あく少なく、苦味控えめ

 身も縮む寒さの中、大地に張り付くように葉を広げ青々と育つ「ちぢみほうれん草」は、この季節にしか味わうことのできない限定品です。通常の品種とは異なる上、寒さにさらす「寒締め」により葉や茎の水分を抑え成分を濃縮させ、糖度や栄養分をアップさせています。通常、ホウレンソウの糖度は5度程度ですが、ちぢみほうれん草の糖度は2倍以上になり、1月から2月に出荷されるものは12度近くになるそうです。

 ■甘味は通常の2倍超■

 県内では旧国分寺町、小山市を中心にJAおやま管内全域で生産されており、(社)とちぎ農産物マーケティング協会の「とちぎ地域ブランド」にも認定されています。JAおやま「ほうれんそう部会」(約150人)のうちの55人が「ちぢみほうれんそう部」として約8ヘクタールを作付けし、12月から2月の3カ月間で約10トン(2万ケース)を出荷しています。糖度が売りということで「12月は糖度8度以上、1、2月は10度以上」という出荷条件を付けています。

 作付けを始めた2003年当初の生産者はわずか10人。その一人で初代部長を務める大越秀敏さん(72)=下野市小金井=は、「甘くておいしいホウレンソウと珍しがられ、当時は引っ張りだこでしたよ」と振り返ります。

 ■今季の生育は「良好」■

 栽培の特徴は寒締めのため、ビニルハウスなどは一切使わない完全露地栽培。さらに水はけのよい肥よくな傾斜地でなければ生育しにくいそうです。また、液体肥料を葉面散布する点も、ちぢみほうれん草ならではのもので、味だけでなく葉の色つやにも都合がいいようです。

 今シーズンの生育は、種をまく時期の少し前(9月ごろ)の降雨量が少なかったため「100パーセントの出来」(JAおやま担当者)だそうです。大越さんは「葉がちりぢりで見栄えは決してよくありませんが、ぜひ食べてみてください。甘い上に、あくが少なく、苦味は控えめです」とアピールします。今では、ほぼ通年で流通しているホウレンソウですが、ちぢみほうれん草には寒さに鍛えられた「プラスαの味覚」があります。おひたしだけでなく、いため物にもお薦めです。

 JAおやま産のちぢみほうれん草は、約6割が京浜地区の市場に出荷されますが、管内の直売所で購入することも可能です。問い合わせは、JAおやま北部集出荷所電話0285・40・0200。

 [写真説明]寒締めにより糖度の増したちぢみほうれん草を収穫する大越さん。通常のほうれん草も合わせると約200アールを作付けしている=下野市小金井

 [写真説明]選別作業に追われる大越さん宅の作業場

 【安全安心の取り組み】 JAおやまほうれんそう部会は全会員が、農薬の使用履歴の記帳などを徹底し、安全・安心な農産物を消費者に届けるよう努力している。

◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇

  • ホウレンソウはイラン原産 中国名で菠薐草と書く。ホウレンはもともとネパールの地名だが、原産はイランとされる。国内では「法蓮草」「鳳蓮草」とも書く。

  • 好色一代男 日本に渡来したのは16世紀ごろ。江戸前期の浮世草子作者で俳人・井原西鶴の「好色一代男」には「ほうれんそうのひたし物」の記述がある。(以上「広辞苑」より抜粋)

  • 寒締め ホウレンソウや小松菜などは、冬場の寒さに当たると凍結するのを避けようと、葉がしまって肉厚になりうま味がアップする。その性質を生かした栽培法で、最近ではレタスにも適用されている。ちぢみほうれん草は、県外の産地では、「ちりめんほうれん草」や「寒ざらしほうれん草」などとも呼ばれている。


 コラムオアシス 産地の信頼 もっと地元の農産物利用を

 昨年末、民放テレビの報道番組で沖縄県内のスーパーで売られていた生産者の顔写真入りの有機栽培キュウリが、全く別の産地・生産者のもので、産地・生産者の偽装だったという放送があった。

 顔写真入りならば「消費者は安全で良質であると信用して購入する」ことを逆手に取った商法だったのだろうが、生産者の氏名が入った新鮮な地元の農産物ならば、こうした問題は発生しなかったのではないか。

 現在JAのホームページによると、県内10JAに大小74カ所の農産物直売所があるという。JAしおのや管内にもJAが直接運営する直売所が4カ所あり、毎日女性会(農家のお母さんが構成し、生産・販売そして生活活動などを行っている自主組織)を中心に、JAの指導の下で生産したものを直売所に集め販売している。非常に評判が良い。

 また地元商工会を中心として、市街地に「わいわい広場」を設置し、地元の名産品・特産品そして農産物などの即売をして情報発信基地とした取り組みも昨年から始めた。

 消費者の皆さん、地元で栽培され生産者の顔と栽培履歴の分かる、そして朝採りの新鮮な安全で安心できる農産物をぜひご利用ください。

(JAしおのや 専務理事 手塚照正)

読者の声 ~11月の紙面から~

【将来の明るい農業に期待】

・未来へ向けた方策として掲げられた「新たな協同の創造」という取り組み…、進歩的で期待が膨らみます。他の産業にも魅力のある開かれた農業、強く優しい農業の発展を祈ります。(77歳、男性)

・私はいつもこの紙面を読んでいて、将来農業を営んでみたいと思っています。また、農業に関する知識が載っていてうれしいです。(12歳、女性)

・JAというと「農家以外関係なし」と思っていましたが、「JA栃木県大会スローガン」を見て、考えが変わりました。今後も期待しています。(62歳、女性)

・国内農業を取り巻く環境の厳しくなってもがんばってほしいです。農業に明るい未来が開けると良いです。(53歳、女性)