環太平洋経済連携協定(TPP)について、いま一度じっくりと考えてみましょう。野田佳彦(のだよしひこ)首相は昨年11月に「TPP交渉への参加に向けて関係国との協議を開始する」と日本政府の姿勢を表明しました。しかし、協議がどのように進められようとしているのか、また、協議がどの程度進展しているのか、報道でもほとんど取り上げられていません。国民の多くが、TPPについて国が説明責任を果たしていないと認識しているのではないでしょうか。

 ▽TPP関係国のGDP9割占める米国

 民主党の前原誠司(まえはらせいじ)政調会長を筆頭とする民主党幹部や、財界のトップは口をそろえて、「TPP=日本の国益」と主張してきました。

 野田首相も昨年11月の政府の姿勢表明会見で「貿易立国として活力ある社会を発展させていくためには、アジア太平洋地域の成長力を取り入れていかなければならない」と発言していますが、TPP交渉の関係国(新興国)には日本の経済成長を委ねるだけの市場規模は存在しません。関係9カ国のGDP(国内総生産)総額の9割近くは米国が占めているのが事実です。

 果たしてTPP参加に日本の国益はあるのでしょうか。現時点での日本の最大の貿易相手国は中国であり、さらなる貿易拡大は中国や韓国を含めたアジア市場にこそあります。日本が中国寄りになることを米国は強くけん制しています。

 ▽米国の狙いは多分野の市場開放

 「TPP交渉に参加しなければ、日本は世界の潮流に乗り遅れてしまう。今こそ、国を開いてアジアの成長を取り込むべきだ」と財界は景気後退している日本経済の危機感をあおって、TPP交渉への参加を「国の大義」であるかのように述べていますが、TPP交渉は実質的に米国との自由貿易交渉に他なりません。

 日本の交渉入りの行方は米国が握っており、日米2国間の懸案事項の解決を交渉参加の条件とする“入場券”が求められています。

 もし、TPP交渉に参加すれば米国の対日要求が、荒波のように日本に押し寄せてくる恐れがあります。

 TPPは、米国経済の復興・拡大を目的としたオバマ大統領の対アジア経済戦略であり、これに同調する米国の多国籍企業の対日戦略であると言えます。

 真の狙いは日本のあらゆる分野の市場開放だと言われており、郵便貯金や簡易保険、JA共済などが米国企業の市場参入の標的になると懸念されます。

 ▽米韓FTA締結に高まる抗議運動

 昨年11月、韓国は与党の強行採決により米韓FTA(自由貿易協定)を批准しましたが、韓国にとってあまりにも理不尽な協定内容が次第に明らかになり、韓国内では米韓FTA締結に抗議する運動が高まりをみせています。

 その代表的なものが「ISD条項」と呼ばれる投資家保護ルールです。「ある国家(韓国)が公益のために制定した新政策によって、海外の投資家(米国の民間企業)が不利益を受けた場合、投資家はその国を相手どり、損害賠償を求める訴えを起こすことができる」というものです。

 また、「未来最恵国待遇」と呼ばれるルールが盛り込まれています。将来、韓国が米国以外の国とFTAを締結した場合に、米韓FTAより有利な内容が含まれていた場合には、無条件で米国にも適用されてしまいます。

 TPP交渉でも、こうしたルールが米国から求められる可能性があります。

(JA栃木中央会農業対策部)

 28日にも、食の安全や医療分野をテーマとした「TPP特集」をお届けする予定です。

 コラムオアシス TPP問題/情報不足にぬぐえぬ不安

 今、日本はグローバル社会の中で「将来日本はどうなるのか?」分からずにさまよっているように見えます。TPPの問題も、国民に情報開示をせずに、単純に“国際社会の中で乗り遅れない”と言う大義名分だけで、押し進められようとしています。

 おおかたの国民が、TPPによって日本は将来どのように変わるのか?市場開放による国益は本当にあるのか?と不安を解消できないまま、交渉の成り行きをぼうぜんと見ているだけです。

 ここにきて、TPPは農業の問題だけでなく、日常生活の中に幾つもの関わりを持つことが徐々に分かってきて、さまざまな議論がされています。政府の説明は不十分で歯がゆい限りですが、政府にはもう少し正確な情報開示をしていただき、国民の理解を得ることが必要ではないのかと思います。政府の各省庁がTPPの影響試算をしていますが、どの数字が正しいか分かりません。しかし、農業が崩壊することだけは間違いないと思います。農業は国によって滅ぼされ、国民は将来の食料確保について極めて不安定な選択を余儀なくされることになります。

 私は、“土地は玉手箱である”という信念で、兼業農家の皆さんや趣味で家庭菜園をやられている方にも、少しでも多く種をまいて、少しでも多く収穫をしてもらい、知り合いや近所の人に食べていただくことで、自給率向上につながればと思っています。

(JA佐野常務理事 山本茂)

読者の声 ~11月の紙面から~

【大豆栽培の難しさ知る】

・大豆の栽培が難しいことが分かりました。連作障害が出るため、輪作栽培をしていることも初めて知りました。「生産者は大変なんだ」とあらためて思いました。(62歳、女性)

【自給率低下で暮らしに支障も】

・「コラムオアシス」のTPP反対を支持します。農産物の自給をこれ以上低くしたら、輸入ストップのとき生活できなくなる。(75歳、男性)

【おいしい大豆のグラタン】

・今回の大豆のレシピはとってもおいしそうで、すぐ作ってみました。想像通り味はおいしく、食べ応えもあり満足のいくものでした。レシピは切り抜いて“my料理レシピ”にとじています!食べるの大好き!!(60歳、女性)

 [写真説明]第2回「TPP交渉への参加阻止栃木県民集会」でがんばろう三唱する参加者。県内JAや関係団体から約3200人が集まり、「交渉参加阻止に関する特別決議」を採択した=2011年10月20日、宇都宮市のマロニエプラザ
 [表あり]貿易相手国ベスト5
 [グラフあり]TPP関係国のGDP
 [表あり]米韓FTA