八津弘幸さん

 ドラマ「半沢直樹」(2013年)など数々のヒット作を生み出し、今秋から放送されるNHK連続テレビ小説「おちょやん」の脚本を手掛ける脚本家八津弘幸(やつひろゆき)さん(48)。父谷津昭博(やつてるひろ)さん(92)と母好美(よしみ)さん(72)に子育てを振り返ってもらった。

 
父・昭博さん(左)と1歳ごろの弘幸さん

 昭博さん ひろ君の名前は、幸せをみんなに広められる子になるようにという願いを込めました。私の名前の「博」は画数が多いので、江戸時代に水戸藩で作られた藩校・弘道館の「道を弘(ひろ)める」という意味から「弘」の字をもらいました。

 私は地元の教員、妻は東京・足立区の教員でした。私たちは子どものことを君付け、ちゃん付けで呼びます。呼び捨てでは上からの圧力が掛かっていると思うので。家でも学校でも子どもたちを呼び捨てにはしません。

 好美さん ひろ君が小学校低学年までは同居する夫の母が面倒を見てくれました。テレビを見て、漫画を描くのが好きな子でした。小学生の時はアニメ「キャプテン翼」の影響でサッカークラブに入って、主人公になりきって遊んでいましたね。私もただ見ているのもしょうがないと、審判員の資格を取りました。

 私たちは親バカで、子どもを愛し、子どもからも愛されていると思っています。素直で、いい子に育ってくれたと思います。私たちが教員なので、大学で教員免許は取るだろうと思っていましたが、取りませんでした。でも教員にならなくても、幸せならいいです。

谷津昭博さん(左)、好美さん

 昭博さん 私たちの子育ては「ああしろ、こうしろ」と言わず、「支える」でしたね。泣いたら抱きしめる、褒めたら抱きしめる、叱ったら強く抱きしめることをしていました。そして、人前では絶対に叱らない。人前で叱られた人は不愉快な気持ちになりますから。済んだことは怒っても仕方ないと思います。

 好美さん ある時、ひろ君が「お母さん、なぜ怒らないの」と聞いてきたことがあります。「悪い事をやってそれに気付かないなら怒るけど、悪い事をしたと分かっているなら怒らない」と伝えました。

 友達同士がけんかしていると、ひろ君は「やめて」と止めに入らず、けんかが早く終わらないかと玄関先に座って待っている子でした。それぞれ言い分があるから、どちらの味方もしないで中立でいるのです。

 昭博さん 人の悪いところを見ていたらきりがないです。子どもの悪い部分は気にしないで、期待を押しつけず、いいところを見て励ませば、いいところが伸びていくと思います。

 好美さん 子どもを信じて、べた褒めしていましたね。夫婦仲の良さも大切だと思います。私の自慢は夫婦げんか、親子げんか、兄弟げんかがないことです。