絵本の感想を述べ合う小笠原さん親子=12月、日光市内

絵本「やくそく」の表紙

絵本の完成を喜ぶキリフリ自然学校参加者と小笠原さん(前列左から2番目)=12月、日光市内

絵本の感想を述べ合う小笠原さん親子=12月、日光市内 絵本「やくそく」の表紙 絵本の完成を喜ぶキリフリ自然学校参加者と小笠原さん(前列左から2番目)=12月、日光市内

 「あゆが学校行かないと困るの! お母さんも仕事があるんだから!」「あゆにとって休むことは心の充電なんだよね」-。発達障害のある長男(13)を育てる宇都宮市、看護師小笠原(おがさわら)かおり(本名・香織)さん(39)が絵本「やくそく キリとぼくとの素敵な約束×成長しているのはもしかして…」を出版した。捨て猫の世話を通して変わっていった親子の姿と、それまでの葛藤を率直に描いている。小笠原さんは「さまざまな理由で、学校などに居場所がなかったり生きづらさを抱えたりしている子どもとその保護者に読んでもらいたい」と話している。

 絵本は長男のあゆ(愛称)さんを主人公にした「やくそく キリとぼくとの素敵な約束」編と、小笠原さんの心境を記した「成長しているのはもしかして…」編の2部構成。あゆさんは「何を書いてもいい」と小笠原さんに伝えた。

 「やくそく-」は、音や他人の気持ちに敏感なため起きる生活の困難さや毎月参加する自然体験塾「キリフリ自然学校」(日光市)での活動、捨て猫「キリ」との出会いをあゆさん自身が語るスタイル。

 不登校になり母親との関係が悪化したこともあったが、キリが来てから家族間のコミュニケーションが変化。「ありがとう、キリ。ずっとずっといっしょだよ」と感謝し、生まれる前からキリと「ピンチになったら助けに来てね」と約束を交わしていた、という内容だ。柔らかな色使いが特徴で、かわいらしいキリと同自然学校で伸び伸びと過ごすあゆさんの写真も印象的だ。

 「成長-」は、小笠原さん自身の変化に気付いた同自然学校の金井聡(かないさとし)代表(46)の勧めで執筆した。

 「周りの子と同じこと」ができず「どうせ僕なんか」が口ぐせになった、小学校時代のあゆさんへの怒りや焦りを赤裸々に記した。この時期を「戦場」「暗黒時代」としている。捨て猫を拾い育てるあゆさんの優しさに気付き、長所を認め「そのまんまが『あゆ』だから」と心穏やかに長男の成長を見守るまでに至った心境をつづった。

 2編を一緒に読むことで、親子の悩みや「そのまま」を受け入れていく姿が立体的に浮かび上がる。あゆさんは本を前に満足そうな笑みを見せる。「自分のつらさをお母さんが知っていたこと、お母さんもつらかったことが分かった」とし「自分と同じような思いをしている人に読んでほしい」と話している。

 同自然学校の仲間が協力し200部制作。A5判32ページ。1500円。(問)キリフリ自然学校メールkirifuri.s@gmail.com