スーパーに並ぶとちぎの星。高温耐性のライバル品種との競争が待ち受ける=5日午後、フードオアシスオータニ宇都宮駅東店

 「暑さに強いコメ」は、本県のオリジナル品種「とちぎの星」だけではない。全国では次々とライバル品種が開発されている。

 2月中旬、新潟県長岡市にある同県農業総合研究所の温室で、さまざまな稲が収穫を待っていた。

 「あの『新之助』もここで育てました。新潟の宝、コシヒカリと並び立つ味の力と収量があります」。

 小林和幸(こばやしかずゆき)育種科長が自信を見せる新之助は、交配から2017年の一般栽培まで14年をかけた、新たな家庭用ブランド米だ。

 全国屈指の米どころでも2000年代に入り、暑さによりコシヒカリの品質にばらつきが目立ち始めた。例年80%を超える1等米比率が、猛暑だった10年は20%と極端に低下した。

 新之助は、本来暑さが和らぐ時期に実る、おくて品種で高温にも強い。ブランドを育てるため生産者と連携し、栽培や品質管理で基準に満たないものは市場に出さない仕組みを作った。

 「40年、50年後さらに暑くなっても、いつどこで買ってもおいしくないと生き残れない」と小林さんは先を見据える。品種と農家の力で新潟米の地位を守る。

 「暑い街」も力を注ぐ。埼玉県熊谷市にある同県農業技術研究センターが開発した「彩のきずな」は、14年に品種登録された。

 国内最高気温41・1度を記録した昨夏、同県内のコシヒカリの1等米比率が約20%に落ちる中、80%以上を保った。病害虫にも強く、17年産の食味ランキングでは、同県産で実に26年ぶりとなる「特A」を取った。

 「暑さに強く、味もいい品種が他から次々と出ている。埼玉のコメは、大消費地の流通メリットで売れる面もあったが、今後は厳しくなる」。水稲研究担当の荒川誠(あらかわまこと)部長は、気を引き締める。

 農林水産省によると、高温耐性品種は17年現在、全国に約30種類ある。作付面積は、山陰地方で盛んな「きぬむすめ」が約1万7千ヘクタールで1位、山形県などの「つや姫」が続き、本県の「とちぎの星」は14位だ。

 どのように存在感を出していくのか。県経済流通課は「業務需要は大きなターゲット」とみる。

 農水省の資料によると、コメの需要が年々減る中、コンビニやレストラン、ホテルなど業務用向けの割合は16年から17年にかけての販売で、前年比2%増の39%に伸びている。

 業務用の全国シェアで本県のコシヒカリは7%を占め、3位に食い込む。味は特A、コシヒカリより収量がよいとされるとちぎの星は、本県のコメの力が試される品種でもある。

 茨城大農学部の増冨祐司(ますとみゆうじ)准教授(農業気象学)は「気候が変わり続ける中、高温耐性品種も『生まれては消え』になる。勝ち残るには地域一丸となった普及、販売戦略が欠かせない」と見通す。温暖化に適応しながらの産地間競争は、一段と激しさを増している。