基本を大事に、新しい技術や知見も取り入れる

 農林水産省の農林水産統計によると、2 0 2 0(令和2)年度の栃木県のナシの収穫量は1万1300トンで全国第5位。県内では宇都宮市や大田原市、芳賀町などのナシの産地がありますが、隣接する高根沢町も熱心にナシの生産に取り組んでいます。「幸水」や「豊水」に加え、栃木県のオリジナル品種「にっこり(※1)」や「あきづき」が多く栽培されています。

 JAしおのや梨部会(会員数16)の黒内康弘さんは、2015(平成27)年の「第1回栃木県なしグランプリ」で金賞を受賞するなど、両親と妻の4人でおいしいナシづくりに取り組んでいます。

 現在、黒内さんの農園で は140アールの規模で「幸水 」20アール、「 豊 水 」20アール、「 あきづき」30 アール、「きらり」10アール、「新高」10アール、「にっこり」40アールを栽培。うち「幸水」10アールをハウス栽培しています。

 

 黒内さんがナシ農家になったのは今から12年前。以来、部会の若手が集まる研究部の一員として、栽培技術を磨き、基本を大事にしながらも県が新たに開発し普及を進める「根圏制御栽培法(※2)」や肥料の葉面散布などを取り入れるなどしてきました。

 そんな黒内さんが、特に気をつかうのが受粉の作業。開花のタイミングに合わせて効率的に受粉をさせるため家族総出で取り組みます。JAしおのやでは、花粉採取用の樹を共同栽培し、ここで収集した花粉で自然受粉させますが、黒内さんの農園では、この時期だけミツバチを放ち、受粉も促すことで結実性を高めています。

子どもたちの笑顔を支えるサステナブルなナシ栽培

 「子どもたちが『おいしい』と喜んで べてくれるのが何よりの励みです」と黒内さんは話します。これは減農薬の取り組みにも通じます。JAしおのやでは、早くから農業における食品安全、環境保全、労働安全などの持続可能性を確保するための生産工程管理(GAP:Good Agricultural Practices)に取り組んできました。黒内さんのナシ栽培も害虫の天敵を活用するなど、農薬の使用量を削減させ、安心・安全を心がけています。

 おいしいナシは、色むらがなく、大きくずっしり重みがあるものが水分を多く含んでいる証です。食べる数時間前に冷蔵庫で冷やして食べるのがお薦めです。

 「去年は春先の霜で収穫量が減ってしまいましたが、今年は順調に育っています」と黒内さんは話します。8月半ばから10月頃にかけて複数の品種が宇都宮や東京の市場へ出荷されます。高根沢町とさくら市の農産物直売所でも購入することができます。みずみずしくシャリシャリした食感が魅力のナシ、見かけた際はぜひ手に取ってみてください。

 お問い合わせは、JAしおのや企画広報課(☎ 028・681・7551)。

雑学辞典

【にっこり】※1  1984(昭和59)年に栃木県農業試験場で「新高」と「豊水」をかけ合わせて作られたナシの品種。栃木県の「日光」とナシの中国語読み「リー」から「にっこり」と名付けられました。病気や害虫にも強く、酸味が少なくジューシーで甘いのが特徴です。

【根圏制御栽培法】※2  栃木県農業試験場が開発した栽培方法で、果樹の老木化・土壌病害などによる収量や品質の低下を防ぐため、地面に遮根シートを敷き、その上に培土を盛って樹を育成します。

【ナシは自家不和合性】  ナシやリンゴなどの植物では、同じ品種のみの栽培や1本の樹だけでは実をつけない「自家不和合性」という性質があるため、異なる品種のナシを栽培したり自然受粉を行う必要があります。