国内観測史上最高の気温「41・1度」を表示する埼玉県熊谷市内の温度計=2018年7月23日

 「一つの災害であるという認識はあります」

 昨年7月23日。記録的な高温が続く中、気象庁の担当者は記者会見で、そう口にした。この日、埼玉県熊谷市で観測史上最高となる41・1度を記録。東京都青梅市などでも40度を超える異常な暑さとなっていた。

 気象庁が記者会見で初めて暑さを災害と捉えたこの発言を受け、「災害級の暑さ」との言葉が「現代用語の基礎知識選 2018ユーキャン新語・流行語大賞」のトップテン入りした。「国民の暑さに対する心構えを変えた」と評された。

 ニュースでも暑さの伝え方が変わった。

 NHKは昨年7月中旬から、「命に関わる危険な暑さ」という新しい表現を使い始めた。熱中症の疑いで、都内のほか西日本豪雨の被災地で救急搬送されるケースが相次ぐなどしたためだ。

 「広い範囲で体温を超える最高気温が予想され、所によっては40度近くの最高気温が予想されている場合」(NHK広報局)などに使うことがあるという。

 「気象庁もようやく災害という認識を持つようになったか」。首都大学東京の藤部文昭(ふじべふみあき)特任教授(気象学)は、以前から猛暑を気象災害として捉えてきた。

 川の氾濫や土砂崩れなど被害が見えやすい大雨などの気象災害に比べ、熱中症による被害は目立ちにくかった。だが「すごい猛暑が時々起こるようになり、20年ほど前から人的被害は増えた」という。「災害との認識は社会の問題意識を高める。(暑さを)我慢して済む問題では、もうない」

 医師も被害の増加を感じている。

 東京23区内で発生した、熱中症を含む全ての「異状死」の死因を調べる都の監察医務院に非常勤で務めている獨協医大(壬生町)の黒須明(くろすあきら)教授(法医学)は「夏場はかつて、今ほど(遺体の検案は多くなくて)忙しくなかった」と明かす。

 環境省の「熱中症環境保健マニュアル2018」によると、国内の熱中症による死亡者数は1993年以前は年平均で約70人だったが、94年以降は約490人に増加。厚生労働省の統計では、昨年は概数で1518人(6~9月)に上る。

 ただ、他にも病気を抱えている場合、死因の診断は難しい。黒須教授は「(暑さによる関連死を含めれば)統計の数字よりずっと多いだろう」とみる。

 「えっ、熱中症なの?」

 昨年7月、父親(63)を亡くした日光市の20代男性は、死因を聞いて驚いた。持病だった脳梗塞の再発だと思っていた。

 朝6時すぎ、起きるよう声を掛けたが、なかなか起きて来ない。様子を見に行くと、意識がなかった。部屋は網戸で「そこまで暑くない」と感じたが、救急隊員は「体温が高く、体が熱い」と言っていた。

 屋外の炎天下で起きるもの-。男性が抱いていた熱中症へのイメージは一変した。そのリスクは、すぐそばにある。「父の死で、怖さを改めて実感した」