農家、JA、行政が結束

 栃木の「とちおとめ」、福岡の「あまおう」、佐賀の「さがほのか」、静岡の「章姫」などイチゴの品種は、まさに“群雄割拠”。東の横綱「女峰」、西の横綱「とよのか」の時代は過ぎて、とちおとめ誕生後のこの10年間に、全国の有力産地が栃木に負けじと独自の品種を開発してきました。その中で県内の生産者、行政とJA栃木グループの足並みそろった取り組みで、栃木産イチゴの産出額は12年連続日本一、収穫量においては38年連続日本一と、その王座を不動のものにしています。

 2004年の県内産出額(農林統計)は250億円、2位の福岡(180億円)を大きくリードしています。過去3度、産出額で王座を福岡に明け渡しましたが、女峰—とちおとめとスムーズにバトンが渡ってからは、2位との差が徐々に開いていきました。

 ■ 優等生とちおとめ ■

 とちおとめは、甘味と酸味のバランスに優れ、大粒で収量性も女峰より高く、消費者、生産者にとっても“優等生”のイチゴです。県外の主な産地は茨城、愛知、宮城などで、07年産の品種別作付面積(JA全農まとめ)は1164ヘクタールで全国の約34パーセントを占め、2位のさがほのか(514ヘクタール)に大差をつけるなど、その人気の高さがうかがえます。

 福岡県に王座を奪われた1998年、県内関係者は大きな危機感を抱き奔走しました。県とJA全農とちぎは、90年に年内生産2000トン、総出荷量2万トン、販売額200億円を目指す「2—2—2運動」を開始、その後も「5—5運動」などと高い数値目標を掲げ、生産者、関係団体が一丸となって生産規模の拡大に努めてきました。2000年には初の250億円を突破、さらに現在は300億円を目指し「いちご王国とちぎステップアップ戦略」を展開中です。

 ■ 受け継がれた精神 ■

 品種開発の面では「女峰に続く新たな栃木のブランドを」と、県農業試験場が育種に本腰を入れた。90年に約7000の実生苗から「栃木15号(後のとちおとめ)」を見いだし、わずか4年間で品種登録出願にこぎ着けました。現在でも毎年、同試験場栃木分場で1万以上の苗を養成しています。研究者は新たに交配させた苗からできた実を一粒一粒、口に含み、まさに“いちご一会”の出会いを求め研究に励んでいます。女峰時代からの研究者精神は着実に受け継がれ、そこから新たにとちおとめ、さらに観光農園限定の「とちひめ」(2001年品種登録)、県産イチゴの周年出荷を目指した「とちひとみ」(品種登録出願中)が誕生しました。

 全国一の産出額を誇るJAはが野のイチゴ部会は、部会を構成する724人全員がエコファーマーの認定を受け、上質なイチゴの生産に取り組んでいます。同JAでは04年に県内初のパッケージセンターを真岡市田町に稼働させ、利用を希望する生産者の負担軽減を図っています。それまで、各農家独自で荷姿にしていた農産物を、JAが資材などを負担し流通させています。また流通先のニーズに合わせてパッケージし、高級品のイメージ作りなどにも対応できる態勢をとっています。

 生産者の1人で、二宮町の国府田厚志さんは「選果、パック詰めという一番手のかかる作業が省け、生産に専念できるし、無駄がなくなりました」と笑顔で話してくれました。最近では作付け面積が1ヘクタールを超える生産者も増えているそうです。

 もうすぐクリスマス。ケーキの上で赤く、愛らしく輝く実には、多くの関係者の熱い思いが込められています。

 [写真説明]収穫の最盛期を迎えた国府田さんのハウス=二宮町

 [写真説明]パックに詰められるとちおとめ。JAはが野のパッケージセンターは多様なパッケージにも対応できる=真岡市田町


 コラムオアシス 日豪FTA交渉

 オーストラリアと日本とのFTA(自由貿易協定)の締結に向けて「日本政府が交渉を行うことを容認する」。自民党農林水産物貿易調査会は4日、この重大な決定を行った。ただし、交渉に当たって貿易調査会は4つの条件を付けた。特に重要なのは次の2点で(1)コメ、小麦、牛肉、乳製品、砂糖など重要な農産物は、交渉の対象として除外するか、WTOの結論が出るまで棚上げし、WTOの結論が出てから再交渉するようにすること(2)オーストラリア側が、重要な農産物についてかたくなに関税撤廃などを迫る場合は、政府は交渉の継続を中断すること。

 (1)の条件を付けたのは、オーストラリアのFTA交渉の歴史が、例外なき関税撤廃で決着してきたからだ。そのため、交渉入りすれば重要な農産物までも関税撤廃に追い込まれかねない。そうなった場合、農業生産の縮小と地域経済への打撃で総額3兆円もの被害となる(自民党試算)。食料自給率も30%近くに落ちてしまう。(2)の意味。例え上記の方針で交渉に臨んだとしても、オーストラリアはアメリカでさえ関税撤廃を呑まされた強硬な相手だ。よほどの覚悟で臨まない限り交渉の成功はおぼつかない。

 本当に怖いのは、交渉が失敗に終わり、例外なき関税撤廃に追い込まれた場合である。日本に食料を輸出しているアメリカ、ニュージーランド、EUなどは、こぞって関税撤廃を要求してくるだろう。これを拒否できる正当な理由や力はなくなってしまう。商社は絶好の商機とばかりに、大量の食料を海外で生産し日本に輸入してくるだろう。国内の農業は壊滅し食料自給率はゼロに近くなる。その時、わが国はどうなるのか。FTA交渉の意味するものを、みんなで考えて欲しい。

(JA栃木中央会専務理事 高橋勝泰)