コスト高騰もう限界
“三重苦”に悲痛な訴え

 JAグループ栃木農政対策本部とJA栃木中央会は11日、世界的な原油・肥料・飼料価格の高騰による農業の危機的状況を訴えるため、栃木県代表者緊急集会を宇都宮市内で開きました。430人を超える生産者やJA関係者らが集結。農家の経営安定対策や省エネ設備の導入補助などを国や県、関係機関に要請しました。耕種、園芸、畜産の生産者代表の訴えや農家を取り巻く厳しい情勢などを紹介します。

 ■ 赤字経営の品目も情勢報告 ■

 バイオエタノール燃料の生産拡大によって、トウモロコシの需要が高まり、価格は6年前の3・6倍に上昇。このほかの主要穀物も小麦で3・1倍、大豆で3・6倍と軒並み値上がりするなど、世界的な食料争奪戦に陥っているのが現状です。

 トウモロコシを原料とする配合飼料価格は史上最高水準にまで高騰。2006年まで1トン当たり4万円強だったのが、今や6万5000円のレベルです。価格安定制度による補てんがあるものの、値上がりが止まらないため、機能しなくなりつつあります。

 栃木県内のハウスの暖房に使用されるA重油は2003年を100とすると、今年7月は244と2・5倍近い値上がりです。特に花き栽培に深刻な影響があり、洋ランの所得は赤字、バラは前年のわずか5%程度に落ち込みます。施設園芸も10~30%、果樹のブドウも40%と、それぞれ所得が減少する見通しです。

 肥料価格も05年に比べ2~3倍上昇。水稲は肥料の割合が高いため、16%の所得減が見込まれます。

 このまま高騰が続けば、農家の経営を圧迫し、困窮の度合いを深めるばかりです。生産コストの上昇分を販売価格に転嫁できる仕組みづくりが急務と言えるでしょう。

 ■ 上昇分、価格転嫁を緊急要請 ■

 価格高騰に関する要請として、(1)生産コストに着目した経営安定対策(2)原油高騰対策(3)肥料高騰対策(4)飼料高騰対策(5)脱原油と循環型農業への転換対策の5項目を掲げています。

 まず経営安定対策としては、生産コストの上昇分を販売価格に適切に転嫁する「サーチャージ制度」の確立を提案。また、実態を踏まえた大幅な補正予算、野菜価格安定制度の保証基準額の引き上げを求めています。

 原油高騰対策はヒートポンプや多重カーテンなど省エネルギー対策の充実強化、肥料高騰対策では流通の合理化、施肥効率の向上などの支援を要請。飼料高騰については、経営安定に向けた追加対策、安定運用に向けた十分な予算確保を挙げています。

 さらに、脱原油に向け、木質バイオマスや太陽光、風力など自然エネルギーを活用した施設園芸への転換の検討を示唆。自給飼料の増産や配合飼料使用の低減などに取り組む生産者への支援充実を訴えています。

 [写真説明]参加者全員によるガンバロー三唱で、農家の経営安定対策などを訴えた

 ▽緊急、万全な対策必要 JA栃木中央会伊澤茂会長

 農家経営は今、原油、肥料、飼料などの生産資材価格が過去最高の水準まで高騰しているため、これまで経験したことのない重大な危機に直面しています。

 生産資材の大幅な上昇に対し、生産効率化、自給飼料増産と、コスト低減に全力で取り組んできました。しかし、生産資材の高騰はもはや、われわれの努力で解決できる水準を超えています。このままでは廃業する農家が出てくるなど、非常に厳しい状況です。


 政府は食料自給率50%を目標としていますが、その実現の前に生産者が破綻(はたん)しては何の意味もありません。この局面を打開するため、緊急かつ万全な対策が何としても必要です。生産現場の実情を理解し、特段の尽力をお願いします。


来年は米の作付けできない JAなすの 平山英二さん(那須町)

 中山間地域での水田管理は容易ではありませんが、規模拡大を図ってきました。しかし、最近の物価高騰で、水田の整備どころではありません。現在の経営を維持していくことも困難な状況に陥っています。

 今、農業者は貯金と共済を取り崩し、生活をしのいでいるのが現状です。生産資材の急激な高騰は異常としか言えません。

 国民の食料供給を担っている農業農村、多面的な機能を果たす水田。国民の生活に一番密着している水田農業の在り方を早急に考え直さなければならないでしょう。

 このまま生産資材の高騰が続いたら、来年は米の作付けができない状況が生まれます。個々の農家が所得を確保できないなら、日本の農業の終えんであり、食料危機の大波に飲み込まれるのは必至です。生産者の経営安定を図る対策を緊急に実施していただきたいと思います。


日本一の産地維持ままならず JAはが野いちご部会長 舘野義明さん(真岡市)

 イチゴ栽培で欠かせないのは温度管理。ハウス内の温度を8度以上に保たなければなりません。そのために燃料として重油を相当使いますが、昨年は18キロリットルで147万円かかりました。

 今年は16アールの規模拡大を図り、省エネのためにウォーターカーテン仕様にしましたが、重油が1キロ当たり約40円上昇したため、さらに216万円かかります。重油だけで、昨年より70万円増える見込みです。肥料、資材も大幅な価格上昇で大変な負担です。

 部会としては日本一の産地維持に向け、規模拡大、後継者育成に努めています。しかし高齢化や後継者不足に価格高騰が追い打ちをかけ、産地の維持もままなりません。

 安全安心でおいしい国産農産物の安定供給という使命を全うするためにも、農業経営の維持と発展が展望できる緊急対策がぜひとも必要です。


牛の販売価格暴落が追い打ち JAおやま肥育牛部会長 麻生政男さん(小山市)

 今春から生産者の環境が一変しました。肥育牛の出荷価格が暴落し、追い打ちをかけるように、牛を育てるのに一番大切な配合飼料が暴騰しました。

 肥育牛はエサをたくさん食べてなんぼの世界。食べる量を減らしたり、質を落としては、何にもなりません。

 部会平均の収支をみると、1頭当たりの配合飼料28万1000円、粗飼料2万円、その他経費3万円、もと牛代60万円の合計93万1000円。販売出荷の農家手取り額91万4000円を超えています。手間賃はもちろん、減価償却費もありません。8月直近の販売価格はさらに下がり、和牛は87万、交雑牛は67万円となっています。

 赤字経営で厳しい肥育環境ですが、「牛飼いをやめる」という声は一つも聞こえません。何とか安心して、牛飼いを続けられる環境をつくってほしいと思います。


 コラムオアシス  合併10周年に思う 安全な食の提供に努力

 JAおやまは、平成11年3月に6農協が合併し10周年を迎えることになりました。これを記念して、「組合員参加ゴルフ大会」を盛会に開催しました。10月には家族団らんの雰囲気でお座敷列車で行く稲取の旅を実施いたします。また懸賞品付特別貯蓄運動(9月末日)も実施しています。

 都市化の進む中で地域の皆さんの理解と交流を深めるため、JAは消費者との農業体験交流や、組織の輪を広げようと各種スポーツ大会を開催し、親睦と健康増進に積極的に取り組んでいます。

 組合員(生産者)の皆さんには農業を取りまく環境が誠に厳しい中で、営農支援センターの機能を充分に活用し、指導事業の強化を図り地域農業振興に取り組んでまいります。

 また、地域の皆さんに信頼される金融機関として、ニーズに応じたサービスを提供し、貯金者を保護し安心して利用していただけるよう取り組んでおります。

 消費者の皆さんには安心安全な農畜産物を提供し、「JAおやまのお米はおいしい、野菜も新鮮だ」と言われるよう日々努力しておりますので、地産地消にご協力をお願いいたします。

 今後とも、地域の農業振興と安心・安全な食を提供し、未来に向けて活力あるJAづくりに努力してまいります。

(JAおやま代表理事組合長 篠原正雄)