柚木理恵さん
柚木理恵さん

 性のタブーをハッピーに変えたい-。上三川町在住の助産師柚木理恵(ゆずきりえ)さんは、人権とジェンダー平等を尊重し、誰もが健康で安全で生産的な生活を送るための態度やスキルを学ぶ「包括的性教育」に取り組んでいる。柚木さんは「正しい性の知識を持つことで自分のルーツを知ることになり、自分を大切にできるようになる。自分らしく生き生きと生きられる社会を目指したい」と話している。

 柚木さんは助産師や保健師、思春期保健相談士として幅広い世代に寄り添ってきた。自身も不妊や家庭と仕事の両立などで悩んだ経験から、生や性を肯定的かつ科学的に捉える人を増やすため正しい知識やスキルを伝える活動を始めた。

風船や飾りを使って子宮や生理の仕組みを説明する柚木さん(左)
風船や飾りを使って子宮や生理の仕組みを説明する柚木さん(左)

 今月15日には、まだ初潮を迎えていない小学生の女児や保護者を対象に、月経について学ぶ講座を上三川町内で初めて開いた。冒頭、「生理と聞いてネガティブなイメージを持っているかもしれないけれど、女性の健康において大切な役割を持っている」と語り、女性のライフステージとホルモンの変化などを詳しく紹介。月経について、風船と飾りを子宮に見立てて分かりやすく解説し、赤ちゃんをつくるための仕組みだと説明した。

 後半には実際の生理用品に触れる機会も設けた。生理用品の役割や用途に応じた使い方を確認したり、ナプキンやタンポンに水を吸わせて吸収性能を確認したりした。生理用品に触れたことのない子どもたちも多く、個包装の開き方やタンポンの使い方などについて親子で話していた。

講座では生理用ナプキンの吸水性を確かめる実験も行われた
講座では生理用ナプキンの吸水性を確かめる実験も行われた

 質の高い包括的性教育を目指してユネスコが定めた「国際セクシャリティ教育ガイダンス」では、人権とジェンダー平等を尊重。子どもや若者が健康で安全で生産的な生活を送れるようにすること、性についてポジティブなイメージを育てることに主眼が置かれている。

 一方、日本では性被害の被害者・加害者にならないために学校での「生命(いのち)の安全教育」が始まったが、柚木さんは「“歯止め規定”によって学校で性交や妊娠について扱われないため、生命の安全教育だけでは不十分」と感じている。

 今後、宇都宮市内の学校や図書館などで性教育を展開していく予定で、「性の話は恥ずかしいことではないし、知識やスキルを持っていることで性被害や予期せぬ妊娠といったトラブルに巻き込まれることを防げる。大切な家族を守るためにも正しい知識や情報を得てほしいし、専門家に頼ってほしい」と語った。