「わたしのこと、心配してくれてうれしかった」。女子生徒から手渡された手紙には、幼さの残る文字でそう書かれていた。

※本文と写真は関係ありません

 小さく折り畳まれた手紙には、「わたしのこと、心配してくれてうれしかった」とあった。春-。まだ幼さの残る文字に彼女の今後を思いながら、離任式に臨んだ。養護教諭として勤務していた県内の中学校での、数年前の出来事だ。

 「先生、実はね…」

 2年の女子生徒から、会員制交流サイト(SNS)で知り合った20代の男と“付き合っている”と明かされた。13歳。頭痛や腹痛を訴え、頻繁に保健室を訪れていた生徒だった。

 SNSで連絡を取り合い、電車に乗って会いに行ったこと。性的関係を結び、その際に写真を撮られたこと。「次は制服を着て来て」など要求がエスカレートしていること。「別れるなら写真をばらまく」と言われたこともあったらしい。

 「被害者という認識が本人にあったかどうか…」

 元養護教諭は、女子生徒の表情を思い出す。

 彼氏から愛されているんだ。他の子が知らない大人の世界を知ってるよ-。むしろ幸せそうで、自慢げな口ぶりではなかったか。

 女子生徒の家は父子家庭だった。母親が出て行った家で、寂しさを埋めてくれたのがSNSだったのだ。

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 とがめたりすれば正直に話してくれなくなる。

 スクールカウンセラーも含め、校内で何度も作戦会議が開かれた。父親に話し、警察に届ける-。方針はすぐに決まった。だが、対応を誤れば父親は激怒し、女子生徒の居場所がなくなる。父親と信頼関係を築いていた教師も加わり、何度か父親を学校に呼んだ。

 「子どもを責めないでほしい」「警察に相談することが守ることになる」

 繰り返し父親を説得する一方で、元養護教諭は女子生徒の行動をそれとなく確認。生理日まで把握した。「『彼女を守りたい』。誰もがその一心でした」

 ようやく父親に付き添い、警察へ被害届を提出。男は県青少年健全育成条例違反(淫行)容疑で逮捕された。師走に入って間もないころ。女子生徒が打ち明けてから数カ月後だった。

 言わなきゃよかった-。

 男の逮捕を知った女子生徒は、その時はポツリとそうつぶやいたという。

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 とちぎ性暴力被害者サポートセンター「とちエール」の荻津守(おぎつまもる)担当責任者は、“同意”の考え方やデートDVへの理解も含め、低学年からの性教育を課題に挙げる。

 「付き合っているから文句を言えない」「自分も悪かった」「合意の上での性行為」。そうすり込まれてしまう被害者は多い。

 SNSで送った写真を利用され、「ばらまかれるのと会うのはどっちがいいか」と脅かされる。負の選択肢しかない中で会うことを選び性被害に遭っても、「選んだのは自分」「同意したから」と思い込まされる。孤立している子どもほど、幼く、被害を受けたという認識が低い。

 とちエールのまとめでは、10代と10代未満が被害時年代の半数を占める。1人で複数の被害に遭っているケースも少なくない。自尊心や自己肯定感が低く、諦めてしまうからだ。

 「SNSではなく、思いを吐き出せる『本気の大人』に会うことが大切。子どものSOSを察知して支援できる、地域全体で支えるシステムの構築を急がなければ」。傷付いたたくさんの子どもたちを支えてきた荻津事務局長は言葉に力を込めた。

(子どもとSNS取材班)