あしかがフラワーパークに設置されている人流データを収集する機器(左上)=足利市
あしかがフラワーパークに設置されている人流データを収集する機器(左上)=足利市

 商業施設や観光地を訪れる人たちの属性、滞在時間などのデータを活用し、事業者の生産性向上や効果的な集客・販売促進策を図ろうと県は本年度、県内の7企業・団体で実証実験を進めている。これまで経験や勘に依存しがちだった来店客に関するデータを可視化し、具体的な誘客策などの展開と効果の検証に取り組む。今後、データの利活用を産業界全体に浸透させ、経済活性化や競争力強化につなげたい考えだ。(吉田隆則(よしだたかのり))

 実証実験はNTT東日本栃木支店と連携して取り組む。初年度となった2021年度はデータの取得と蓄積状況を確認した。本年度はさらに、それらのデータを参加企業・団体に還元し、観光客の周遊促進や顧客の新規開拓などの施策に反映させ、効果も検証する。

 本年度参加するのは、県内の商業施設、観光事業者、交通事業者、住宅メーカー、観光団体など。県は既に、対象施設にデータを取得するための機器を設置した。参加企業などは取得データを基に、年内にも施策を講じる。

 このうち足利フラワーリゾート(足利市田中町、早川公一郎(はやかわこういちろう)社長)が運営するあしかがフラワーパークでは10月、施設出入り口付近に機器が設置された。来場者が持っている携帯電話の位置情報からデータを取得する仕組みで、居住地や年代、滞在時間など個人が特定されない範囲で取得するという。

 同社の担当者は「新型コロナウイルス禍で人の動きが大きく変わった。顧客動向を的確に把握し、プロモーション活動に取り組む必要がある」と説明する。  同社は、同市観光協会と共に、史跡足利学校や鑁阿(ばんな)寺などがある同市中心部を含めたエリアの誘客策を展開する。

 参加企業などは本年度中にデータの分析とともに施策の展開・検証を進める。

 県は23年度以降、実証実験の結果を積極的に発信し、データ活用のメリットなどの周知に努める方針。県産業政策課の担当者は「データがビジネスに活用できるという考え方を県内産業界に浸透させたい」と話している。