消費者と厚い信頼関係

 高根沢町にある農産物直売所「たんたんプラザ光陽台」は、毎朝、大勢の人たちでにぎわいます。店内にはトマト、ネギ、葉タマネギ、大根、キャベツなど、朝採りの新鮮な野菜がずらりと並び、お客さんたちを迎えています。

 同直売所はJAしおのや光陽台支所の隣にあり、以前は青空市として運営されていました。昨年4月、常設の建物を建設し、売り場面積や扱う品目も大きく充実しました。以来、年間売り上げも10倍に伸び、順調に推移しています。

 出荷するのは地元の生産者約170人。生産者は市場価格などを参考に自分で値段を設定。直売所に売り上げの一部を提供、運営費用に充てています。中間マージンを省けるのが農家の大きなメリットです。

 ■ 「やっぱり地元産」 ■

 消費者の評判も上々で、同町内に住む木村年子さん(69)は、「新鮮で安いんです。地元の人が作っていますから、安心感もありますよね」。野沢みどりさん(55)は「野菜のラベルに名前が書いてあり、○○さんのはおいしい、とファンもできているみたいです」と地元産の魅力を話します。

 消費者とのふれ合いは生産者のやりがいにもつながります。イチゴ苗などを生産する丸山宮子さん(59)は、「ここで買ったイチゴがおいしいと直接見えるお客さまも増えました」。

 ■ スーパーでも好評 ■

 このような地産地消の取り組みは、スーパーの中に地元産コーナーを設ける“イン・ショップ”にも広がっています。烏山町のスーパー「たいらや」もその一つ。「大変人気があり、昨年、売り場を広げました」と山口武士店長。

 南那須町の宮崎洋子さん(55)は「みずみずしくて安いのが一番。ここをのぞいてから、ほかの買い物をするんです」と便利さを高く評価しています。また、キュウリを納品にきていた馬頭町の大森幸壽さん(54)は「中間コストがないので価格でサービスができます。お客さんと話をする機会もあって、おいしいねと言ってくれるのが何よりの励みですよ」。

 イン・ショップを運営するのは、JAなす南青空市協議会。スーパーの中に並ぶだけあって、他の商品との競争は避けられませんが、最近は、店頭に並ぶことを想定して、作付け品目から工夫する農家も増えているそうです。

 ■ 自給率向上に期待 ■

 県内の地産地消の動きをさらに進めるため、JA栃木中央会や県など関係各団体が集まって、「とちぎ地産地消県民運動実行委員会」が結成されています。2010年を目標に、(1)消費者と生産者の相互理解の促進(2)地域農産物の利用および提供の拡大(3)豊かなとちぎの食づくり−などに取り組むことになっています。

 JA栃木中央会はこうした地産地消の動きが、食の安全性や日本型食生活の復活につながり、農産物の自給率向上結びついていくことを期待しています。

 [写真説明]「たんたんプラザ光陽台」の店頭でお客さんとの会話がはずむトマト農家の加藤伸江さん(右)=高根沢町

 [写真説明]好評に応えて売り場を拡張した「たいらや烏山店」の「イン・ショップ」


 ■憂慮すべき世界の食料事情■ 食と農に共通理解を

JA栃木中央会会長 豊田計

 食育基本法が今国会で成立しました。食を通して自然や文化に親しみ、豊かな心を育てることの大切さが求められています。

 ところで、WHOは世界の人口が現在の65億人から2050年には91億人になると発表しました。しかし、世界の穀物生産は現在でも9000万トンも不足しており、将来91億人の食を満たすことができるか非常に危惧されております。

 地球環境問題に取り組んでいる米国アースポリシー研究所長のレスター・ブラウン氏は、工業化のプロセスの中で農地が失われ労働力が他産業に移動し、その結果、農産物の生産量が落ちる状況をジャパン・シンドロームと名付け、日本の高度成長を手本として工業化を進めている国々に警告を発しています。日本にあっては気づきませんが、今や世界の食料事情は憂慮すべき状況にあります。

 農業には食料生産のみならず、国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保全など多面的な機能があります。この紙面を通して「食」と「農業」について消費者の皆さんと共に考え、食料の自給率向上や環境問題について共通の理解を得られれば幸いに存じます。


 コラムオアシス 「食料自給率とお米」

 わが国の食料自給率は、1998年度以降、6年連続で40%となっており、一向に上がる気配がありません。

 2002年度におけるカロリーベースの総合食料自給率を世界の各国と比較すると、世界173の国・地域の中で、日本は124位であり、先進国の中でも最低水準となっています。

 食料自給率は、国内で必要な食料消費について国産でどの程度確保されているかを示す指標です。食料は、人間の生命の維持に欠くことのできないものであり、健康で充実した生活を送るために重要で、食料自給率の向上が必要です。

 日本型食生活は、たんぱく質(P)、脂質(F)、炭水化物(C)の栄養バランスが適正で健康的な食事です。

 ところが、国民所得の増加により食生活が大きく変化し、お米(C)の消費が減って、畜産物(P)や油脂類(F)の消費が増大したことが、食料自給率を低下させた大きな原因です。また、栄養バランスの崩れは、生活習慣病を増加させており、健康面への影響が社会問題化しています。

 “お米”は国内で自給可能な唯一の作物です。健康な食生活を送るためには、今の食生活を見直して、お米を主食とした日本型食生活に変えることが必要です。このことが、安心した食生活を送るための食料自給率向上につながるのです。

(JA栃木中央会専務理事 落合靖)