Qライン停留場のすぐ隣で、ミシガン州で最も高い62階建てビルの建設が進む=5月23日、デトロイト

 デトロイト、カンザスシティーともにモビリティータウン、スマートシティー実現の鍵を握ったのが民間資金だった。

 デトロイト再生への道を切り開いたのは、一人の億万長者ダン・ギルバート氏。「故郷への愛なのか、ビジネスチャンスによるものかは分からない。しかし、デトロイト再建の重要人物であり、Qラインは彼なしには成功し得なかった」。市の開発担当、ジャネット・アッタリアンさんはそう解き明かした。

 全米最大手の住宅ローン会社クイッケン・ローンズを率いるギルバート氏は2010年、出身地のデトロイトに本社を移転。下落した中心部の高層ビルを次々と買収し、傘下の不動産開発会社を通じて再開発を行った。そのエリアをつなぐように導入されたのが、官民出資による次世代型路面電車(LRT)「Qライン」だった。

 グーグル、マイクロソフトといった大企業が進出し、今も大規模開発が続くQライン沿線。経済効果は約7500億円とされ、延伸計画があるエリアへの関心も高い。「Qラインへの投資は、単なる交通機関への投資ではない。地域開発への投資といえる」と、同市経済担当のバジル・シェリアンさんは力を込めた。

 カンザスシティーのスマートシティー化でも、携帯電話会社スプリントとネットワーク機器最大手シスコシステムズが市に協力したのが大きい。同市のスライ・ジェームズ市長は「企業にとっては市道や標識柱を使えるメリットが生まれる。市民サービス向上のため、ウィンウィンの関係を構築するのが市の役割だ」と話す。

 結果的にQライン、ストリートカーの導入で街は活気を帯び、住民らの意識も変わった。若者やアーティストらが流入し、起業家同士による事業連携なども始まっている。カンザスシティー在住のショップオーナー、ショーン・デイビソンさんは「かつてのフライオーバータウン(上空を通過される街)から、誇りの持てる街へと変わった。車社会では起こらなかったことが起きている」。デトロイト日本商工会顧問、大光敬史(おおみつたかし)さんも「治安が悪く怖かったデトロイトのイメージは変わりつつある」と指摘する。

 米国は第5世代(5G)移動通信システム時代に突入した。大量の情報が扱えるようになり、AI(人工知能)と連携した遠隔操作やデータ活用などスマートシティーの進化に期待は高まっている。

 5月31日、国土交通省「スマートシティーモデル事業」で宇都宮市の提案が先行モデル事業プロジェクトに選ばれた。大学や民間企業とともに取り組む内容で、センサーやモビリティーを活用した観光振興、さまざまなデータの集積・加工・提供などが柱になる。

 日本では来年、東京五輪に合わせ5Gサービスが本格的に始まる。宇都宮市のLRT開業予定はその2年後。米国2都市の取り組みは一つのモデルといえそうだ。

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