「どこかに共感してくれた人がいると思うと、少しだけ楽になれる。心の隙間が埋まるような感じがしたの」

ツイッターでは、特定の言葉を検索すると、画面上に支援団体の情報が表示される(本文と写真は関係ありません)

 「そこでしか言えない、そこにしか言えないこともある。大人には分からないと思うけれど」

 宇都宮市内の住宅。居間のソファにちょこんと座り、女性(23)はぽつぽつと語り始めた。

 黒っぽい洋服を全身にまとい、好きなアイドルの話題をうれしそうに話す「普通」の女の子。しかし、つい数年前まで「スマホ依存」という出口の見えない暗闇でもがいていた。

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 口げんかばかりだった両親が離婚したのは、中学生の時。「父親のいない私は、みんなと違う」。仲の良い友人との間にも見えない壁を感じ、会話にうまく入れなくなった。

 女手一つで働く母は仕事と家事に忙殺され、取り付く島などどこにもない。「お母さん、あのね…」。こぼれ落ちそうになる一言を何度、飲み込んだろう。

 高校生になってスマートフォンを手にした女性が「寂しさ」を表現する手段としてたどり着いた場所。それが、SNS(会員制交流サイト)のツイッターに開設した「病み垢(あか)」だった。

 リアルでもつながりのある人と交流するのが「リア垢」、インターネット上だけの交流が「ネト垢」。目的に応じて使い分けるアカウントの俗称だ。「病み垢」は、ネガティブな感情や不安をつぶやくための専用アカウント。

 静まり返った深夜、布団に潜り、画面に目を凝らす。「死にたいよ」「消えたい」。女性がつぶやくと、一つ、また一つとハートマークの「いいね」が点灯する。「どこかに共感してくれた人がいると思うと、少しだけ楽になれる。心の隙間が埋まるような感じがしたの」

 病み垢は「ぼくなんか消えても気付かれない」「生きててごめん」といった投稿であふれ、鮮血に染まる腕とカッターの画像も目に付く。

 「気持ちが悪い。こんなの載せるもんじゃない」。そう思っていた女性も、気付けばまねをし、やめられなくなった。「こんなことでしか自分を表現できない、みたいな。どうしようもないアピールだった」

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 高校を卒業し、働き始めた頃には、過食行為で罪悪感にさいなまれるようになった。「ダイエットしたい」とつぶやくと、SNSのトモダチはすぐに教えてくれた。「風邪薬がいいよ」。両手で数え切れないほどの錠剤を無心になって飲み続けた。やがて手放せなくなり、幻聴や幻覚が現れ、生活は破綻した。「市販薬依存」だった。

 ツイッター社は「リスカ(リストカット)」「死にたい」といった言葉を検索すると、画面上部に支援団体のホームページなどが表示される対応を取っている。規約には自殺や自傷行為の助長を禁止とする文言もあるが、目を背けたくなるような投稿は後を絶たない。

 依存から抜け出しつつある今、女性はこう振り返る。「SNSには、私と同じように『自分のことを認めてほしい』『理解してほしい』っていう人が多かった気がする」。生きづらさを吐き出すとともに、何とかして生きようとする場だったのかもしれない。

 「本当は…。お母さんに共感してもらいたかった。『そっか』の一言。それだけでも心は楽になれたんだ」

 小さな画面の向こうに探し求めていたものを教えてくれた。

(子どもとSNS取材班)