CCSの実証試験センター内にそびえる3本の塔。隣接する製油所から送られてきたガスから二酸化炭素を分離・回収する=5月15日、北海道苫小牧市

 石油タンクが立ち並ぶ北海道・苫小牧港の一角に、煙突のような3本の銀色の塔が空へと伸びていた。

 発電所や工場などの排出ガスから、二酸化炭素(CO2)を取り出して地中に送り込み、地下深くの地層内にためていく「CCS(CO2回収貯留)」と呼ばれる技術がある。ここは、その本格的な実証を国内で初めて担う「日本CCS調査」(東京都千代田区)の実証試験センターだ。

 「あの一番高い塔が吸収塔。そこで、隣接する製油所の排出ガスからCO2が取り除かれます」

 小島裕昭(おじまひろあき)センター長が、ガスに含まれるCO2を化学溶液で吸収する、高さ約48メートルの施設に目を向けた。

 残り二つの塔で、溶液中のCO2を取り出して回収。その後、敷地内からステンレス製の配管を通じて圧入し、太平洋沖の海底下1千メートルより深い地層内に送り込んでいる。その貯留量は5月中旬、累計25万トンに達した。

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 地層内にとどまったCO2は時間を経て水に溶け込み、鉱物化していくという。CO2を大気に放出しないため、温暖化対策の一つとされ、国際エネルギー機関は2060年までの累積CO2削減量の14%をCCSが担うと試算する。

 年間約12億トンを排出する日本も、エネルギー基本計画で20年ごろの実用化を目指す方針を示している。

 苫小牧市の実証試験センターは電力、石油企業など35社が出資する日本CCS調査が国から委託を受け、12年度に施設の設計や建設に着手した。建設費は約300億円。16年度からは圧入を始め、「本年度までに計30万トンを貯留する予定」と、同社は説明する。

 貯留には、CO2を送り込める隙間が多い砂岩などの地層と、その上にふたの役目をする隙間が少ない泥岩などの地層が存在することが必要だ。同社は、国内の適地調査も請け負っており、「21年ごろまでに1億トン以上の貯留に適した地点を3カ所程度選定することを目指す」という。

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 ただ、実用化に向けては課題も多い。

 海外では10カ所以上で稼働しているが、油田にCO2を圧入して石油増産を図る方式が主流。貯留のみが目的では利益を生まず、コスト面で不利になる。

 安全性の確立や国民の理解も欠かせない。

 苫小牧市のセンターでは、海底地震計での観測や海洋環境調査などを実施。昨年9月の北海道地震でも影響はなかったという。小島センター長は「実績が大切」と語る。圧入終了後もモニタリングを継続し、漏れがないか確認する方針だ。

 CCSについて詳しい東京理科大の名久井恒司(なくいこうじ)特任教授は、導入を進める場合、CO2の排出量に応じて課税する「炭素税」などの導入の前提となる仕組みや、事業を許認可する法的枠組みが必須だと指摘する。コスト面でも「現状では採算が成り立たない」として、補助や減税などの支援制度も必要だとしている。