業者も信頼 高品位の証し

 穀倉地帯が金色にきらめいた麦秋を過ぎ、いよいよ冷たいビールのおいしい季節が到来しました。そのビールの主原料となるのがビール麦(二条大麦)。県内のビール麦は、ビール会社との契約数量では、1985年産以降、全国トップを維持しています。

 ■ 売渡実績 全国の半分 ■

 2006年のビール4社と、国内すべてのビール麦産地との契約数量は約8万6000トン(うち約4割が本県産)です。実際に売り渡された量では、本県産は全国の半数を超えています。ビール醸造には高い品質の麦芽が要求されます。全国契約数量の割合を大幅に超える割合で売り渡されていることは、県産ビール麦の品質の良さの証しでもあります。

 ビール麦の国内自給率は1960年代まで、ほぼ100%でしたが国民生活の激変によりビールの消費量は急増。麦芽輸入の自由化、内外価格差の拡大などにより、今や自給率は1割にも満たない状況です。そうした中でも、県内のビール麦生産に携わる関係者は産地の維持振興に努力しています。

 岩舟町で始まったという県内ビール麦の生産は、その後県内各地で行われるようになり、契約に基づく生産は今年で101年目を迎えました。主な産地は小山市、大田原市、佐野市、栃木市、大平町(2006年産の収穫量順)で、主力品種は「スカイゴールデン」、「ミカモゴールデン」などがあり、昨年度からは新品種の「サチホゴールデン」がJAしおのや、JAしもつけ、JA佐野、JA足利管内で試験的に栽培されています。

 栃木市にある県農業試験場栃木分場のビール麦育種研究室およびビール麦品質研究室は、1954年の開設(当初は薬師寺分場内)以来、新品種の育種とともに品質の向上に努めてきました。農林水産省の「二条大麦育種指定試験地」である上、国内唯一の「ビール麦品質改善指定試験地」になっています。

 ■ 新品種で産地に希望 ■

 同研究室の歴史は麦の大敵・縞萎縮病(黄枯れ病)との闘いでもありました。1985年に黄枯れ病に強い抵抗性を持った世界初の「ミサトゴールデン」を誕生させ、産地に新たな希望を与えました。同育種研究室の長嶺敬室長は「病気に強く多収で、適度な粗たんぱく含量を実現させるのは難しい命題ですが、それも産地および国内ビール麦のためですから」と、先輩研究者の意志を受け継ぐ意欲を語ってくれました。

 下野市小金井にあるアサヒビールモルトの小金井工場では、アサヒビール購入の県産の約6割を超えるビール麦を麦芽に加工し福島、茨城、神奈川にあるアサヒビールの工場へ出荷しています。同工場は歴史も古く、前身の日本麦芽工業時代、1951年に開設されました。一時閉鎖されていましたが、89年に製造を再開し現在に至っています。牛久正美工場長は「産地との長い結びつきが、高品質な麦芽を支えてきたのです」と言います。

 仕事を終え、居酒屋、ビアガーデン、あるいはわが家の食卓で頂く1杯。その白く芳醇な泡の中にも、古い歴史を経て培われた産地の技と努力のエキスが染みこんでいるわけです。

 【品質維持への取り組み】 ビール麦には、契約会社との間で品質の維持に関する条件が設けられています。2004年産から受入品質基準が明確化され、2・5ミリ以下の粒、粗たんぱく含量が9%未満および12%以上などは受け入れてもらえません。安全安心はもちろんのこと、ハイレベルな品質管理が求められています。

 [写真説明]金色の穂が風にそよぐJAしもつけ管内・大平町の穀倉地帯


◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇ 二条大麦編

  • 小麦と大麦の違い 同じイネ科コムギ属だが、作物分類上は全く別。大麦にはグルテンが含まれておらず、小麦は大麦ほど吸水率が良くない。パンには小麦、麦ご飯用は大麦が向いている。また大麦には二条=写真右、六条=写真左=があり穂が2列になるものが二条で、六条は穂が6列、上から見ると6角形になる。

  • ビールの起源 紀元前3500年~3000年頃(メソポタミア文明の時代)が発祥というのが定説。一説には紀元前7000年ごろから作られていたのではないかともいわれている。古代エジプトではビールはパンとともに欠かせない食品で、クレオパトラも好んで飲み美容にも役立てていたらしい。

  • ビールと発泡酒 日本ではビールの定義は酒税法で「麦芽、ホップ、水及び米その他の政令で定める物品を原料として発酵させたもの」で、原料全体に占める麦芽使用率が3分の2以上と定められている。逆にそれ未満が、発泡酒になる。


 コラムオアシス 安心の心

 今日の大きなテーマである食に対し多くの国民が関心を寄せています。社会的背景が影響を与えているのは事実ですが、海外からの輸入圧力や食生活の多様化・飽食などどれも日本にとって大切な課題であり、国を始め国民を巻き込んでの解決策が不可欠です。農家生産者は国民の皆さんに日々安定的に食料が届くように生産に励んでいますが、消費の減退や多様化により低価格帯に陥っており、米や野菜は正当な労働対価を受ける状況にはありません。海外からの輸入圧力に対しても、私たちは鎖国をしろと言っているのではありません。関税という歯止めの中で国内農家の生産評価をしなければ、怒涛のごとく押し寄せる海外農産物が食卓に溢れるのは目に見えています。

 国が国民の安定的な生活に責任を持つのは当然であり、毅然とした考えを基に交渉に臨むべきです。また消費者の皆さんにも選択権(購入)を最大に生かし、国内農産物の支援者になっていただきたい。私たち生産者は、絶えず安心を目一杯詰めた生産を続けてまいります。そして消費者の皆さんから信頼をいただきたい。この安心と信頼の関係が今後確実に定着すれば生産者はその心を励みに努力を続けます。

 国民の皆さんに日本農業を支えていただきたい。そして自ら応援者だと心の中で宣言してほしい。次の時代の人々に安心を引き継ぐためにも…。

(JAうつのみや代表理事組合長 小島俊一)