「観光立市」を目指す佐野市には、さまざまな特産品があります。中でも農産物は、イチゴ、モモ、ナシなど魅力的な顔ぶれがそろいますが、春を呼ぶ「かき菜」も佐野を代表する作物です。

 かき菜は両毛地区で、古くから栽培されている伝統野菜で、シャキッとした食べ応えに、ほのかな苦みとくせのない甘みがあります。また栄養価も高く、カルシウムはホウレン草の約3倍、ビタミンA、C、葉酸などを含んでいます。

 ▽上州空っ風にも負けず

 JA佐野では27年前から「かき菜部会」を設け、地域を代表する農作物として育てあげてきました。赤城山から吹き下ろす上州空っ風にも負けず80人が、年間約180トンを生産し主に宇都宮、京浜市場に出荷しています。2003年に栃木県農産物マーケティング協会の「とちぎ地域ブランド」に認定され、06年以降は「佐野そだち菜」と名付け産地をアピールしています。

 15年以上かき菜を生産する部会長の新井峯二(あらいみねじ)さん(72)=佐野市高橋町=は、今シーズンは約70アールを作付けました。今年は大寒波と乾燥により、低温障害などでロスが多いそうですが「かき菜は佐野の特産だから、恥ずかしい品物は出せません。2月下旬以降、平年並みに寒さも和らげば甘さも乗っておいしいかき菜がたくさん採れるよ。期待してください」と言います。かき菜は例年、5月のゴールデンウイーク前まで出荷されています。

 佐野市のかき菜は、洋種ナタネの在来種の中から選び抜かれた優良品種が主力とされています。しかし、100%露地栽培のため、ミツバチなどの媒介により、他のアブラナ科植物(からし菜など)と種が交雑してしまう恐れがありました。そのため、3年前から、種取り用のかき菜は、別の場所に栽培し、ネットで防護するなど種が交雑しないように対策を取っています。これも佐野の特産品としてのブランド力アップと、産地を永続させるためにも欠かせない取り組みです。

 ▽新規就農者の受け皿に

 かき菜の名前は、芯芽、脇芽を手でかき取って収穫する点に由来していると言われています。作業は比較的楽なため高齢者でも可能。毎年、定年退職後に、「かき菜を始めてみよう」と、部会に入る方も増えつつあり、新規就農者の受け皿としても期待されています。

 JA佐野では、かき菜をもっと身近なものにと、「地域情報」の一環として「かき菜−佐野そだち菜」のブログを公開しています。09年4月から、JA佐野販売利用課の倉田真理(くらたまり)さん(30)が、県農産物マーケティング協会の協力の下、生産地の旬な情報を発信しています。倉田さんは「芯を摘んでも、次々と脇芽が出るかき菜のように、生産者も頑張っています。ぜひ食べてみてください」とアピールします。

 佐野そだち菜の問い合わせは、JA佐野販売利用課電話0283・23・9992。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • おいしいかき菜の選び方 茎の切り口がみずみずしく、葉は張りがあり、中心部まで緑色の濃いものを選ぶ。2月以降のものは甘みも強くおいしい。葉の部分だけでなく、茎もしっかり湯がけば軟らかくなる。

  • 保存方法 湿らせたキッチンペーパーで、葉をおさえつけないように緩めに包み、冷蔵庫の野菜室に葉を上にして保存。徐々に水分が減っていくので、2、3日中に食べる。

  • 佐野の茎立 万葉集・東歌「上野の 佐野の茎立(くくたち) 折りはやし あれは待たむえ 今年来ずとも」。茎立とはとうの立った菜花のことで「今年たとえあなたが来なくても、私は菜花を取って待っていますよ」と歌われている。


 コラムオアシス 食料問題に思うこと/農地は全国民の財産

 村上鬼城(むらかみきじょう)の俳句に「生きかはり 死にかはりして 打つ田かな」という句がある。

 汗のしみ込んだ一枚の田から連綿と続く命を育む田への思い、その田を耕す人、家族、祖先、あるいは集落が思い起こされる。

 最近、耕作放棄地の問題がよく話題になる。その原因には農業後継者不足、農産物価格の低迷、農業者の高齢化、イノシシ被害等の獣害などが挙げられる。平成22年は耕作放棄地が39・6万ヘクタールとなり、平成2年に比べると約2倍に増加している。

 また、一方では日本の食料自給率が40%を下回り、自給率の向上が急務であることも事実である。

 こういう状況下でのTPP(環太平洋経済連携協定)への参加は、さらに耕作放棄地を増やし、食料自給率の低下につながることは、火を見るより明らかである。農政の基本は安全・安心な食料の安定供給にある。食料の輸入のリスクを回避するためにも、農地を残すことが肝要である。農地さえあれば食料は何とかなる。

 日本は昔から「豊葦原(とよあしはら)の瑞穂(みずほ)の国」と言われてきた。この素晴らしい財産を次世代に残すことが、農家だけではなく、全国民に与えられた責務である。

 もう一度「生きかはり 死にかはりして 打つ田かな」の句を噛みしめてみたいと思う。

(JA足利常務理事・増田高)


読者の声 ~12月の紙面から~

【日本の食を守ってほしい】TPPに関しては、日本の食を守ってほしいと強く思います。おいしさ、安全性を考え栃木産を買い続けます。(34歳・女性)

【文化維持し自給率アップを】TPPの問題を唐突に持ってきて「すぐに結論を出さなければだめだ」という発想には大反対。日本の文化を維持し、自給率を高めることが大切。(63歳・男性)

【新品種イチゴが楽しみ】栃木の「イチゴ収穫量、43年連続日本一」すごいことですね。“栃木i27号”デビューが楽しみです。(34歳・女性)

【おいしかった“いちごだんご”】JAのイチゴに対する熱意、愛情は並々ならぬものと痛感しました。早速レシピ通り“いちごだんご”を作り食べました。おいしかったです。(58歳・女性)

 [写真説明]赤城山を背にかき菜を収穫する新井峯二部会長。「2月下旬以降は、たくさん採れるよ」と笑顔を見せる=佐野市高橋町

 [写真説明]かき菜は4月には人の背丈ほどまで伸び、黄色い花を咲かせる