値ごろ感で人気アップ

 交雑、F1…。消費者にはあまりなじみのない言葉かもしれませんが、実は全国に誇れる栃木県の牛肉の1つです。交雑牛とは文字通り、異なる種類の牛を掛け合わせたもの。とりわけ栃木県産のブランド交雑牛は非常にレベルが高く、まろやかな風味のある牛肉として親しまれています。しかも、安全安心で値ごろ感も十分。そんなブランド交雑牛は、どのように生まれ育ったのでしょうか。

 JA全農とちぎ畜産部によると、黒毛和牛の雄とホルスタイン種の雌を交配して生産され、県内では「霧降高原牛」と「日光高原牛」の2つの銘柄があります。いずれも同一の生産者から、同じ肥育飼養によって生産されたものですが、取り扱い店によって銘柄名が変わります。

 ■ 飼料にこだわり ■

 霧降高原牛は2001年に、日光高原牛は04年にそれぞれ商標登録されました。現在、指定を受けた生産者55人によって肥育され、年間約4000頭が東京食肉市場を中心に出荷されています。

 特徴は、肥育の段階でカギを握る飼料に、とことんこだわっている点です。遺伝子組み換えトウモロコシを一切与えず、安全安心に十分留意。さらに、食味アップを狙い米を使っています。

 高品質や安全性を追求して生産された枝肉の成績は、全国平均を常に上回り、市場の評価は高まるばかりです。今年5月に東京都内で開いた第1回交雑種枝肉共励会では、県内各JAから41頭を出品。このうち、最高の格付けとなる5等級の割合は19・5%、4等級は34・1%に上りました。

 ■ 和牛超える成績 ■

 全国の和牛成績と比較すれば、県産ブランド交雑牛の品質の高さをあらためて証明できます。06年度平均で和牛の5等級率は17・2%、4等級率は39%。同畜産部も「和牛に引けを取らない成績です」と胸を張ります。

 品質の向上に伴い、消費者の人気も高まってきています。日光高原牛を販売しているビックミート山久矢板店の綱川晃一店長は「高い技術で育てられ、和牛並みの味を作り上げた。しっとりした味わいで、油っぽくもない。お値ごろなので商品価値は高い」と太鼓判を押します。人気上昇に伴い、仕入れ量は年々増えているそうです。

 同畜産部は本年度中にも霧降高原牛と日光高原牛の指定店化を進めていく考えです。指定店化されることで、2つのブランド交雑牛の周知が図られ、消費者も今まで以上に購入しやすくなるでしょう。担当者は「地元で食べられる環境を整えていきたい」と意気込みを語ってくれました。

 [写真説明]まろやかな風味の栃木県産のブランド交雑牛。全国でも高い品質を誇る=宇都宮市内の焼肉店

 【安全安心への取り組み】 JA全農とちぎは全頭に牛肉パスポート」(生産履歴書)を発行。牛の血統や生産地、生産者、飼料内容などが記入されている。取り扱い各店で掲示され、生産者の顔が見える制度として消費者の信頼を獲得している。


◇◆◇ 雑学辞典 ◇◆◇ 県産牛肉編

  • 県内のブランド牛 交雑牛2銘柄のほか、「とちぎ和牛」「とちぎ高原和牛」の計4種類がある。交雑牛の肥育頭数は3万7000頭で全国3位、和牛は2万2000頭で同9位といずれも上位で、本県は肉牛の主要産地となっている。

  • 流通ルート 生産農家から出荷された牛はと畜場で解体され、市場へ。競り落とされた枝肉はしばらく熟成された後、部分肉に加工され、卸業者などを経て小売店の店頭に並ぶ。本県の交雑牛は、日本最大の東京食肉市場で上場頭数が最も多い。


 コラムオアシス 食料安全保障

 われわれの生命を保つため、日本の将来の食料問題は大きな課題です。

 今、世界の食料生産量は年次減少し、逆に人口は増えています。10年後には世界中で食料不足が起きると明言している政治家が多くいます。そのような中で行われているWTO農業交渉は各国の思惑により難航しています。EPA(経済連携協定)、FTA(自由貿易協定)をめぐる論議も、わが国の食料・農業・農村・国民にとって極めて重要な問題です。もし、日本の主張が通らなければ、安い農産物が輸入され日本の農業は壊滅状態になり、自給率も12%(農水省試算)に落ち込み、結果的に食料を外国に依存しなければなりません。そうなれば世界の食料不足による価格高になっても買うしかありません。経済優先の政策も理解できますが、それより生命優先の政策により国民を守ることが大切です。

 また、農業は生命産業であり食料生産をはじめ水・環境・風景保全に大きな役割を果たしていることも認識していただきたいと思います。

 今、国民は食に対する危機感が薄いのではないでしょうか?今後、食農教育を通じて子どもたちに食料の大切さを実感してもらうことが大切です。そして消費者のニーズに応え、またわれわれ生産者が生き残るためにも安全で安心な農産物を安定的に供給できるよう、さらなる努力をしていきたいと思います。

(JAかみつが代表理事組合長 渋江正雄)