新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、私たちの生活や働き方は大きく変化しました。経営者やこれからの時代を担う人たちには、ニューノーマル時代をどう生きていくのか難しい判断が求められています。
 そんな中、「ニューノーマル時代のDX推進セミナー ~DXの理解で広がる新しい働き方~」(主催:下野新聞社、共催:NTT東日本栃木支店、あしぎん総合研究所、TMC経営支援センター)が、3月4日、ホテル東日本宇都宮で開催されました。
企画・制作 下野新聞社営業局

特別講演  5G・IoTが生活・ビジネスを変える
『DX デジタルトランスフォーメーション』

ITジャーナリスト・ライター 三上 洋氏

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)のトランスとは、大変革という意味です。2004年にスウェーデンのエリック・ストルターマン氏が「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」と提唱したのがDXの始まりです。

DXのステップ

 DXには3つのステップがあります。まず「デジタイゼーション」、これは単純なIT導入で、ファックスや押印を止めて経理システムをデジタル化するというような基本の部分です。次の「デジタライゼーション」は、IT化することで仕事の収益を上げたりコストを削減することです。例えば、電話連絡をビジネスチャットに切り替えることで情報伝達速度が上がる。業務システムをスマホで外から使えるようにしてスムーズに仕事ができるようにする。これらがデジタライゼーションにあたります。そこからもう一歩進み、自分たちが得意とする仕事をデジタルを使って新事業にするのがDXです。

 例を上げると、ピザの宅配サービスはインターネットが広がった初期の頃に生まれました。インターネットでピザが届く、それだけで素晴らしかった。これがデジタイゼーションです。デジタライゼーションは「出前館」です。多様な店の出前を一括して受けますというビジネスモデルを作りました。そして、DXにあたるのが「ウーバーイーツ」です。ウーバーイーツに加盟すれば売上も上がるし、お店を持たないバーチャルレストランですら食事を提供できるというまったく新しい事業スタイルが生まれました。出前がDXでウーバーイーツになり、売上はそれまで考えられなかったほど上がりました。

 スーパーマーケットのスマートショッピングカート導入や大手旅行会社が提供するオンライン旅行など、すでに日本でも、さまざまなDXの取組が始まっています。

新技術を利活用

 DX推進の基盤となる技術「5G(第5世代携帯電話)」と「IoT(モノのインターネット・センサー技術)」のビジネス活用にも大きな期待が寄せられています。DX推進には「5G」や「IoT」をはじめ、人工知能のAIや、ドローン、自動運転、リアルタイム翻訳、AR/VR(仮想現実、拡張現実、ARグラス)、キャッシュレス決済などの新しい技術をどう取り入れるかが鍵となります。「Society5.0」という一歩先の社会を実現するためにも、これらの新しい技術の使い方が重要となってきます。

 耳の痛い話かと思いますが、これまで使ってきたシステムは使い物になりません。企業のやり方に合わせて開発された今までのシステムは他とつながらず、データが取れず、メンテナンスが難しい。多くの企業は職人の技術をデジタル化して現場の現状に合わせたシステムを開発します。でもそれは汎用にならない。ITの処理方法に現場の人が合わせて働くという形を作っていく必要があります。

 DXへの取り組み方は、まず、現事業を洗い出してリストアップし、そこからITとの組み合わせで新事業ができないかを考えます。このとき突飛なアイデアは不要で、IT化と組み合わせて何ができるかを考えればいいんです。IT化による収益アップができるかどうかを考えましょう。もう一歩進んでまったく違うビジネスに発展させられるかもしれない。それがDXです。最終目的はコスト削減や効率化ではなく、新規開拓をすることです。DXには経営判断が求められます。

 問題は人材確保ですが、DXはまだ未知の分野で、DXのプロは存在しません。ウーバーイーツを作ったときにウーバーイーツのプロはいませんでした。誰かがゼロから始めているんです。ぜひ社内の人材、若手を生かしてDXを進めてほしいと思います。

基調講演1 DXのすゝめ
多岐にわたる経営課題解決にデジタル技術を活用

東日本電信電話(株) 栃木支店 支店長 小林 博文氏

 県内企業の約99%は中小企業で、IT技術の導入は少しずつ進んでいますが、DXにつながるような本格的なデジタル技術の導入はまだまだ進んでいないというのが現状です。データからも、企業の規模が小さくなるほど導入率が低くなっていることが分かります。中小に限らず、地方の企業の多くは、販路の拡大や商品開発、人材育成などのさまざまな経営課題を抱えています。これらの多岐にわたる経営課題の解決にデジタル技術を活用するというイメージが持てていないことが、DX化がなかなか進まない一つの要因ではないかと思います。経営課題の解決とDX化をどうつなげていくのかが、最も大切です。

 DX(デジタル・トランスフォーメーション)とは、「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化、風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義されています。民間企業が実際にどんなDXを導入しているのかを調査すると、テレワークとの回答が一番多く、まだ本質的なビジネスモデルの変革には至っていない企業がほとんどです。アナログな価値観が定着していて、IT化の明確な目的・目標が定まっていない。そのために人材育成が遅れ、組織の変革ができず、結果としてデジタル化が進まないという負のスパイラルに入ってしまっている企業が多いと推測しています。

 デジタル化を推し進めDXを展開するために大切なのは、まず、経営サイドが覚悟を持って、多岐にわたる経営課題の中で今やるべきことは何なのかをしっかりと明確化することです。それから、最初はスモールで始めて徐々に成果を実感しながら事業を変革するようなDXに携わっていくこと。ロングタームで伴走、並走型でサポートできる事業者を確保することも大切になってきます。

 デジタル化は、もう待ったなしの状況です。補助金等も活用しながらDX導入をぜひご検討いただければと思います。

DXを成功させるためのポイント

✔ 経営サイドの覚悟
自社事業の成長に向けた不退転の決意と果敢な意思決定

✔ 優良パートナーの確保
ロングタームかつ伴走型・並走型でサポートできる事業者へ

✔ スモールスタート
小さくても狙った効果や変化の可視化が次ステップに繋がる

基調講演2 働き方改革とDX推進
DXを推進し働き方改革を実現

TMC経営支援センター 代表取締役社長 葛西 美奈子氏

 コロナ禍による厳しい経済状況が続いていて、当社でも事業の継続を目的としたデジタルシフトを進めてきました。15年前に初めて就職面接をリモートで行ったときはかなり珍しがられましたが、最近は、リモート面接が主流になっています。デジタル化が進んでいると日々実感しています。

 まず、デジタル化推進の背景として、労働人口が減って人材確保が困難になるという問題があります。求人倍率が高く人手不足が続いているのに、せっかく雇った人材も厳しく指導をするとすぐに辞めてしまう。過労死なども社会問題化しており、企業は労働生産性を上げていかなければなりません。さらに、最低賃金がじわじわと上昇して、人件費は容赦なく上がっていきます。

 これらの背景があるからこそ働き方改革が必要です。「法律だから」「罰則があるから」という理由で働き方改革に取り組むのではなく、これからの人手不足を見据えて有能な社員が集まる職場環境を整えるために改革をしていかなければ、事業を継続していくことは困難です。

 当社では、人事労務管理事務所として率先してさまざまな業務のDX化の推進に取り組んできました。毎日の勤怠管理、人事労務システム、給与明細のデジタル化、社内コミュニケーションへのグループウエアの導入、ペーパーレス化による電子データ保存への移行などです。RPAも積極的に導入し、ロボットが得意な単純業務はロボットにシフトして自動で処理できるようにしました。

 DXの推進には、生産性と収益性の向上、時間やコストの効率化とともに、働きやすい職場の実現という大きなメリットがあると感じています。

NTT東日本 栃木支店
《問い合わせ》
0800-800-0544 営業時間/9:00~17:00(土・日・休日・年末年始を除く)