2月ごろということです。

 トマト生産で一番気を使うのは病気にかからないようにすることだそうです。「植物を人間に例えて考えます。人間が風邪を引かないようにするにはどうしたらいいか。植物にとって土壌は胃袋のようなものです。胃袋が健全であることがまず重要です。その次に暑さ、寒さに耐えられるようにします。天候が不順でも育てるためにはどうするかを考えます」

経験と情報交換が重要

 そして葉面散布剤という人間でいうサプリメントをどのタイミングで与えるかが重要といいます。「いつ与えるかという明確な時期は確立されていませんので、自分で経験を繰り返して最適のタイミングを探りあてなければなりません。またトマト部のメンバーとの情報交換も重要です」

 トマト作りについて「失敗して何がダメだったのか気付く、ということの繰り返しです。それがやりがいにつながっています。足利のトマト『麗容』には「あしかが美人」というブランド名がついています。市内の直売所でも買えるのでぜひ味わって欲しい。生でも調理してもおいしいですよ」とPRします。

 

雑学辞典

麗容とあしかが美人

「容姿端麗」からその名前がついた。実がしっかりとして割れにくく、糖度と酸味が程良く調和しているのが特徴。うまみ成分である「遊離グルタミン酸」とリコピンが豊富に含まれている。JA足利ではこの麗容を統一品種にしている。「あしかが美人」はこの麗容をはじめ、イチゴ、きゅうり、ダイコン、ニンジン、ナス、アスパラガスの7作物共通の地域ブランド。