子どもも手にすることが多いスマートフォン(スマホ)や携帯型ゲーム機。長時間使用すると、近視が進んだり、片目が内側に寄る「急性内斜視」になったりする可能性があるというという。親としては気になる目への影響について、専門家に聞いてみた。

 日本弱視斜視学会理事の新井田孝裕(にいだたかひろ)国際医療福祉大副学長によると、人間の目は近くを見る時、①寄り目にする(輻湊(ふくそう))②ピントを合わせる(調節)③瞳孔が小さくなる(縮瞳)―の三つが同時に起こる。日常生活では一定のバランスを保っているが、スマホなどの小さい画面を至近距離で長時間見ることが習慣化すると、過剰に輻湊が働いて急性内斜視を引き起こすと考えられている。

 初めの頃は物が二重に見える「複視」を自覚するが、時間が経つにつれて、ずれた目の映像を脳が自動的にシャットアウトして片目で見る癖が付く。そうなると、両目で立体的に物を捉える機能が低下してしまう。

 両目で見る機能が完成するのは6歳ごろなので、幼児は特に注意が必要。小さい画面を長時間凝視していると、奥行きのある立体的な見え方ができなくなる可能性がある。もともと斜視がある子どもでは両目で見る機能が弱いため、より影響を受けやすい。

 子どもが「物が二重に見える」と訴えたり、視線が合わないなどの症状が出たりしたら、眼科を受診しよう。スマホなどの使用中止でよくなることもあるが、改善しない場合は手術になることもある。

 スマホや携帯型ゲーム機の目への影響については、まだ「医学的なエビデンスはそれほどそろっていない」(新井田副学長)が、昨年はスマホなどの使用がきっかけとみられる小児斜視症例に関する論文が発表された。

 新井田副学長は「使用は1回30分」「画面から30㌢以上離れる」「30分は目を休ませる」の“30ルール”を提案。「親子で使用のルールを決めてほしい」と呼び掛けている。