NTT東日本栃木支店は、従来からの「電話」にとどまらず、IoT(モノのインターネット)・AI(人工知能)などを活用し、栃木のビジネスユーザーが抱える課題解決へ貢献する「地域とともに歩むICTソリューション企業」を目指しています。栃木県内でも大きな被害をもたらした台風19号から間もなく2カ月となる現在の復旧状況や、防災・BCP(事業継続計画)や行財政改革、観光、まちづくりなど、多彩にわたるその具体的な取り組みと今後の展望などについて、同支店の長谷部周彦(はせべちかひこ)支店長と下野新聞社代表取締役社長の岸本卓也(きしもとたくや)が語り合いました。

防災・BCPの取り組み

 岸本 県内に甚大な被害をもたらした台風19号の直撃から間もなく2カ月が経ちます。貴社が保有する通信設備等も被災されたかと思いますが、復旧に向けた取り組みはどのように進められたのでしょうか。

長谷部周彦氏

 長谷部支店長 千葉での台風被害の経験がありましたので、事前の準備をしっかりやりました。10月5日ぐらいから災害対策に取り組み、機械類が入っているビルに水が入らないように水防対策を実施したり、電源が切れた時のために移動電源車の配備を準備していました。そういう意味では被害を最低限にとどめられたなと思っています。
 ただ、これだけの規模ですから、ケーブルの損傷はいくつか発生しました。特に鹿沼の粕尾地区では交換機と交換機をつなぐ中継光ケーブルが損傷し、約400世帯の電話が使えない状態になりました。まずは通信が使えない状態を暫定的にも回復する必要があるので、地元の自治会長に衛星携帯電話を届けました。土砂崩れや電柱の倒壊などもあるので、道路工事の関係者と連携を取り、道路が修復した後に電話線を引いていく流れで仮復旧しました。

岸本卓也

 岸本 現在の復旧状況はいかがでしょうか。

 長谷部支店長 ピーク時は一般のお客さまの電話器が水に浸かってしまったことなどによる故障が平常時の約6倍にも膨らみました。「113」という電話の故障受付がつながりにくい状況が若干出てしまいました。その時は特に被害が大きかった栃木市のビルに出張で窓口をつくり、そこで通信にお困りの方への対応を行ったことにより、故障の件数は10月中で収まり、今はほぼ平常の状態になっています。

 岸本 今回の災害により事業廃止を余儀なくされた事業者も出ています。今後も起こりうるであろう水害等の災害に対する防災やBCP対策への関心が高まっていますが、防災やBCPについてNTT東日本は各自治体や県内法人に対してどのような取り組みをされていますか。

 長谷部支店長 今回の台風も踏まえて皆さまの意識が高まっていると感じています。さくら市、真岡市、塩谷町で入れていただいているソリューションで、気象庁が出している各エリアでの降雨量の情報に加えて独自の技術でより精度を高くした情報を提供するシステムがあります。そのサービスには、気象予報士に電話で相談できるコンサルティングもセットとなっています。

 岸本 そのシステムは、実際の河川の増水なども感知できるのでしょうか。

 長谷部支店長 自治体はハザードマップを作成する際に何ミリ以上の雨が降ると河川が氾濫する危険性があるという基本情報をお持ちですから、ピンポイントでこのエリアにこれだけ降るという情報を加えると避難の必要性を判断する材料になります。

図表① 人工衛星画像でのAI活用被害状況自動判断のイメージ

 岸本 感知機能がどんどん発達してそこに通信が結びつくと、遠く離れた災害情報も入って避難に役立つということが期待できそうですね。

 長谷部支店長 今でも気象情報とその先を予測する部分、さらに河川にセンサーを付けて増水の状況をチェックしたり、カメラでの映像で確認するなどさまざまな手法があります。そのあたりも含めてNTTが全てをご提供できるシステムになっています。

 岸本 他の防災に関する困りごとへの対応はいかがでしょうか。

 長谷部支店長 自治体のお困りごとに、災害が起きた時に住民への告知をどうするかがあります。昔からの防災無線は雨風で音が聞こえないという課題がありますが、解決策としてスマートフォンや携帯電話で対応できる情報告知のシステムをご紹介しています。さらに被災者の生活再建を支援することを目的に、被災世帯の被害程度等の情報をデータベースに登録し、クラウドでデータを預かることでどこからでも見られるシステムを佐野市、栃木市でご利用頂いています。
 企業の場合は、ひかりファイバーでの電話であまり使われていない機能に転送機能があり、事務所が浸水して注文や取引の電話ができないときに、場所を移動しても電話が全部転送される仕組みです。非常に素朴な手段ですが、そういうものがあるとないとでは復興への時間が大きく変わってきます。さらにデータ保管の問題です。災害でデータが全部なくなってしまう状況を回避するためにクラウドでネット上にデータを保管する形を取っておくと、場所が動いてもデータを引き出せます。

AI・IoTで課題解決

 岸本 NTT東日本は「電話」とのイメージが強かったですが、近年はさまざまな取り組みをされています。地域社会への貢献ということで各自治体や企業などと連携協定を結ばれていますね。

 長谷部支店長 人口減少の流れで働き手が減り、税収も減っていくという地域社会の課題がある一方、ICTの技術は著しく進歩しています。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)、ロボットなどです。われわれは通信で培ってきた知見を含めて地域社会の課題解決のお役に立っていきたいと思い、力を入れさせていただいています。

 岸本 県のIoT推進ラボについて教えてください。

 長谷部支店長 栃木県IoT推進ラボは、県内企業の生産性向上及び競争力・収益力強化による地域経済の活性化、県内産業競争力の強化及び魅力的な雇用創出を実現するため設立され、NTT東日本はプロジェクトアドバイザーとして参画しています。具体的には、IoT等を活用した新しいアイデアの創出等を図る「地域課題解決型アイデアソン」の開催や市町等から収集した約70の地域課題の中からAIやIoT等を使って解決できるものを吟味し、5つの実証実験を行う「IoT等活用プロジェクト推進事業」を進めています。具体例の一つとしては、台風などで多数倒壊したビニールハウスなどの被害状況を把握する業務において、人工衛星やドローン等で収集した画像を、AIを活用して被害状況を自動判断する取り組みがあります=図表(1)。

 岸本 宇都宮市が導入しているAIチャットボットとはどういうシステムですか。

 長谷部支店長 これ自体は行政経営基盤の強化の一環なのですが、自治体は問い合わせが多く入ってくると、そのために人を置き、しかもマニュアルに沿って回答する仕事をしています。AIチャットボットは、パソコンやスマホでお客さまのお問い合わせ状況を入れると、人工知能が内容を判断して適切な回答を画面上で返すというものです。

 岸本 働き方改革に関する取り組みもしていますね。

 長谷部支店長 最近、パソコンの中でロボットが自動的にデータ処理をするRPAが注目されており、日光市とも包括的な連携協定の中の一つの項目としてRPAの導入を話し合っています。RPAとセットでAI-OCR(文字の読み取り)があり、スキャナーで読み取ると手書きの文字がデータとして読み取ることができます=図表(2)。試験の時にわざと汚い字で書いたり、枠からはみ出して描いてみても今のAIはとても優秀でくせを読み込んできちんとデータ化しています。栃木県とのRPA導入の実証も私どもでやらせていただき、成果が出ているところです。
 民間の場合はそれぞれの会社がそれぞれのやり方で仕事をしています。われわれだけでさまざまな仕事の中身まで理解し、それに合った形で自動化などを進めていくのには限界があると思いました。労務コンサルティングのノウハウをお持ちのTMC経営支援センターとタッグを組んで取り組んでいくことによって民間のお客さまの働き方改革に貢献できると考えています。

図表②

まちづくりに積極関与

 岸本 栃木県は観光に力を入れています。観光客の誘客や訪日外国人についても対応されていると聞いています。

 長谷部支店長 8月に日光市と連携協定を締結しましたが、その一環で「車中泊」の実証実験を行っています。最近、キャンピングカーなどをどこに止めるかが社会の課題にもなっていて、道の駅にずっと止まっている車などの問題もあります。これはICTというよりはわれわれが保有しているアセット(資産)の活用ですが、日光市にわが社が保有するビルの駐車場を活用し、キャンピングカーで車中泊していただく取り組みです。キャンピングカーで泊まれる場所を提供する会社と連携していきます。安全の観点からネットワークにつながったカメラを設置し、Wi-Fi環境も整備されています。
 日光の場合は観光シーズンに宿泊先を見つけるのが大変という課題のソリューションとしてご提供できればと考えています。まだこれからですが、実際に予約された方がどういう風に動いたのかをスマホのアプリを使って補足できるのでそのデータを自治体や観光協会などにご提供していくことも視野に入れて取り組みを始めています。そういうICTなどの技術の部分と、われわれは結構な不動産も保有していますので弊社のアセットを提供する、技術とアセットを組み合わせて地域に貢献していくような取り組みを強化していきたいと考えています。

連携協定に関する契約を交わした大嶋日光市長(右)と長谷部支店長

 岸本 栃木県からの受託事業の「多言語コールセンター」について教えてください。

 長谷部支店長 先ほどもお話ししましたアセットの活用です。われわれのコールセンターは、電話の故障や引っ越しなど大量かつさまざまな対応をさせていただいていますが、そうしたアセットはわれわれの仕事だけでなく他の用途にもご利用頂ける部分になります。その一環として県が外国人観光客とお店の方とのコミュニケーションを図るために多言語で対応できるコールセンターを立ち上げるのですが、それを私どもでやらせていただいています。県内企業の登録が既に200以上になり、ご利用頂いています。

 岸本 宇都宮市はLRT(次世代型路面電車)を活用した新しいまちづくりを目指しています。スマートシティ構想にどのように関わっていかれますか。

 長谷部支店長 LRTは全国的に見ても画期的な取り組みだと思います。LRTと関連してまちづくりを進めていく中では、地域に根ざしてきた弊社として協力しないことはありません。宇都宮市を中心としたUスマート推進協議会という産学官の集まりに11月から加入させていただき、ICT技術に加えてわれわれが地域に持っている資産を活用してお役に立てる部分を探っていこうと考えています。わが社は栃木県内に約180カ所のビルがあり、約200台の車両を保有しています。そういうものを地域の方に使っていただくことでもお役に立てると考えています。地域にいるわれわれだからこそできることであり、それが強みと思っています。

2019年12月10日(火)    下野新聞朝刊