夏休みになると各地でサマーキャンプと呼ばれる宿泊を伴う子ども向けの自然体験が開催されています。教育的な目的で実施されるキャンプは総称して「組織キャンプ・教育キャンプ」と呼ばれます。現在、サシバの里自然学校を運営する私も、そんなサマーキャンプの一参加者でした。

小学生の時に参加した「おおぞらキャンプ」(最前列右から3人目が遠藤さん)
小学生の時に参加した「おおぞらキャンプ」(最前列右から3人目が遠藤さん)

 初めてサマーキャンプに参加したのは、山梨県北杜市にあるキープ協会が主催する4泊5日の「おおぞらキャンプ」でした。知り合いのいない場所へたった1人で、両親の元を離れてのお泊まり。しかも5日間もあります。キャンプ前には参加する子どもたちの自己紹介やキャンプでやりたいことをまとめた冊子が届きました。緊張はしているものの、泊まりで遊び尽くせるという期待感から「冒険がしたい。基地を作りたい」と書いていました。

おおぞらキャンプで書いた自己紹介メッセージ
おおぞらキャンプで書いた自己紹介メッセージ

 いざ当日。とても緊張していたものの、みんなと打ち解け合うゲームをすると、自然と知らない子とも話せるようになっていました。友達になるとさらにキャンプが楽しくなってきます。お弁当を持ってハイキングへ行ったり、木工工作をしたり、キャンプファイアや夜の森歩きもありました。最終日は夜食を作って徹夜に挑みましたが、やはり撃沈。本当に寝る時間も惜しかったのです。

 この施設には野生動物と出合える仕掛けがたくさんありました。野外から室内にある空の水槽までパイプがつながっているエンカウンタースペースもその一つです。これには夜になると餌を求め、パイプを伝って野ネズミが水槽へ入ってきます。野ネズミが目の前で餌を食べている様子を観察できる仕掛けに感動し、毎晩ネズミが来るのを待っていました。そんな経験が、「生きものとの出合いを大切にする」というサシバの里自然学校の活動コンセプトに生きています。

 もう一つ感動した出会いは、キャンプのお兄さんたちでした。いつも一緒に遊び、キャンプソングを歌い、自然のことを教えてくれました。夜には怖い話をたっぷり聞かせてくれて…。両親でも学校の先生でもない。同級生の友達とも違った新しい関係性の大人にここではじめて出会いました。「大人ってこんな自由でもいいんだ」。この発見が人生を大きく変えました。その後、大学時代のサークルでサマーキャンプを主催した後、仕事として「キャンプのお兄さん」を目指すことを心に決めました。

サシバの里自然学校でもさまざまなキャンプを行っている
サシバの里自然学校でもさまざまなキャンプを行っている

 宿泊を伴う自然体験にはそれだけのインパクトがあります。ぜひ子どもたちをキャンプへ送り出してみてください。わずか数日の体験が子どもたちの人生をつくるかもしれません。

 (遠藤隼(えんどうじゅん)・サシバの里自然学校校長)

■とちぎ子ども自然体験活動ネットワーク登録団体のイベント情報

びわの葉チンキとにじのもりみそ作り(鹿沼)

・日時…12日(チンキ)、26日(みそ)

・参加費…3千円(小学生以上、別途材料費が掛かる)

 (申し込み、イベント詳細はにじのもり自然学校ホームページへ)

親子でみそづくり2022(市貝)

・日時…25日

・参加費…6500円

(申し込み、イベント詳細はサシバの里自然学校ホームページへ)

◆遠藤隼(えんどう・じゅん)さん◆1984年、宇都宮市生まれ。大学卒業後、静岡県にある自然学校職員として子どもキャンプやエコツアーを指導。2012年8月から1年以上かけて、自転車でユーラシア大陸横断・南米縦断をした。2021年度宇都宮大大学院修了、研究テーマは「里山での幼児向け体験型環境教育の実践と評価」。現在はサシバの里自然学校校長、作新学院大女子短大部非常勤講師。