どんな時代でも、子どもたちの生きる力を育むのは周囲からの愛情だ

2月上旬、宇都宮市(本文と写真は関係ありません)

 体育館のスクリーンに映し出された包丁とスマートフォンのイラスト。「どっちの方が危ないと思う?」という問い掛けに、挙手をした小学5年の女子児童が「スマホ。ツイッターで知り合った人に誘拐されるかもしれないから」と答えた。

 「そう!」。講師を務める県青少年育成県民会議の平山裕美(ひらやまひろみ)青少年育成課長が大きくうなずく。「包丁は使う目的が決まっているし、気を付けて使うよね。だけどスマホはいつの間にか人の心を操って、『もっと遊びたい』『バレなきゃ大丈夫』とか、魔法をかけることもあるよ」

 大阪市の小6女児誘拐事件から間もない昨年12月初旬。宇都宮市桜小で5、6年生の児童約100人と20人余りの保護者、地域住民らが参加し講演会が開かれた。同会議は小中学生らに情報を読み解く力を高めてもらおうと、親子学びあい事業「ネット時代の歩き方講習会」を開催している。

 「これからの子どもたちはネット社会で生きていく。なぜスマホを持つのか、どう使えば危なくないのか、親子で話し合い、一緒に考えることが不可欠。ネットの話は子育ての話だ」

 平山課長は力を込める。

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 一日入学を利用し、外部講師による集中指導を行っている県央の高校には苦い経験がある。

 会員制交流サイト(SNS)が浸透し始めた5年ほど前、1人の女子生徒が入学早々自主退学した。ツイッターで知り合った“他校の男子生徒”に送った裸の写真が出回り、居づらくなったのだ。

 「高校に入ってから初めてスマホを持った子で、使い方に慣れていなかった。2人だけのやりとりで他には広がらないと考えていたようだ」と50代の男性教諭は悔やむ。

 教諭自身、人気のゲームやアプリを自らのスマホでチェックするが、オンラインゲームのアカウント売買、なりすましによる動画公開や課金など、生徒が被害者にも加害者にもなる事案は年々複雑化するばかり。

 「もはやスマホから子どもを遠ざけるだけでは解決しない。危険回避や問題に対処できる力を付けさせなければ」と痛感している。

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 自由な情報伝達が可能なネット社会では、守ってくれるはずの家族や周囲の大人を飛び越え、社会性が未熟な子どもたちが広い社会と直接つながってしまう。

 「大人はそれを前提として対策に取り組むべきだ」

 県若年者支援機構の中野謙作(なかのけんさく)代表理事は訴える。

 横断歩道を歩いていても事故に遭うこともあるように、普通にゲームをしていて犯罪に巻き込まれる危険性があること。既にそのツールが子どもたちの手に渡ってしまっていること。

 「『うちの子は大丈夫』はない」と言い切る。

 いつでも、誰とでも、簡単につながれる時代-。

 「実生活でいろんな経験をして、失敗や感動をちゃんと積み重ねてほしい。それが、目的意識と主体性を持った豊かなネット利用に結び付きます」と平山課長は同小で開かれた講演会を締めくくった。

 画面の向こうで顔の知らないトモダチが待つ。親世代が想像もつかないネット社会を生きていく子どもたちを支えるのは、何か。

 「スマホに頼ると自分で考えることから逃げてしまうと分かった。『スマホの魔法』にかからないように家でルールを決めました」

 受講した児童が感想を寄せた。

(終わり)