災害図上訓練「気象庁ワークショップ 経験したことのない大雨 その時どうする?」

    講 師 NPO法人栃木県防災士会 理事長 稲葉 茂さん

    専門家 NPO法人栃木県防災士会 副理事長 福田 一郎さん

創造力を膨らませて災害へのさまざまな対応をイメージ

 

 11月10日、ニューみくら会議室で行われた「とちぎ防災マスター育成講座」第2回講義では、毎年講評を博している災害図上訓練「気象庁ワークショップ 経験したことのない大雨 その時どうする?」が行われました。これは、家族や住宅環境等の設定をくじ引きで決め、刻々と変わる大雨情報にどう対応するのかをシミュレーションする訓練です。ワークショップが始まる前に講師の稲葉理事長は「地域を限定せずに架空の地域で避難行動や経路を考えることで、対応力が身につきます。創造力を膨らませてチャレンジしてください」と参加者たちに呼びかけました。専門家として参加した福田副理事長は、「いざという時に、地域内の介護や支援が必要な人をどう避難させれば良いのかを考えるきっかけにしてください」とワークショップの趣旨を説明しました。

 さっそく、「台風接近の影響により大雨注意報が出ている」というアナウンスからワークショップがスタートしました。5つのグループに分かれた参加者たちは、家族の命を守るための避難行動について意見交換を行います。時間の経過とともに注意報が警報となり、警戒情報が発令され、大雨特別警報へ…いつ、どのような方法で避難すれば良いのか、それは何故なのか。防災マスターを目指す参加者たちは、最悪の事態を想定しながら、最良の判断を下さなければなりません。各グループとも、熱の入ったディスカッションの後に時間ごとの自らの避難行動をまとめ、最後に発表が行われました。

 

 発表の後の講評で福田副理事長が評価ポイントとして解説したのは、3つの視点です。まず、情報を得て早めの避難行動ができたかどうか。図上訓練ではどのグループも迅速な避難行動を取っていましたが、「実際の災害が起こった場合は、訓練とは違って6割以上の人が何の行動も起こしていません。それが現実です」と災害発生後の避難行動に関するデータを紹介。危機感を持って行動することの大切さを強調しました。2つ目のポイントは、災害弱者への配慮ができているかどうかです。「特にリーダーとなる皆さんは、家族だけれはなく地域の方々への対応も考える必要があります」と、その重要性を伝えました。最後は、地域の環境に応じた避難行動となっているかどうか。置かれた環境にによっては、家屋内で垂直避難(建物の高層階への避難)をした方が良い場合もあれば、自家用車による避難中に渋滞が発生して被災してしまうこともあります。水路など水が流れている場所では、水量が少なくても水の勢いが強く流される危険があり、浸水する前の避難が求められます。

 今回のワークショップでは各グループとも、環境に応じた迅速な避難行動が高く評価されましたが、大切なのは「いざという時の実際の行動」です。参加者からは「図上訓練で学んだことを活かして、地域のハザードマップを再確認したい」「地域の防災に何が必要なのかを考えたい」など、前向きな感想を聞くことができました。

 

講師インタビュー

NPO法人栃木県防災士会 副理事長 福田 一郎さん

 

 私は現在、那須塩原市上黒磯地区で、自治会長、民生児童委員、自主防災会会長を務めています。地域の防災・減災のためには、住民一人一人が「自分の地域、家族から犠牲者を絶対に出さない」という強い意思を持つことが大切です。普段から研修などで防災の知識を学び、防災用品などの備えをしっかりとしておくことに加え、防災のリーダーとなる皆さんには地域の特性を知っておいてほしいと思います。特に重要なポイントは、その地域の弱点を知ることです。地形や土壌などの環境はどうか、高齢者が避難する場合に危険はないだろうか。常に災害の発生をイメージしながら、高い対応力を身に付けておくよう心掛けてください。

 

受講者インタビュー

 

日光市在住

猪瀬 進さん ももこさんご夫妻

 身内が阪神淡路大震災や熊本地震で被害を受けたこともあり、災害はとても人ごととは思えません。いざという時の対応を身に付けたいと思い、昨年、友人と日光市の講座を受けて夫婦ともに防災士の資格を取得しました。気象庁ワークショップはこれまでも経験がありましたが、今回の講座では県内各地から参加者が集まっていることもあり、さまざまな価値観の幅広い意見が聞けたことが良かったと思います。