資源生かし農作物栽培

 食の安全・安心が問われる今、牛ふん尿や生ごみなどを堆肥(たいひ)として利用し、農作物を栽培する人や環境に優しい循環型農業が注目されています。

 ■ 牛ふん尿を堆肥に ■

 大田原市蛭田で牧場を経営する坂主正さん(58)は、乳牛約50頭を飼育しています。そこで出るふん尿は、もみ殻などを混ぜて堆肥として利用。その堆肥で牛のエサとなる牧草を栽培し、ふん尿を再び堆肥作りに生かす循環型の取り組みを実践しています。

 堆肥はアスパラガスやトマト栽培などにも使用しています。坂主さんは「ふん尿はそのままにしておけば、公害です。それを農作物の栽培に利用することは、環境への配慮につながります」と説明。栽培された野菜は「品質も安全でおいしい」と好評で、県内外のホテルにも納入されています。

 坂主さんは栽培技術を地域に広め現在、周辺農家約70戸でもアスパラガスの生産を行っています。坂主さんは「個人だけではなく、地域として資源を循環させることが重要」と訴えます。

 2004年10月には那須町に直売所をオープン。牧場で生産した乳製品や地場産の野菜などを販売しています。坂主さんは「消費者に安全でおいしい商品を提供し、今後も環境に負荷をかけない循環型農業に励みたい」と話しています。

 ■ 住民が落ち葉収集 ■

 自然の持つ循環システムと調和した農業の取り組みは茂木町でも行われています。同町有機物リサイクルセンター「美土里館」では、町内の酪農家の牛ふん尿、町内の生ごみ、山林から集めた落ち葉、間伐材を利用したおが粉、もみ殻を原料に良質の堆肥を製造、販売しています。堆肥は町内外の農家などが農作物の栽培に利用しています。

 同町農林課の田村幸夫課長は「これまで処理に困っていたものがうまく活用されています。町民のごみの分別に対する意識も高いので、十分に原料が確保されています」と話します。

 堆肥の特徴は原料に落ち葉を混ぜていること。「落ち葉についているバクテリアが重要な役割を果たし、安全で栄養価の高い農作物が育ちます」と田村課長。落ち葉収集は地元の高齢者に委託、それを買い取ることで高齢者の副収入や健康増進にもつながっています。

 同町の取り組みは本年度、全国の農山漁村活性化に関する取り組みの中から優れた事業を紹介、奨励する政府の「立ち上がる農山漁村」30事例の1つに選出されました。田村課長は「町内の農業の活性化とともに、食の安全や環境への配慮を今後も続けていきたい」と意欲を見せています。

 [写真説明]牛ふん尿などを原料にした堆肥で、アスパラガスの栽培に取り組む坂主正さん(写真左)と妻の美千枝さん=昨年8月、大田原市蛭田


 コラムオアシス ローカルスタンダード?

 庭の水仙がつぼみを抱えて伸びている。自然は手抜きすることをしない。

 過日の農業新聞のコラム欄に、東京大学大学院の松井孝典教授が、全国地産地消推進フォーラムで、「地球・惑星物理学」という食・農の世界からかけ離れた視点から「地産地消の地球学的意味」を説いたとの記事があった。

 松井教授は、「現代」の生活は宇宙的には「あり得ない生き方」だという。物流循環の速度を地球システムの速度の約10万倍にしてしまったことで、「どこかで破綻する」速度だという。このスピード違反を止める方策の一つが「地産地消」だと説かれたとのこと。理解の程に自信はないが、納得がいく。

 地球の食糧生産能力にもいずれ限界は来るし、隣人の厚意も当てにならない。人も動植物も土地に従属して生きてきたから、植物や土壌はそこの生きものに合っている。食味比べで産地が当たらないのは、そのためだと思っている。

 健康な心身は代謝も正しい。心の病の問題も食生活と無縁とは思えない。朝夕の食卓に、せめて味噌汁の香りはほしいと思う。瑞穂の国だから。

(栃木県厚生農業協同組合連合会 理事長 鈴木宗男)