2017年の世界選手権で兄弟そろって出場を果たした玲さん(左)と慶さん

 範恵さん 玲(れい)の姿をずっと見ていた慶(けい)も、次第にロードバイクに憧れるようになりました。とはいえ小学4年生だったので大人用の自転車には乗れませんし、高価なロードバイクをそう簡単には購入できません。

 あれこれ知恵を絞って、子供用のマウンテンバイクにハンドルと変速機をくっつけて大会に出たこともありました。慶は人一倍負けず嫌いで努力家だったこともあって、自宅周辺で約3キロのコースを設定して毎日何十周も走り込む練習を繰り返していました。

 この練習で地足が鍛えられましたし、自転車に打ち込む姿を見ていつしかクラスメートから一目置かれるようになったそうです。

子育てについて話す仁さん(左)と範恵さん

 仁さん 慶が小学5年の終わりに出た大会で初優勝し、本来ならば中学生以上が対象だった宇都宮ブリッツェンの下部組織「ブラウ・ブリッツェン」に入ることができました。

 自転車競技は機材スポーツですので、玲や慶の周りにも最新の機材をそろえて勝負している人も多かったです。家計的にも最新の機材をそろえるのは難しかったですが、お金がないなりにできる限りのサポートをしてきました。慶がレースで勝てるようになってからは「たばこを吸ったつもり貯金」で半年間お金をためて、慶にロードバイクを買ってあげました。

 作新学院高に進学した玲も、先輩や仲間がいらなくなった機材やパンクしたタイヤチューブをもらって修理して使っていました。メカニックの知識はもちろん、資金面に差があっても夢を諦めない気持ちが身に付いたように思います。

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 範恵さん 県内には宇都宮ブリッツェンと那須ブラーゼンの二つのチームがあり、熱心なファンも大勢います。慶が自宅から約30キロ離れた真岡工業高に通っていた時には、サポーターの方から「通勤途中に見掛けたよ」「困ったことがあったらいつでも声を掛けて」と連絡をいただいたこともありました。

 たくさんの方に支えていただいたおかげで2人ともプロ選手になることができましたし、2017年にはそれぞれ世代別日本代表として世界選手権に兄弟で出場することもできました。

 仁さん 今は新型コロナウイルスの影響でレースができない上、慶は足の血管に異常が見つかりレースから離れることになってしまいました。それぞれ苦しい状況が続いていますが、夢や目標に向かって頑張る家族を応援していきたいです。