挨拶

東日本電信電話㈱栃木支店 支店長 小林 博文氏

 新型コロナウイルスの感染拡大は、接触・対面により行ってきた社会経済活動を大きく変化させました。今後は、社会経済活動のデジタル化をさらに推し進め、デジタル化したデータをオンラインでつないでいくことで労働生産性を上げると共に、場所を問わないという新しい働き方を整備していくという取り組みが必要となってきます。

 私は、新しいアイデアというのは会議室では生まれないものだと常日頃から思っています。リラックスして雑談ができる環境が必要です。まさにワーケーションはその環境が実現できる働き方です。また、リラックスして楽しみながら仕事をリモートでするという従来型のワーケーションに留まらず、地域での体験や交流を通じて新しいイノベーションを創出したり、新たなビジネスを創り出すことにより、地域活性化の可能性も広がります。

 本セミナーが、本県ならではの新しいワーケーションモデルの発信と、「とちぎの元気」に繋がることを期待しています。

基調講演 ①「ワーケーション導入がもたらす地域活性化の可能性」(オンラインによる講演)

山梨大学教授 日本国際観光学会ワーケーション研究部会長 田中 敦氏

 

 「ワーケーション」という言葉は、昨年7月の菅官房長官(当時)の記者発表によって一気に巷の注目を集めましたが、実は世界でもまだあまり使われてない新しい言葉です。「リモートワーク」との違いを簡単に言うと、リモートワークというのは通常の仕事を通常どおり行いますが、その場所が自宅や会社から離れた場所になるという働き方です。ワーケーションは、働く場所自体は基本的に自分で選ぶ、場所を特定しない仕事場での勤務ということになります。ワーケーションは、場所に自由度をもたせようという発想から生まれた働き方です。

 ワーケーションの主なステークホルダーは、制度を導入する企業、利用する社員、利用者を受け入れる地域と行政、ワーケーションに関連した民間事業者の大きく4つに分けられます。この4つそれぞれに違った課題や期待感を抱えていて、温度差は非常に大きくなっています。ワーケーションは今や日本人の7割以上の人が知っている言葉ですが、まだまだ導入企業は少ないのが現状です。実際はメリットばかりではないのがワーケーション導入の難しさになっています。今後は地域行政と民間事業者、住民が良く連携し一体となって、地域でのワーケーション導入を推し進めていただきたいと思います。

 栃木県には日光をはじめハイレベルなリゾート地があり、すばらしい自然があるという魅力があります。古くから歴史を重ねてきている観光地もあります。さまざまな資源をミックスしてウイズコロナ時代に適したライフスタイルに向けた正しいサービスの提供方法等を検討すれば、ワーケーションを推進する施策が展開できると期待しております。

基調講演 ②「ワーケーション実証実験を踏まえた今後の取り組み」

東日本電信電話㈱栃木支店 支店長 小林 博文氏

 

 弊社では、県内に点在する複数の営業・設備拠点を活かし、地域課題解決や地域インフラの構築・保守、地域社会への貢献等に取り組んでいます。

 昨年は、打撃を受けた観光業や今後の関係人口拡大の必要性などを背景に地域課題解決の糸口として、日光市様と共にワーケーション実証事業実験を実施しました。

 第1回目は8月下旬、2泊3日で中禅寺金谷ホテルに滞在し、観光にグループワークやリモートワークを組み合わせたプログラムを行いました。実際に私もトライアル参加しましたが、早朝に中禅寺湖畔をジョギングして身体も気分もリフレッシュして仕事にあたることができ、また参加した社員からも、プライベートの充実と生産性向上の両立に大きな効果が期待できるなどの声もあり、企業にとってのメリットも大きいと感じました。但し、トライアルにあたっては、制度面や費用面での課題も表出しました。

 第2回目は、宿泊施設の協力により、環境面の調査とコストバランスの検討を行いました。ほとんどの施設にWi─Fiが整備されていますが、オンライン会議を不安なくするためには、通信設備の拡充や働く場としての環境整備が求められます。

 今後、企業がワーケーションを利用する場合、休暇中の特定日や場所を問わずに働くパターンは可能な職種が限られることから、チームビルディングや新規アイデアを創出するようなパターンの方が推進しやすいと考えます。これらを地域ならではの就労体験や地元との交流も織り交ぜて、地域・企業の双方にメリットある持続可能なワーケーションモデルを構築・実践していきたいと思います。

基調講演 ③「Smart Workation Tochigiの推進に向けた取り組み」

栃木県 産業労働観光部 観光交流課 課長 鱒渕 繁義氏

 

 本県では、全国に先駆けて先進地にしたいという意気込みで「Smart Workation」というブランディングのもと、ワーケーションを積極的に推進しています。ビジネスパーソンという新たな客層を取り込み、平日の宿泊施設の稼働率を向上させるという観光振興の観点からもワーケーションが重視されており、市町単位でも積極的に取り組みが行われています。本県は古くから多くの文豪が執筆のために訪れており、ワーケーションとの親和性の高い場所であることから、県としても市町と連携しながらPRや環境整備支援に取り組んで参ります。

 スマートワーケーション推進事業の「スマート」という言葉には、3つの意味を託しました。まず、「手軽さ」です。東京圏から新幹線で1時間以内に到着できる本県では、軽装で手軽にワーケーションが可能です。次に「賢い」という意味。本県には、生産性の向上やSDGs学習に役立つ観光資源が豊富にあります。例えば、ものづくり県であり農業県でもある本県では、様々な生産現場の見学や農業体験に参加できます。さらにラムサール条約に指定された戦場ヶ原等は環境学習にも適しています。それらの情報を一元化して特設サイトから発信し、情報収集から予約までをスマホ1つで完結できるようにするのが、3つ目の意味「効率的な」ということです。

 この事業ではコーディネーターが中心となって情報を集約し、東京圏の企業ニーズを把握した上で、PR活動やモデルルート等の提案を行います。ユーザーニーズに対応し、各市町・地域が持つ多種多様な特色を生かした「栃木スタイル」を構築することで、全国に向けてスマートワーケーションをPRしていきたいと考えています。

 

トークセッション
ワーケーション推進で選ばれる栃木を目指して
~栃木の未来を考える~

ゲストスピーカー

㈱大田原ツーリズム 代表取締役社長

藤井ふじい 大介だいすけ

日光市企画総務部総合政策課 課長 

鈴木すずき 和仁かずひと

栃木県旅館ホテル生活衛生同業組合 青年部 監事

小野おの まこと

東日本電信電話㈱栃木支店 副支店長

斉藤さいとう 公明きみあき

コーディネーター

エフエムとちぎパーソナリティー

菊池きくち 元男もとお

 

ターゲットを分析しコンテンツを構築(藤井氏)

菊池(コーディネーター)それぞれの立場から、栃木のワーケーション推進にはどんな課題があると思いますか。

藤井 大田原ツーリズムが企画運営している国登録有形文化財の宿泊施設「飯塚邸(那珂川町)」には、コロナ禍以前から、エグゼクティブな方が家族と一緒に来て、リモートワークをしながら滞在しています。ワーケーションといえども広いので、その中でもターゲットを分けて、その需要に応じたソフトとハードを整備する必要があります。例えば、ハードではヨーロッパスタイルの長期滞在ができる施設のようにターゲットの需要に合わせて整備することも必要です。

民間企業と協力して受入体制を整備(鈴木氏)

小野 ワーケーションは、シニア、インバウンドに続く有効な観光施策になると期待しています。宴会用の大広間をオフサイトミーティング用の会議室に改装したり、地域の飲食店とコラボして宿泊料を抑える等の取り組みもすでに県内で始まっています。

鈴木 日光市では、民間企業と共に事業を推進していくという市長の考え方もあり、積極的にワーケーションを推進しています。地域の観光事業者はもとより、利用する企業の考え方、ささえる行政の在り方など、課題を整理しながら受入体制を整えることがファーストステップだと考えています。

ニーズに沿った魅力的なプランを提供(小野氏)

斉藤 私どもNTT東日本でも、地域密着企業であることを強みとして、地域課題の解決に取り組んでいます。日本のワーケーションには、サーフィンをしながら働くなどの資源活用型と、地域企業との交流や来訪者同士の交流を提供する人的交流・コミュニティーベース型とがあります。この2つのスタイルを組み合わせて魅力的なモデルを創るための資源が、栃木にはたくさんあります。有効なブランドを生かしてストーリーのある体験を提案していくこと。さらにワーケーションのメニューや施設をクラスター化させて全国にアピールしていくということが求められます。

小野 世界遺産があり、サイクルツーリズムがあり、大自然の中で働きながら、イルミネーションや花々も楽しめる。栃木の豊富な観光資源それぞれをコラボレーションして、ニーズに沿ったプランを提案することが大切です。

藤井 外部へ見える化するため受け入れ地域・施設をリストアップすることが重要だと思います。県内全ての施設がワーケーションを受け入れる必要はありませんし、できるところが個々にターゲットに合わせたコンテンツを創り、県全体ではプロモーションを展開する。その時に、ワーケーションに適したところが一目で分かることが大切です。戦略としては、できるところをピックアップして必要な整備をすることが急務だと思います。

菊池 観光地ではほとんどWi─Fiが使えるなど、整備面の強化も進んでいますね。

鈴木 日光市ではパートナー企業のNTT東日本と共に、施設等の通信環境の調査に取り組み、整備強化を進めています。

斉藤 Wi─Fiの強化はもちろんですが、Web会議に必要な照明の提案やコロナ禍で求められる非接触ワークの推進、飲食の場でプライベートに配慮しながら混雑状況を配信するなど、環境全体のスマート化を進めるお手伝いもしています。

菊池 ワーケーション推進は、ウイズコロナ時代を受けてジャンプアップしているんですね。

推進には企業メリットの明確化が必要(斉藤氏)

藤井 ワーケーションはテレワークの延長線上にあるだけではありません。今、若い世代の社員の考え方は変わってきています。仕事はきちんとしたいけれど、飲み会や社員旅行には参加しない。そこで重視されるのがチームビルディングをどうするかという問題です。例えば、社員旅行の代わりに一つのチームに1週間のワーケーションを実施する。そうすると、チームの団結力は格段に高まります。そういう新しい働き方の一つとしてワーケーション導入が広まっていくと思います。

斉藤 個人の旅行の延長線では限界があります。ワーケーションには、企業がお金を出す価値、すなわちメリットがあるということをしっかりとアピールしていかなくてはならないと思います。テレワークの時代だからこそ、生産性を上げるために、逆にウェットなコミュニケーションが求められます。

鈴木 ワーケーションの実証実験でわかったさまざまなメリットを明確化して、栃木ならではのモデルを創っていきたいですね。

小野 ワーケーションを担うインフラの一つとして、私たち観光業に携わる事業者も、県や市町と協力してワーケーションを推進していきたいと思います。栃木のいいところを、もっと全国に向けて発信していきます。

藤井 栃木のポテンシャルを生かして、個々には頑張っており、県北地域では企業と行政、地域が連携した取り組みが活性化しているので、今後が楽しみです。

菊池 貴重なご意見をありがとうございました。
 

トークセッションの模様はこちらのページで視聴いただけます

NTT東日本 栃木支店
《問い合わせ》 Email : tochigi-workation-ml@east.ntt.co.jp