親から子へ、代々読み継がれている14ひきのシリーズ(全12作、童心社)=左=と、アカネズミが主役の児童書「根津あかね ゆうひの丘のなかま」(理論社)

 子(ね)年になって最初の「子育て最前線」。今回はネズミの大家族の日常を描いた絵本「14ひきのシリーズ」などで知られる益子町在住の絵本作家いわむらかずおさん(80)に自然との関わりや絵本の役目などについて語ってもらった。

子年にネズミの絵本を楽しもう ゆったりとした時間を

自然や絵本との関わり方について語るいわむらかずおさん=那珂川町

 東京から栃木に移り住み、「14ひきのシリーズ」の出版が始まったのが1983年。翌年は子年だったからかよく売れました。落ち葉一枚一枚と同じ大きさのこびとの世界のような小さな世界が描きたいと思ったのがきっかけでした。当初はネズミではなく、リスやウサギも考えました。でもリスは尻尾が邪魔でやめました。

 自然は神秘の世界で面白く、奥が深い。生きることの基本がそこにはあり、発見がある。他の生き物も自然の中にいるということを知ることは大事だと思います。私の作品は、人工的な想像の世界だけではありません。私自身が森や山に入りながら冒険をして、主人公と一緒にいろんな発見をし、そこに(読んでいる)子どもたちを巻き込んでいきます。

 98年に開館した馬頭町(現那珂川町)のいわむらかずお絵本の丘美術館は、絵本と自然をつなぐものとしてオープンしました。子どもたちには私の作品と出合ったことで自然への興味を持ってもらえたらいいと思っています。都会では自然が少なくなったとはいえ、日本は森と山ばかりの国。ここでは自然の実体験を重ねてほしいと、農業体験や自然体験も行っています。

 今、私の作品を読んでくれていた子どもたちが親になり、生まれた子どもに私の作品を読んでくれている。本が次の世代に引き継がれているのは、無駄に年を取ったわけではないとうれしいものです。

 絵本には面白さや美しさがあると同時に、人と人、大人と子どもを、特に親子を結び付ける大きな力があるんじゃないかと思います。子どもたちはお母さん、お父さんに読んでもらうのが一番うれしいのではないでしょうか。

 上手に読むとかそういうことではなく、膝の上に座らせて体温の伝わる距離で読む。こんないいことはないです。ずっと子どもの体の中に残ると思いますよ。私もそんな経験がしたかったけれど、残念ながらなかった。私の幼少期は戦争の真っただ中で、疎開して母と離れて暮らしていました。絵本より、どうやって食べるか、死なないか、の世界でした。母親への思いは強いものがあります。

 興味はみんな同じではないので、子どもが夢中になる本を見つけたら、繰り返し読んであげたらいい。お父さんお母さんがいいと思う本、子どもがいいと思う本、両方読んであげたらいいのでは。忙しくてもゆったりとした時間を持ってほしいです。

「トガリ山」シリーズ復刊
いわむらかずおさん 自然、動物生き生き

 

 世界最小の哺乳類の一つとされるモグラの仲間トガリネズミを主人公にした、いわむらさんの長編絵物語「トガリ山のぼうけん」シリーズが昨年秋に復刊した。

 「トガリ山」シリーズは、トガリネズミのトガリィが相棒のテントウムシ・テントと一緒に雲より高いというトガリ山に登る物語で、1991~98年に全8巻が刊行された。一時出版されていない時期があったが新装版として復刊後は書店や図書館に再び並ぶようになった。

 いわむらさんは10年以上かけて日本各地の山々に出向き、自然環境や山で暮らす生き物について丁寧に取材。作品ではトガリィが山を登る間にカタツムリやヤマネ、ムササビといった動物と交流する様子や、野原に咲く草花、昼から夜に変わる森などが文章と絵で生き生きと描かれている。

 いわむらさんも「何年も時間をかけて草原や山を歩き、主人公と一緒に冒険しながら手掛けた作品」と思い入れが強い。本を読みながら、トガリィたちと共に冒険に出掛けよう。

いわむらかずお絵本の丘美術館

開館時間 午前10時~午後5時(入館は同4時半まで)
休館日 月曜休館(展示替え、年末休館あり)
入館料 大人900円、中高生700円、小学生500円、幼児300円
電話 0287-92-5514

【イベント予定】

●「トガリ山のぼうけん」展 5月31日まで(3月2~6日は展示入れ替えのため休館)

●朗読とおはなし会 月2回実施。1月は26日、2月は9、23日(いずれも午後2時から)

●冬のえほんの丘散歩 2月1、15日(いずれも午前10時半から)