輸入量確保 困難の恐れ
バイオ燃料で穀物高騰

 8月に農林水産省から発表された2006年の食料自給率(速報値)は、供給熱量(カロリーベース)自給率が39%。裏を返せば61%は輸入に頼っているということ。では、世界の農産物生産と貿易の実態はどうなのか、国や国際連合食糧農業機関(FAO)などの資料から探ってみた。

 ■ 動物性食品や油脂の消費拡大 ■

 現在、穀物相場の高騰からパンやめん類、マヨネーズなど食品の値上げが起きている。その原因として動物性食品や油脂の消費拡大、バイオ燃料原料としての需要拡大、さらに原油高による輸送コストなどが挙げられているが、動物性食品や油脂の消費拡大を飼養頭羽数の推移から見てみた。左上のグラフのように家畜の飼養頭羽数が増えているが、これら家畜は穀類を中心とした飼養方法が採られている。そのため、動物性食品や油脂の消費拡大は頭羽数の増加を促し、その結果飼料として穀類の消費も増えた。


 ■ 小麦の消費量90年代から急増 ■

 小麦の消費量は、世界全体で1990年の3億5800万トンから2005年の4億2000万トンへ、6500万トン増えた。一方、生産量は1990年の5億6900万トンから2005年の6億1900万トンへ、5000万トン増えた。気掛かりは生産量第1位の中国と第2位のインドがともに生産が低迷し輸出国としての地位が揺らぎ始め、輸入国に陥る恐れが出てきたこと。また、第3位の米国がトウモロコシや大豆に作付け転換し、面積が減少していることも不安材料。

 輸出国は少数だが輸入に頼る国々は150カ国を超えており、2004年に突如中国が900万トン近く輸入したような状況が起きると、輸入の安定度が揺らぎ、価格の高騰などが起きることもあり得る。


 ■ トウモロコシめぐって争奪戦 ■

 米国のエネルギー政策法が2012年までに年間エタノール使用量を75億ガロンに増やすことを定め、さらにブッシュ大統領の年頭教書演説が火に油を注ぎ、トウモロコシ消費が急拡大した。このため、米国内外の畜産農家は飼料コスト上昇で代替飼料を探さざるを得ない状態にあり、またトウモロコシが基礎食料であるメキシコなどの国々は食料価格上昇が起きている。

 わが国の畜産も米国からのトウモロコシに依存しており、飼料価格の高騰が経営を圧迫している。まさに、食料−飼料−燃料をめぐって、トウモロコシ争奪戦が繰り広げられている。


 ■ 肉食化が進み大豆需要も増加 ■

 大豆の消費は、世界的には植物油の原料として利用され、搾りかすは家畜のタンパク源飼料として用いられる。油を使う肉食中心の生活や家畜の増加とともに消費量が増加している。中国の消費量は1990年の44キロカロリーから2005年は183キロカロリーに増加した。インドも増加が進んでおり、人口大国の両国の消費量の推移が注目される。

 一方、生産面ではバイオエタノール需要のため、大豆からトウモロコシへの作付け転換があり、増産には黄色信号がついている状態。また、遺伝子組み換え(GM)種子の作付けも増えているため、非GM大豆にこだわる日本の輸入量確保の困難さが増す恐れがある。


 ■ 緊迫の度合い強めるコメ市場 ■

 日本、中国、韓国などの東アジア諸国では1人当たりのコメ消費量が減退し、1990年から2005年の間に1900万トン減少したが、インドではこの間に3450万トンも増加した。こうした増加傾向は、他のアジア諸国や中南米・アフリカの国々にも見られる。

 一方、世界のコメ収穫面積は1999年をピークに減少に転じた。コメは左のグラフにある通り、生産量に比べ貿易量が極端に低く自給自足傾向が強かった。しかし、人口増加による消費の増加や干ばつ、洪水といった天候異変などで輸 入せざるを得ない国が現れており、世界のコメ市場は緊張を内在する状況にある。


 ■ 中国産の野菜圧倒的なシェア ■

 野菜は1960年代前半にほぼすべてが自由化され、1970年代に入って急速に伸び、1965年度4万トン程度であったものが2005年度ではおおよそ337万トンに達した。日本の輸入野菜の圧倒的シェアを占めるのが中国と米国で、特に中国産野菜は生鮮野菜だけでも1992年から1999年までの7年間で11倍になった。2006年の中国からの生鮮野菜輸入量は54万1770トンに上る。

 主なものを挙げれば、タマネギは29万トンの輸入量のうち20万トン(70%)、ジャガイモは7000トンのうち4700トン(66%)、ブロッコリーは7万5000トンのうち2万6000トン(35%)、ワラビは4800トンのうち3300トン(69%)が中国産である。


 資料提供 (社)家の光協会(「地上」11月号付録より)


 コラムオアシス 日本の農業政策・食料戦略に思う

 日本の食料自給率は世界の先進国の中で最も低い39%と低迷しています。多くの食料を安価な外国の農産物に依存し、WTO、EPA、FTA交渉においては、さらに輸入農産物の関税引き下げが求められています。

FAO(国際連合食糧農業機関)の発表によると、今後10年間は多くの農産物価格が歴史的な均衡水準を上回り続ける方向で構造的変化が進んでいくとありますが、もっと重要なのは、化石燃料の代用品としてのエタノールなどの生産のために、穀物や植物油の需要が増え続けていることです。

 一方、気象変動や干ばつ、温暖化の影響は、穀物の生産に大きな影響が出ています。このため輸入穀物価格上昇を受けて、家畜飼料の価格が上昇し続けており、また輸入農産物を原料とした食品価格の値上げが発表されました。

 農産物を輸入に頼ることのリスクは、すでに始まっています。農産物輸出大国が国内需要を賄うため、また国内価格の上昇を抑える手段として、輸出規制の動きが出てきています。輸入農産物が、将来にわたり安価で豊富に利用できる保障はありません。消費者価格の上昇につながることを十分認識する必要があります。

 国内農業は、農産物価格の低迷や、担い手不足が進行し、地域経済をはじめ、農業の持つ環境保全機能にも影響が出てきています。今国会において、農政問題が議論されていますが、将来を見据えた、食料戦略、農政改革、担い手対策の充実を切望します。

(JA佐野代表理事組合長高橋一夫)