SNS犯罪から子どもたちを守るために、親への教育も必要とされている

 音楽に合わせ、手や指を楽しそうに動かす少女。顔も、はっきりと分かる。動画共有アプリ「ティックトック」に映っているのは、小学5年の娘の友人だ。

 「ねぇ、出てるよ」。宇都宮市、パート女性(42)は、この少女の母親に連絡した。注意が必要だと思ったからだ。

 だが、母親は軽く叱るだけなのだろう。動画は一時的に消えるが、またすぐに投稿される。過去には、表札や自家用車のナンバーが映ったことや、見知らぬ人とのダイレクトメッセージのやりとりを面白おかしく動画で紹介したこともあった。

 女性は「自分の子どもが映ったらと思うと、怖い。事件も起きているのだから、もっと、ちゃんと言い聞かせてほしいのに」とため息をつく。

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 子どもたちが遊び半分で投稿した動画が、思わぬところで悪用されるケースは少なくない。第三者が編集して、下着や太ももが見える動画だけを集めたり、「かわいい小学生」といったタイトルを付け、複数の動画をまとめたりしている。

 こうした動画は、いったん投稿されれば消すことは難しく、“ネットの海”を漂流し続けることになる。

 内閣府の2018年度「青少年のインターネット利用環境実態調査」によると、スマートフォン(スマホ)の所有率は高校生99%、中学生78%、小学生36%だった。多くは防犯目的だが、フィルタリングをかけている割合は小学生でも23%どまり。

 17年6月に改正された青少年インターネット環境整備法は、携帯電話会社などに対し、18歳未満のスマホ利用者にフィルタリングをかけることを義務化した。

 だが、警察庁の調べでは、会員制交流サイト(SNS)を起因に子どもが巻き込まれた犯罪の8割は、スマホにフィルタリングがかけられていなかった。フィルタリングをかけない理由について、保護者の多くは「特に理由はない」と回答。関心の低さが浮き彫りとなった。

 携帯電話会社の店頭で子どもに「必要ない」と押し切られたり、設定しても「仲間外れになる」と迫られたりして外すケースも珍しくない。

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 こうした中、関心を集めるのが、ペアレンタルコントロール。親が子どものSNS利用を制限する取り組みだ。

 フィルタリングをかけていたとしても、Wi-Fi(ワイファイ=無線LAN)がある環境ならアプリをダウンロードしてSNSを使うことができる。文字間にスペースを入れて禁止ワードを書き込めたり、やりとりが残らないように音声通話アプリが使えたりと、SNSには多くの抜け道がある。

 携帯電話各社はさまざまなサービスを展開。NTTドコモはSNSの種類に合わせて使用を制限できるほか、曜日ごとに使用時間を設定できる無料のアプリを提供している。ドコモショップ宇都宮西川田店でスマホ教室を担当する粂川博美(くめかわひろみ)さん(49)は「スマホの機能やアプリに追い付いていけないからこそ、親も学ぶ必要がある」と話す。

 兵庫県立大の竹内和雄(たけうちかずお)准教授は「今のままでは子どもの命が危ない」と警鐘を鳴らし、年齢認証の厳格化など、業界に対して踏み込んだ対策を求める。

 警察庁が2月に発表した「2019年の犯罪情勢」(暫定値)。SNSに起因する事犯の被害児童は、過去最高の2095人に上った。事件の未然防止に向け、親にも企業にも一層の努力が求められている。

(子どもとSNS取材班)