2025年春に卒業する大学生らを対象にした採用の会社説明会が1日解禁され、本県でも就職活動が本格化した。人手不足を背景に企業の採用意欲は高く、学生優位の「売り手市場」が続く。既に複数内定を得た学生もいるなど早期選考に拍車が掛かる中、県内中小企業からは「大手企業との競争もあり、採用は厳しい状況」との声も上がる。

 JR宇都宮駅東口の交流拠点施設ライトキューブ宇都宮では同日、就職情報大手マイナビ(東京都千代田区)が就職セミナーを開いた。県内企業を中心に76社がブースを設け、スーツ姿の学生が次々と訪れた。

 食品業界に興味があるという宇都宮共和大シティライフ学部3年石川大成(いしかわたいせい)さん(21)は「説明を聞き、理解が深まった。自宅から通えるかなど入社後の勤務地も重要」と話した。

 売り手市場が続く中、人材獲得に苦慮する中小企業は少なくない。「大手企業で採用を増やしており、厳しい」。宇都宮市内の電気設備工事会社の採用担当者は打ち明ける。4月から残業時間の上限規制が適用される「2024年問題」も念頭に「人材確保は急務」。選考日程などは従来通りといい、「学生との相性を大切にしたい」。

 県内の輸送用機器製造業の担当者は「人手は不足している」と話す。製造現場で人材を募集しても集まらない状況といい、「ものづくりに魅力を感じる学生が少なくなっている」と危機感を募らせる。通年採用などで「人材獲得の機会を増やした」と説明する。

 県内ではインターンシップ(就業体験)を実施する企業も増えている。歯科医療機器製造のナカニシ(鹿沼市下日向(ひなた))は、技術系の大卒者を10人程度採用する計画。インターンシップを前年から5倍近くに増やし、昨夏には採用の特設サイトも開設した。大手企業の選考早期化を踏まえ、中西英一(なかにしえいいち)社長は「後れを取らないようにしていきたい」と強調した。