現実世界に自分の居場所を見つけられない子どもたちは、優しい言葉やつながりを求めてネットをさまよう。

1月、東京都渋谷区(本文と写真は関係ありません)

 BGMはノリのいい音楽。カメラに向かい、変顔で歌ったり、アイドルをまねたダンスを踊ったり。画面には、まだ幼さの残る笑顔が写る。

 「まじ、かわいい」「返信来たら、うれしすぎる☆」

 コメント欄に書き込まれるユーザーからの感想。コメント数や「いいね」の数は、自分がどれだけ受け入れられたのかという証しだ。

 中高生女子を中心に、爆発的に流行している動画共有アプリ。スマートフォン(スマホ)のカメラで撮影し、簡単に加工や編集ができることから、投稿者の低年齢化が進んでいる。

 ほとんどがたわいない、15秒のショートムービー。だがそこには日常的にナンパまがいのコメントが並び、DM(ダイレクトメッセージ)機能で、直接やりとりをすることもできる。

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 ランドセルから卒業したばかりの少女が強制性交の被害者となったのも、このアプリがきっかけだった。

 相手は県外に住む男。

 「会おうよ」

 DMでの何度かのやりとり後、車を持たない男と県内の駅で待ち合わせた。歩いてホテルに向かう道すがら、わずか12歳の彼女は何を考えていたのだろう。

 脅かされて逃げられなかったのか、あるいは承認欲求を満たしてくれた相手に好意にも似た感情を抱いたのか。それとも、そうせずにいられなかったほど寂しかったのだろうか。

 昨年11月、小山市の男(35)に誘拐された大阪市の小学6年の女児(12)は、事件前「学校も家も嫌」と周囲に漏らしていた。容疑者は会員制交流サイト(SNS)のツイッターで、女児の相談に乗っていたとされる。

 認定NPO法人「チャイルドラインとちぎ」の松江比佐子(まつえひさこ)理事長は「家庭や学校に居場所がない子どもたちは、優しい言葉やつながりを求めてネットで無防備につぶやいてしまう」と危うさを指摘する。

 県央に住む小学6年生女児も、もう少しで被害に遭うところだったのかもしれない。

 女児がトモダチと知り合ったのは、低年齢から遊べるスマホゲーム。プレーヤー同士が、アイテムの交換などでやりとりできる。

 トモダチは優しかった。「小学生だからお金がない」と言うと、代わりに課金してくれた。「いい人だな」と思った女児は、LINEを教えた。「親が勉強勉強ってムカつくし」「お風呂が長いって、文句ウザい」。家の中で抱えていた日々の小さな不満を、ここで吐き出すようになった。

 「おいしい物でも食べながら、じっくり聞いてあげるから」「今度の休み、会いにくれば」

 トモダチの誘いに乗って、JR日光線の駅に向かった女児は、突然、怖くなった。「優しいトモダチ」。だけど顔は知らない。本当の名前も、どんな人なのかも。結局、電車には乗らず、親に打ち明けた。

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 小学5、6年生には思春期が始まり、子どもたちは親から距離を取ろうとする。心はまだまだ幼いが、体は発達している。その乖離(かいり)こそが危険なのだと、県カウンセリング協会の丸山隆(まるやまたかし)理事長は指摘する。

 自分の顔や姿を不特定多数に向けて発信する危険性に、誰もが楽しめるオンラインゲームに潜むわなに、子どもたちは、まだ気付いていない。

(子どもとSNS取材班)