「家を出たい」。救いを求め、女子高生はネットの向こうにいる男に会いに行った。

 1月、東京都千代田区(本文と写真は関係ありません)

 NPO団体のメンバーだと、男は名乗った。

 自分は母子家庭で育ち、幼少期には暴力も受けた。だから大人になったいま、そんな苦しみから少しでも逃れられる場所を提供しているのだ-と。

 それが家出願望につけ込む詐術であることを、県南に住む16歳の女子高生には見抜けなかった。

 家出して、自立するためのシェアハウス。まずは一時的に家から離れ、気持ちを落ち着けてはどうか。その上で、どうしたらいいかを一緒に考え、時期を見て両親に理解を求めよう。

 会員制交流サイト(SNS)「ツイッター」で見つけたそのアカウントは、彼女にとって自分の居場所につながる一筋の糸だった。

 経済的にも恵まれた「きちんとした家庭」の子。学業成績も優秀で、礼儀正しい「いい子」。

 -なのに、なぜ?

 裁判記録には、「親子関係や友人関係の葛藤から家出の願望を有していた」と記されている。厳格な父親、思春期特有の、微妙な友人同士の駆け引き…。彼女がそこまで追い詰められていることに、周囲は誰も気付けなかった。

 そこに入り込んだのが、そんな少女たちを誘拐してわいせつな行為をしようと企てた男だった。

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 「離れることで、お互いの必要性に気付くのはよくあることです」

 自分のサイトにアクセスしてきた女子高生に、男は次々ともっともらしい言葉を送りつけた。だが、なかなか踏み切れなかった彼女を決断させたのは、この一文ではないだろうか。

 「1人の枠が埋まれば、保護の募集は一時的に停止する形になります」

 1人分なら移動費も食費も全部賄う。だけど、枠は1人だけ。このチャンスを逃したら…

 「友だちと勉強をする」

 そう言って家を出た女子高生は、南に向かう電車に乗った。ちょうど2年前の今頃だった。

 在来線に揺られ3時間。雑踏に降り立った彼女の目に、たくらみを隠した44歳の無職男の姿はどう映ったのだろう。畑が広がる一見のどかそうな街に建つクリーム色のアパートは-。

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 その約1カ月後。

 SNSに「家出を考えてます。助けてください」「性的目的でない方、東京の方がいいです」などと書き込んだ県央に住む17歳の女子高生が誘拐された。

 未成年者誘拐の疑いで逮捕された都内在住、会社員の男(47)は、「性的関係が持てるかもしれないと思って誘った」と供述している。

 男は深夜に宇都宮市内の路上でこの女子高生と合流し、車に乗せて自宅へ連れ去った。女子高生は5日間ほど男の家で過ごした後、博多行きの新幹線の車内にいるところを警察に保護される。次の家出先に向かう途中だったらしい。

 女子高生は2人とも、自発的な家出だとする手紙を自宅に残していた。だが、行方不明者が未成年の場合、「事件に遭っているのではないかという前提で捜査する」と県警少年課は断言する。実際、2人は保護者からの届け出後、間もなく警察に保護されている。

 わいせつ目的誘拐罪などに問われた無職男には懲役4年、会社員の男には執行猶予付きの懲役1年6月の判決が下された。

 それが、未熟な少女たちの心を利用した卑劣な犯行への処罰だった。

(子どもとSNS取材班)